ここへ来て次々と自治体が男性のHPVワクチン接種を助成する動きが見られています。
現在日本では、国の施策として、小6から令和6年度に27歳になる女性に定期接種・キャッチアップ接種が行われていますが、諸外国で開始されている男性への定期接種はいまだに行われていません。
日本では男性にHPVワクチンを打ってはいけないのでしょうか。いえ、令和2年12月25日、4価のHPVワクチン、ガーダシル®︎の承認事項が変更され、自費診療ではありますが、接種している方も増えてきています。
院長の息子も、HPVワクチンの接種を終了しています。
多くの自治体で、男性への助成が開始されていますが、東京では23区中22区で助成があるそうです。
横浜市では助成の動きは全くありませんが、必要性を実感しているご家庭から、接種にいらしている患者さんも複数おります。
これまでは子宮頸がん予防ワクチン、と呼ばれることが多かったですが、男性への接種も広がることにより、ヒトパピローマウイルスワクチン=HPVワクチンと一般的に呼ばれるようになるでしょう。
HPVは、子宮頸がんだけでなく、尖圭コンジローマのようなSTI、舌がん、そして男性の肛門がん、陰茎がん、また坂本龍一さんも闘病された中咽頭がんの原因となります。
海外では例えば豪州では、すでに2013年から男子にもHPVワクチン接種が開始され、米英、フィンランドなどの北欧諸国でも同様に行われています。
日本でHPVワクチンの接種が始まった10年前に、国際HPV学会に参加する機会を頂きました。日本ではようやく女性への接種が始まったのに、発表されていたのは、すでに男性への接種とその効果が報告されており、またしても日本の周回遅れの感が否めなかったです。
そして、日本ではHPVワクチン接種が中断されてしまい、WHOからも批判される事態となってしまいました。ようやく女子の接種が再開されつつありますが、今後は男子も揃ってHPVワクチンを受ける時代になるでしょう。
男女ともにワクチンを接種し、抗体を持つことでHPVにかかりにくくなり、ひいては真の集団免疫を獲得する手段となるのです。
しかし、このような報道は大手メディアでは驚くほど全く取り上げられていません。かつてHPVワクチン批判を繰り返してきたからでしょうか。偏向報道と揶揄されても仕方ないと思います。本当に日本国民のことを思うならば、正しい報道をして欲しいと切に願います。
とある大手新聞社の記者の方とお話しする機会を得ましたが、自らが行なったかつてのHPVワクチン批判報道を反省されていました。しかし、組織としてその批判を覆す報道ができない、と。
私も自分の専門外は分かりかねますが、ポピュリズムではない、真の報道機関であってほしいと思います。
お問合せいただきますが、令和3年2月に接種可能となった9価ワクチンはまだ、男性への接種適応がありません。2価ワクチンも同様で、現在国内で接種ができるのは、4価ワクチンのみです。
いよいよ令和5年度より9価ワクチンの公費接種、交互接種が開始されます。残る要望は、男性の公費接種化と、男性への9価ワクチン適応拡大です。
HPVワクチンに関して頂くご質問に回答した動画を公開しています。
また、男性への接種も含め、HPVに関連する病気とHPVワクチンについて解説しました。
文責 櫻井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:令和2年12月8日
補筆修正:令和2年12月30日
補筆修正:令和3年3月14日、7月19日、11月26日
補筆修正:令和4年6月29日、9月13日、10月8日、25日、11月7日、21日
補筆修正:令和5年3月23日、4月14日、27日、6月6日、26日、8月2日、9月9日、11日、11月13日
補筆修正:令和6年年2月3日、3月9日、27日、7月5日