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おもな性感染症

性感染症(STI)

産婦人科クリニックさくら 性感染症(STI)

クラミジア感染症

原因

おもな性感染症

クラミジア・トラコマチスという菌が、性行為やオーラルセックスで性器、特に子宮頚部や咽頭(のど)に感染します。肺炎の原因となるクラミジア・シッタシとは異なる菌です。

コンドームを正しく、つまり性交渉の最初から装着することで、男女ともに感染を予防することが出来ますが、最近ではオーラルセックスが広まっているため、子宮頸部の感染はなくても、咽頭クラミジアの感染が大変増えてきています。

症状

性器クラミジアの場合
症状の経過 初期は子宮頚部に感染し、おりものが増える、ただしこれは自覚されないことが多いようです。
次に、上行性感染といって、子宮の内腔を通過し卵管に至る。ここで卵管炎を起こすこともあり、卵管閉塞の原因となります。

さらに感染が進むと卵管采から腹腔内に拡がり、卵管周囲炎を起こし、腹痛の原因になります。
(感染から③まで、1〜3週間とされています)

炎症が進むと卵管周囲癒着が形成され、卵管閉塞と同様に不妊の原因となります。
クラミジアと不妊の関係は、これが一番多いです。
感染はもっと進むことがあり、驚くべきことに右上腹部の肝臓の周囲にまで広がり、肝周囲炎を起こします。Fitz-Hugh-Curtis症候群、として知られています。
右季肋部、あばら骨の下辺りの痛みの原因となります。
咽頭クラミジアの場合

程度は様々ですが、喉の痛みを自覚します。
風邪かな?と思う程度のこともありますが、発熱などの全身症状はほとんどありません。

男性では尿道炎、排尿時や射精時に膿が出ることや痛みが出ることがあります。
しかし無症状のことも多いようです。男性不妊の原因にもなります。

またクラミジアは大切な赤ちゃんに、出産中の産道感染を引き起こします。
軽症であれば結膜炎、重症になると肺炎の原因になり、未熟児や低出生体重児の場合、生命を危険にさらしてしまいます。

クラミジア感染は皆さんが思ったより拡がっています。
当院でも不妊症や下腹痛がある患者さんにはクラミジア検査を行っていますが、1割以上の方が陽性となります。
特に10代、20代、を中心に50歳代まで感染していることが見つかります。
性風俗業の方では非常に陽性率が高くなります。

妊娠した時には、赤ちゃんへの感染を予防するため、妊娠初期に検査をしますが、検査後に感染した場合、見落としてしまう可能性があります。
同時に淋菌やHPV感染をしていることがあるため、クラミジアと淋菌を同時に検査したり、子宮頚がん検査をお勧めしています。

検査方法

子宮頚部への感染を疑う場合、内診で子宮頚がん検査と同じように子宮頚部を綿棒でこすりますが、ほとんど痛みはありません。
出血しているときは菌が見つからないことがあるため、生理中や不正出血のときは検査は向いていません。

咽頭炎を疑う場合は、うがいした生理食塩水で検査します。

一方で、男性の検査は尿検査や尿道を綿棒でこすらなければならず、これは相当な痛みが伴うものの、偽陰性(菌を持っていても陰性となる)率が高いとされています。
そのためパートナーである女性が陽性であれば、男性も治療を開始しています。

治療方法と治療効果判定

アジスロマイシン(ジスロマック)という内服薬が第一選択です。マクロライドという種類に含まれる抗生物質のため、妊娠中も服用することができます。
ジスロマックは一度に250mg錠を4錠内服しなければなりませんが、1回の内服で済みます。

ジスロマックは薬の効果が大体7~10日持続しますが、除菌率は90%ほどで、ある発表によると60%くらいではないか、とも言われています。
そのため、内服後3週間後に再検査が必要です。

 

淋菌感染症

原因

おもな性感染症

淋菌感染症(淋病)は淋菌による感染症です。

症状

クラミジア感染に似て、初期はおりものの変化、異常を自覚することがあり、進行すると下腹部の痛みとなります。
このおりもの変化やお腹の痛みはクラミジア感染よりも重いことが多く、発熱を伴うことが多いです。

クラミジア感染と同様にオーラルセックスにより喉への感染が多く、喉の痛みを自覚します。
男性の感染も重篤で、クラミジアと同様に尿道炎、排尿時や射精時に膿が出ることや痛みが出ることがありますが、クラミジアより強い症状が出ます。

カップルのどちらかで淋菌が陽性となった場合、カップルでの治療が必要です。

検査方法

クラミジアと同様、子宮頚部への感染を疑う場合、内診で子宮頚部を綿棒でこすりますが、ほとんど痛みはありません。
クラミジアと同時に検査をすることが多いです。
出血しているときは菌が見つからないことがあるため、生理中、不正出血をしているときは検査は向いていません。

クラミジア感染よりも咽頭の検査で陽性となることが多く、クラミジアと同じ様にうがいした生理食塩水を検査します。

パートナーである女性が陽性であれば、男性も治療を行います。

治療方法と治療効果判定

淋菌は耐性菌と言って、抗生物質に対して治療抵抗性があり、抗生物質の効果がなくなってきています。

現在最も効果のある抗生物質は、セフトリアキソン(ロセフィンなど)ですが、点滴で用います。
そのため治療には院内で30〜60分の時間を要しますが1回のみです。

セフトリアキソンは、抗生物質の中でもアレルギー性が若干高く、使用できない場合もあり、その場合は他の抗生物質を使わなければなりません。

クラミジアと同様、内服後3週間後に再検査が必要です。

 

性器ヘルペス

原因

おもな性感染症

ヘルペスは単純ヘルペスウィルス(HSV)による感染症で、一度罹ると症状が改善しても、生涯繰り返し再発することがあります。

HSVは、1型、2型があり、かつては性器には1型、口の周りには2型が多かったですが、オーラルセックスにより、性器と口唇ヘルペスの違いがなくなってきました。

ともに初めての感染の時に症状が強く、また1型の方が2型よりも症状が強いです。

HSVは症状が治った後も、知覚神経節に潜み、体調を崩したときや月経、妊娠など、身体に変化を来したときに再発することが多く、生涯繰り返す可能性があります。再発するものは2型の方が多いようです。

ヘルペスに感染した方で、HIVにも感染していることが多いと報告されていますので、注意が必要です。

症状

性器ヘルペスの場合

性器にできるヘルペスは、陰部に潰瘍などの病変を作り、とても痛みが強いです。鼠径(足の付け根)のリンパ節が腫れることが多いです。

初感染(初めての感染)は、感染後2〜10日の間に発症、症状がとても強く、発熱、倦怠感などの全身症状がみられることもあります。重い場合、排尿や歩くことすらできなくなってしまい、入院が必要となることもあります。さらに強い頭痛、項部硬直などの髄膜刺激症状や、排尿困難、便秘などの末梢神経障害を来すこともあります。

再発の場合は、初感染ほど重い症状とはなりません。初感染、再発ともに、症状が消失するまで病変からウィルスが排泄されるため、性交渉を控えるか、コンドームの使用が勧められますが、性器以外にも病変ができることがあるため、コンドームでは完全にパートナーへの感染は予防できません。

出産時に性器ヘルペスができてしまった場合、赤ちゃんへの感染を予防するため、帝王切開で分娩しなければなりません。

口唇ヘルペスの場合

口唇ヘルペスは、唇や口角(口に両端)にでき、性器ヘルペスよりも再発の頻度が高いです。

 

検査方法

病変を綿棒でぬぐい、直接ヘルペスウィルスがいるか検査します。この検査はやや偽陰性率が高いため、さらに血液検査でウイルスの抗体をみる場合があります。

治療方法と治療効果判定

ヘルペスはウィルスのため、抗ウィルス剤を投与します。

多くは内服薬で治療できますが、重症な場合は点滴治療が必要で、その場合は高次施設を紹介しています。

内服薬は、

・バラシクロビルは、1回500mgを1日2回、初発は10日間服用します。最初は5日間服用します。

・ファムシクロビル(ファムビル®︎)は1回250mg(1錠)を1日3回、初発も再発も、5日間服用します。

再発でも発症後早いうちに内服を開始することが早く治り、さらに内服が次の再発を遅らせます。再発の症状が回復しても服用しましょう。

再発の時に、PITという治療法を選択することもできます。これは、ファムビルをあらかじめ処方してもらい、再発したら服用する方法です。

また再発抑制療法は、再発を繰り返す(1年に6回以上)場合、バラシクロビルを500mg、1日1回毎日服用することで再発率を低下させることができ、1年間、保険診療で処方が可能です。

ヘルペスは症状の消失により、治ったことになりますので、治療効果を判定するために改めて検査をする必要はありません。

尖圭コンジローマ

原因

おもな性感染症

尖圭コンジローマは、子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウィルス)の一種による感染症で、一度罹ると症状が改善しても、生涯繰り返し再発することがあるのはヘルペスと似ています。

HPVには100種類以上の型があり、高リスク型とされる十数種類は子宮頸がんの原因となり、低リスク型のHPVが尖圭コンジローマを引き起こします。

コンジローマは、男女ともにHPVを持つパートナーとの性交の際に生じた、微細な傷(通常目に見えたり、痛みがあるものではありません)からHPVが体内に感染するとされています。

症状

HPVが陰部で増殖するときに、細かいいぼ状の隆起する病変を形成してきます。ほとんどが婦人科診察の際に偶然見つかったり、自覚症状として病変を触れたり、かゆみがあることがありますが、激しい重い症状は見られません。

性交で生じる傷が出来やすい場所、腟の入り口、特に小陰唇の内側に出来ることが多く、また腟と肛門の間や、肛門周囲にできることも多いです。

治療しないで放置すると、病変が大きくなったり腟内にまで拡がる事があります。早期の治療が早い治癒につながります。

コンジローマは病変からHPVが排出されるので、病変がある時期は感染性があります。
治療が終了するまでの間、性交はコンドームを使用してください。

妊娠中にコンジローマが発生すると、出産時に赤ちゃんに産道感染を起こし、喉頭咽頭腫の原因となるため、帝王切開が選択されることが多いです。

検査方法

コンジローマの診断ですが、ほとんどの場合、一見して診断が出来ますが、腟は微細なひだが沢山あり、一見正常なのか、コンジローマなのかわからないことがあります。
確定診断のため、一部組織を採取し、病理診断をする場合もあります。

治療方法と治療効果判定

治療は2007年12月に発売された「ベセルナクリーム5%」が第1選択となります。

他の治療法は医療機関で行わなければなりませんが、ご自分で治療が出来る方法のためよく処方されています。

ベセルナクリームは局所免疫を賦活化し、ウイルス増殖抑制作用とウイルス感染細胞障害作用により、身体が持つ本来のウイルス感染防御機構を介して病変を消失させると考えられています。

使用法は週に3日、例えば月・水・金のように曜日を決めてご自分で病変に塗るだけです。
ただし、6~10時間後くらいに洗い流さなければならないため、寝る前に使って、起きたときに洗い流す、と言う方法がお勧めです。

副作用は、主に塗布部位の皮膚のトラブルです。紅斑といって、皮膚が赤くなるのが一番多いようです。塗布部位の洗浄が遅くなるほど起こり易い傾向があります。
言うまでもなく、塗布した後は手指を石鹸で洗浄して下さい。薬剤を洗い流す目的とHPVがついた手で周囲を触ると危険だからです。
また、腟内や肛門に直接塗ることは重大な皮膚障害を起こすことがあるため避けなければなりません。

2週間くらいに1回、病変が治っているかチェックが必要です。ベセルナクリームは、最大16週間使用し、それでも治らない場合は他の治療法を選択します。

他の治療方法は、

・手術療法
外科的切除
電気焼灼、レーザー蒸散
液体窒素凍結

・薬物療法
ポドフィリン
5-FU軟膏

などです。

「液体窒素」による凍結は、皮膚科ではよく行われている方法ですが、陰部の尖形コンジローマには効果が高いと言えません。
外科的な切除法は文字通り病変を切除して、時に切除部分を縫合する方法で、局所麻酔で出来ることが多いですが、出血や痛みなどのリスクがあるため、薬物療法で治らない、大きい、再発をきたしやすい、などの場合にのみ行います。

治療効果は肉眼的に病変が見えなくなることで確認します。

治癒後、3ヶ月以内に25%の再発があるため、3ヶ月後に再発していないか、確認する必要があります。

予防方法

ここで述べているSTI全般で、原因となるウィルスや細菌に極力触れないことが予防となります。そのためには、コンドームをつけない状態での性交渉やオーラルセックスを避けることです。

しかし、このSTIの中で唯一予防できるワクチンがあるのがコンジローマです。原因となるHPVを予防するワクチンを接種することで、コンジローマの発生を89%減らすことができます。

コンジローマも男性にもかかるSTIです。令和2年12月25日、HPVワクチン「ガーダシル®︎」が男性にも接種できるようになりました。

トリコモナス腟炎

原因

おもな性感染症

トリコモナスは原虫の一種です。性交渉以外でも感染がみられることがあり、性交経験がない幼児でも診断されます。

症状

かゆみとおりものの異常(黄色く、臭いがします)がみられます。

強い炎症を起こすため、不正出血がみられることもあります。

検査方法

とても感度の高いPCR検査(内診で腟内を綿棒でこすります)が保険適応となりました。

男性では検出率が低いため、パートナーである女性が陽性であれば、男性も治療を開始します。

治療方法と治療効果判定

トリコモナスには、メトロニダゾール(フラジール)やチニダゾールが有効で、妊娠していない女性では内服(メトロニダゾール250mgを1日2回、10日、またはチニダゾール500mg、4錠1回のみなど)と腟錠(メトロニダゾール1日1錠、10日間、またはチニダゾール1日1錠、7日間)を併用します。

妊娠中(特に3ヶ月以内)は内服できないため、腟錠のみを使用し、男性は内服薬のみです。

メトロニダゾールはトリコモナス原虫だけでなく、様々な細菌感染の治療効果もある一方で、腟の常在菌(腟をきれいに保つ菌)である乳酸桿菌を障害しないため、細菌性腟症、細菌性腟炎の治療にも用いられます。

内服中と、内服後3日間は、アルコール摂取により悪酔いすることがあるため、アルコール摂取を控えなければなりません。

内服後に再検査が必要です。

梅毒

原因

おもな性感染症

梅毒は細菌の一種です。

かつての感染症であるイメージが強いですが、近年先進諸国でも感染が増えてきており、日本でも特に若年の女性に増えていることが問題となっています。

また、HIV感染との合併感染が増えていますので、梅毒陽性の方はHIVなどのSTI検査も受けましょう。

症状

近年では進行した梅毒が発見されることはまれです。

初期は感染部位(性器、口、肛門、手指など)に痛みのないしこりができ、膿が出たりします。また鼠径リンパ節が腫れます。

その後、全身のリンパ節が腫れたり、発熱、倦怠感、関節痛が出る場合があります。バラ疹と呼ばれるピンク色のあざが足の裏から顔面まで出現します。

妊婦さんが梅毒に感染している場合、お腹の赤ちゃんが先天性梅毒にかかる可能性がありますので、妊娠初期には検査が行われ、感染が分かった場合には妊娠中も治療が必要です。

検査方法

血液検査で梅毒の反応を検査します。

治療方法と治療効果判定

抗生物質であるアモキシシリン(サワシリン、パセトシン)やアンビシリン(ビクシリン)を服用します。治療効果が見られるまで、最低でも4週間、長期の場合、半年くらい服用しなければならないこともあります。

内服後に再検査を行い、治療効果を判定することが必要です。

マイコプラズマ・ジェニタリウム

原因

おもな性感染症

細菌の一種です。

国内ではあまり認知されていませんが、マイコプラズマの一種M.genitaliumはSTIとされており、子宮頸管炎や骨盤腹膜炎、流早産、不妊、HIV感染に関係します。M.hominisやウレアプラズマは、現在では性感染症としてとらえられていないため、治療の適応外とされています。

症状

自覚症状はあまりありません。おりものが正常に見える場合にも感染していることがあります。

妊娠中に感染していると流産や早産の原因となることがあるため、妊娠前に検査と治療が必要です。

また難治性の膀胱炎や下腹痛の原因とされています。

検査方法

PCR検査(内診で腟内を綿棒でこすります)を行います。

治療方法と治療効果判定

耐性菌が増えており、最も効果が高いのがドキシサイクリン(ビブラマイシン)とシタフロキサシン(グレースビット)の併用やミノマイシンです。

妊婦さんは服用できないため、クロラムフェニコール(クロマイ)腟錠を使用します。

パートナーも同じ様に服用します。

内服3週間後に再検査を行い、治療効果を判定することが必要です。

B型肝炎、C型肝炎、HIV(エイズ)

原因

おもな性感染症

いずれもウィルスの一種です。

性行為だけでなく、母子感染や輸血による感染が知られています。

HIVは梅毒や性器ヘルペスとの合併感染が多いとされ、さらに現在検査をしていないために気づかれていない方が増えています。

症状

B型肝炎、C型肝炎は、文字通り肝炎の原因となり得ます。

またHIVは免疫不全の原因となり、がんや細菌感染を引き起こします。

妊婦さんの感染は赤ちゃんへの感染の原因となるため、出産後の赤ちゃんに治療が必要となることがあります。

検査方法

血液検査で行います。

治療方法と治療効果判定

それぞれ治療法が異なり、専門的な治療が必要となるため、専門医に紹介させて頂きます。