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男性のHPVワクチン接種 〜9価ワクチン1回でも良い??〜

男性のHPVワクチン接種、これまで4価ワクチンのみが適応でしたが、8/25より、9価ワクチンが男性にも使えるようになりました。

定期接種化はまだですが、男性もより良い選択ができ、当院でも接種にいらっしゃる方が増えています。

そんな中、新しいご質問も頂くようになりました。

HPVは子宮頸がんの原因ですが、男性がかかった場合には?

HPVはヒトパピローマウイルスのことで、子宮頸がん尖圭コンジローマのようなSTIなど、様々な癌、病気の原因となることが分かっています。

男性ではその他にも肛門がん、陰茎がん、また坂本龍一さんも闘病された中咽頭がんや舌がんなどの原因となり、男性もHPVワクチンを接種することの有効性が分かっています(Harder T et al. 2018Rosado C et al. 2023Quinn S and Goldman RD. 2015)。

日本では男性のHPVワクチン接種はどうなっていますか?

現在日本では、国の施策として、小6から令和7年度に28歳になる女性に定期接種キャッチアップ接種が行われていますが、諸外国で開始されている男性への定期接種はいまだに行われていません。

日本では男性にHPVワクチンを打ってはいけないのでしょうか。

いえ、令和2年12月25日、4価のHPVワクチン、ガーダシル®︎の承認事項が変更され、任意接種(自費診療)ではありますが、接種している方も増えてきています。

院長の家族ももちろん、HPVワクチンの接種を終了しています。


そしていよいよ、9価のHPVワクチン、シルガード9®︎がの適応症が肛門がんの予防にまで拡大され、同時に男性にも接種が可能となりますした。

ガーダシルもシルガード9も、女性と同じプログラムで接種します。

ともに3回の接種が必要ですが、シルガード9は、15歳になるまでに接種を開始すると2回接種が可能です。

接種は主に腕に筋肉注射を行います

初回から2回目は2ヶ月空けて、2回目から3回目は4ヶ月空けて、合計3回のワクチンを6ヶ月かけて接種します。

2回接種の場合、2回目は初回から5〜12カ月後に接種します。

女性と同じく、接種間隔を早めたり、遅くすることも可能です。

男性のHPVワクチン接種、助成の動きは?

ここへ来て次々と自治体が男性のHPVワクチン接種を助成する動きが見られています。

多くの自治体で、男性への助成が開始されており、東京では23区中22区で助成があるそうです。

横浜市では現在助成の動きは全くありませんが、横浜市産婦人科医会の提議で、横浜市医師会から横浜市に働きかけを行なっています。

またHPV接種の必要性を実感しているご家庭からは、接種にいらしている患者さんも当院には複数いらしていますし、9価ワクチンのお問い合わせも少なくありません。

男性のHPV感染が男性不妊の原因に!?

さらに我々にとってもショックな報告がありました。それは、HPV感染が、発がんや尖圭コンジローマの原因となるだけではなく、男性不妊の原因となる可能性が報告されたのです(Olivera C. et al. 2024)。

これによると、対象者の19%の精液からHPVが検出され、子宮頸がんでも最も多いHPV-16がやはり多かったそうです。発がん性の高リスクHPVが陽性であっても精液所見(精液量、精子の濃度、運動性など)には影響がありませんでしたが、精子の壊死、活性酸素種(ROS)が陽性の精子が多く、生殖機能への悪影響が懸念されています。

海外では男性へのHPVワクチン接種はどのように行われていますか?

これまでは子宮頸がん予防ワクチン、と呼ばれることが多かったですが、男性への接種も広がることにより、ヒトパピローマウイルスワクチン=HPVワクチンと一般的に呼ばれるようになっています。

海外では例えば豪州では、すでに2013年から男子にもHPVワクチン接種が開始され、米英、フィンランドなどの北欧諸国でも同様に行われ、現在は59か国で男性へのHPVワクチンの定期接種が行われています。特に豪州、英国では学校での集団接種の効果で男女ともに80%以上の接種率です。

日本でHPVワクチンの接種が始まった13年前に、国際HPV学会に参加する機会を頂きました。日本ではようやく女性への接種が始まったのに、発表されていたのは、すでに男性への接種とその効果が報告されており、またしても日本の周回遅れの感が否めなかったです。

そして、日本ではHPVワクチン接種が中断されてしまい、WHOからも非難される事態となってしまいました。ようやく女子の接種が再開されていますが、1日も早く、男女揃ってHPVワクチンを受けられるようにしたいものです。

男女ともにワクチンを接種し、抗体を持つことでHPVにかかりにくくなり、ひいては真の集団免疫を獲得する手段となるのです。

しかし、このような報道は大手メディアでは驚くほど全く取り上げられませんでした。かつてHPVワクチン批判を繰り返してきたからでしょうか。

とある大手新聞社の記者の方とお話しする機会を得ましたが、自らが行なったかつてのHPVワクチン批判報道を反省されていました。しかし、組織としてその批判を覆す報道ができない、と。

私も自分の専門外は分かりかねますが、ポピュリズムではない、真の報道機関であってほしいと思います。

よくいただくご質問にお答えします。

男性がHPVワクチンを接種するメリットは?

メリットは大きく二つあります。

第一に、接種した男性本人の健康を守る効果です。
HPVワクチンは、将来的な HPV関連がん(肛門がん、陰茎がん、中咽頭がんなど)および尖圭コンジローマを予防します。これらは一度感染すると治療や再発に長期的に悩まされる場合があり、HPVに感染してからではワクチンの効果がありません
がんを予防できるワクチンは他にはありません。

第二に、パートナーの身体を守るという視点です。
男性側がHPVに感染していなければ、パートナーへの感染リスクを大きく下げることができます。パートナー自身がワクチン接種できない事情(アレルギーなど)がある場合もあり、男性の接種が重要な役割を果たします。

男性は何歳から何歳まで接種できますか?

男性は 9歳以降、成人も含めて上限なく接種可能です。
最も効果が高いのは、女性と同様に 性交経験以前の接種ですが、成人であっても完全に意味がなくなるわけではありません。
欧米では成人男性への接種も一般的です。

男性のHPVワクチンに、種類や接種スケジュールの違いは?

現在日本で男性が接種できるワクチンは 4価ワクチン(ガーダシル)と9価ワクチン(ガーダシル9)で、スケジュールは女性と同じです。

  • 1回目 → 1〜2か月後に2回目

  • 2回目 → 3〜4か月後に3回目

    計3回の接種です。

費用は? 公費助成は?

HPVワクチンは男性の場合、原則として任意接種であり医療機関により価格が異なります。

当院では以下の費用です。

  • 4価ワクチン:1回 17,600円、3回 51,700円(税込)

  • 9価ワクチン:1回 30,800円、3回 91,300円(税込)

多くの自治体(東京都など)では、男性接種に対する助成が進んでいます。
一部では女性同様に実質無料で接種できる自治体もあります
横浜市では現時点で未実施ですが、お住まいの自治体HPで最新情報をご確認いただくことをお勧めします。

男性のHPVワクチン、9価を1回だけ打つのと、4価を3回打つのはどちらが良い?

9価ワクチンは大変高価なため、このようなご質問を頂きました。女性の場合、1回接種や2回接種の国もありますから、なるほど、と考えさせられたご質問で、いろいろと調べてみました。

結論として、効果を期待するのであれば「4価を3回接種」の方が明らかに優れています

理由は以下の通りです。

「1回接種では十分な免疫がつかない」

9価ワクチンのメリットは本来「より多くのHPV型をカバーすること」ですが、これは3回接種してはじめて発揮される効果です。特に男性の場合、免疫応答が女性よりやや低いとされており、期待される予防効果を得ることができない可能性があります。

「4価3回は実証された確実な効果がある」

4価ワクチンの3回接種では、

  • 尖圭コンジローマの予防

  • HPV16・18によるHPV関連がんの予防
    について十分な免疫を得られることが確立しており、欧米でも長年使用されています。

9価ワクチン1回には効果があるとの結論はなく、4価3回の方がはるかに信頼性が高い、というのが医学的な位置づけです。


令和5年度より女性へのHPVワクチン接種は、ほとんど理想的な接種環境となりました。残る要望は、男性の公費接種化です。


HPVワクチンに関して頂くご質問に回答した動画を公開しています。

 

また、男性への接種も含め、HPVに関連する病気とHPVワクチンについて解説しました。

文責 櫻井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:令和2年12月8日
補筆修正:令和2年12月30日
補筆修正:令和3年3月14日、7月19日、11月26日
補筆修正:令和4年6月29日、9月13日、10月8日、25日、11月7日、21日
補筆修正:令和5年3月23日、4月14日、27日、6月6日、26日、8月2日、9月9日、11日、11月13日
補筆修正:令和6年年2月3日、3月9日、27日、7月5日、9月24日、25日、10月6日
補筆修正:令和7年4月14日、25日
補筆修正:令和7年7月28日、8月27日、10月17日、12月11日、男性接種に関するよくいただくご質問を追記しました。