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当院でHPVワクチンを接種した方の推移と傾向 〜副反応は?〜

ティール&ホワイトリボンプロジェクト」を機会に、2010年からの14年間に、産婦人科クリニックさくらでHPVワクチンを接種した患者さんの推移と傾向をまとめました。また青葉区の横浜市立学校の保健部会や青葉区医師会、緑区医師会、緑区薬剤師会、横浜市産婦人科医会・横浜市小児科医会でも報告しました。

HPVワクチンの歴史的背景とともに解説します。

2010年から2022年9月までに、当院でHPVワクチンを接種した方は815名でした。

この中で重篤な合併症、副反応が見られた方は、幸い皆無でした。つまり重い合併症は0.12%以下、と言えます。

もっと大きなデータとしては、平成27年の厚生労働省から、症状が改善しない後遺症は、0.006%(=16,667人に1人)と発表されています。

また平成30年に発表された、有名な国内の大規模な副作用調査、名古屋スタディでは、3万人の調査で24項目にわたる症状が、ワクチンとの関連を否定されています。


一つ目のグラフは各年毎のHPVワクチン接種患者さんの内訳で、

・2価ワクチン(サーバリックス®)

・市2価ワクチン(横浜市助成対象)

・4価ワクチン(ガーダシル®)

・市4価ワクチン(横浜市助成対象)

・9価ワクチン(シルガード9®)

に色分けしました。

いずれも初回の接種の年にカウントされています。

2009年12月、2価ワクチン(サーバリックス)が販売開始されました。HPVワクチンを待ちかねていた方が多く、

2010年は、121名の方が、2価ワクチンを接種しました。

2011年、公費助成が行われるようになり、8月には4価ワクチン(ガーダシル)が発売され、2価ワクチンとともに助成接種が行われ、早くもこの年がHPVワクチン接種のピークとなりました。また、2価と4価の比率も早くも同等となり、助成対象が全体の77%を占めました。4価ワクチンと公費助成のインパクトがとても強いと感じられます。

2012年は、前年に助成対象者がほとんど接種を開始したため、新たに接種を開始された方は減少、反面、自費で接種する人数・比率が増え、ほとんどの方が4価ワクチンを選択していました。

2013年、HPVワクチンは大きな転機を迎えます。この頃、各メディアは副作用・副反応がみられた患者さんの映像を、繰り返し報道するなど、ワクチンの利点を置き去りにしたネガティブキャンペーンを続けました。そして4月1日、定期接種が開始された矢先の6月14日、厚労省は「積極的な勧奨を差し控える」との立場をとり、日本国内におけるHPVワクチン接種の広がりが、一気に減少してしまいました。

翌2014年、信じられないことに、新たにワクチンの接種を開始した方はたったの1名。この傾向は2018年の4名、まで5年間続き、この間ついに2016年は横浜市の助成を受けた方が皆無でした。

しかし2018年頃から、健康意識の高い方たちを中心に、外来でも、このままワクチンを受けなくていいのか、と言う質問が増えてきました。

2019年、2020年と徐々に接種者が増えて来ており、ようやく2021年はピークであった2011年の約半数に(4価と9価)、助成対象(4価)も3割以上に達するようになりました。これには、

2020年12月の、4価ワクチンの男性への適応拡大と、2021年3月の、9価ワクチン(シルガード9)の接種開始が大きく、助成対象者でも9価を選択する方が少なくありません。2021年は、3月以降、40%を超える方が9価を選択していました。

2022年1月、1年ぶりに2価ワクチンの接種が出来るようになり、、

そして、2022年4月、HPVワクチンの積極的勧奨が、いよいよ再開され、キャッチアップ接種も開始されました

2022年6月、定期接種とキャッチアップ接種の対象者に個別通知がなされ、

2023年4月には9価ワクチンが定期接種、キャッチアップ接種に適用されました。

うれしいことに2023年は、244名の方がHPVワクチン接種を開始してくれており、当院のピークだった2011年を超えてくれました!


2022年からの月別のHPVワクチン開始人数は、別の記事で解説しています。積極的勧奨の再開、キャッチアップ接種の開始、9価ワクチンの適用がいかにワクチン接種を後押ししているか、どうぞご覧ください。

また「14歳までに接種開始すれば2回接種が可能です。」

と、HPVワクチンを巡る環境が良い方向へ激変しています。

今後問題となるのは、この2013年からワクチンを接種してもらえなかった世代の子宮頸がん発症で、ワクチン未接種者は300万人とも言われています。

まだキャッチアップ接種を受けられるので、ぜひHPVワクチンを接種してください。

当院HPのHPV関連記事はこちらにまとめています

横浜市でもHPVワクチンの償還払いが開始されています。対象は今年度17歳から26歳となる、自費で2価、または4価のHPVワクチンを接種した方です。


HPVワクチンに関するご質問にお答えした動画を作成しました。令和5年度版としてアップデートしています。

また、HPVワクチンと子宮頸がんについて、説明した動画はこちらです。こちらも9価ワクチンの定期接種化など令和5年度版に更新しています。

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:令和3年11月27日
補筆修正:令和4年1月3日、2月1日、3月15日、4月27日、6月8日、7月27日、10月18日、30日、11月17日、12月13日
補筆修正:令和5年1月14日、3月5日、20日、4月4日、29日、11月29日
補筆修正:令和6年3月24日、当院で接種した患者さんの推移などをアップデートしました。