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再発する性器ヘルペスに再発抑制療法とPIT

性器ヘルペスや口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染することにより発症します。

厄介なことに、一度感染すると、治ってもウイルスの一部が神経節に潜んで、体調を崩したり、月経や妊娠の際に再発してくることが、生涯にわたることがあります。

ヘルペスが再発したらどのような治療がありますか?

再発しても、初めての感染に比べて痛み弱いのですが、ピリピリとした刺激、痛み、時にえぐれたような潰瘍を形成することがあり、その都度、ヘルペスの薬を内服した方が、早く治ります。

一方で、再発した時に手元にお薬があったら、と思ったことはありませんか?

ヘルペスを何度も何度も繰り返す場合、目安としては年に3〜6回以上繰り返す場合に、以下の治療が行われます。

・再発抑制療法:年に6回以上繰り返す場合。これはバルトレックス®︎(バラシクロビル)を1日1錠、1年間、内服し続ける方法です。

・PIT:年に3回以上繰り返す場合。再発の時に備えて、あらかじめヘルペスのお薬を処方することができる治療法です。

再発抑制療法とは?

上に書いたようにバルトレックス®︎(バラシクロビル)を1日1錠、1年間、内服し続ける方法です。

内服中にも再発することがあり、その際には1日2錠に増やして、症状が治まったらまた1日1錠内服し続けます。

頻回に再発を繰り返す場合には、1錠の半分量を1日に2回服用するか、2錠を1日に1回服用する方法に変更を検討します。

1年間内服を終えた後に、内服を継続するか相談します。

PITとは?

PITはPatient Initiated Therapyの略で、患者さんが自分で判断して内服する方法です。

あらかじめ処方された薬を、再発の症状が出てから6時間以内に内服を開始します。

再発してもすぐに受診できる訳ではありませんから、手元に持っておく、と言う選択肢です。

PITではどの薬をどのように内服したら良いですか?

PITには保険適用があり、以下の2種類の薬を選択できます。

・ファムビル(ジェネリック医薬品には保険適応がありません)錠は、

再発の症状が出てから6時間以内に内服を開始、初回に4錠、12時間後に再度4錠服用します。

・アメナリーフ錠は、

再発の症状が出てから6時間以内の食後に1回のみ3錠服用します。

治療のコストはどれくらいかかりますか?

再発抑制療法は、バラシクロビルを1日に1錠内服しますが、3割負担の方で30日の薬価は、690〜1,530円です。

PITの薬価は、患者さんの3割負担で、

・ファムビル:約770円

・アメナリーフ:約2,290円

です。

妊婦や授乳中の場合、どうしたらいいですか?

いずれの薬も、妊娠している可能性や妊娠中、授乳中の患者さんは、内服する前に産婦人科を受診して内服の可否を検討してください。

上に挙げてきたバルトレックス(バラシクロビル)、ファムビル、アメナリーフに共通するのは、

・妊娠中

「有益性が危険性を上回る場合にのみ投与」

これは多くの薬剤の添付文書でこのような記載がされていますが、これまでの使用で、明らかな異常は認められていませんが、解釈としては必要が無ければ治療を見合わせる、というもので、特にヘルペスの再発は、上にも書いたように症状が軽く、自然治癒が見込めるため、よく相談した上で治療を行うか決めましょう。

動物を対象とした試験では、バルトレックス、ファムビルでは胎児に、またアメナリーフでは胎盤への移行が認められ、バルトレックスの大量投与では胎児の異常がみられています。

・授乳中

「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討」

こちらもいずれも、よく書かれる表現で、治療するかしないか、治療する場合に授乳を継続するか、一時中止するか、相談します。

どの薬もやはり動物を対象とした試験で母乳中に薬剤が移行していました。ファムビルでは24時間後にはほとんど消失していたそうです。


ヘルペスはSTIです。STIは重複感染がある可能性もありますので、診断後は他のSTIの検査も行ってください。

初出:2023年2月2日
補筆修正:令和5年2月27日、9月6日
補筆修正:令和7年1月17日、22日