コロナ後遺症として、様々な症状がみられていますが、男性の精液所見が悪くなることをご存知でしょうか。
当院の患者さんにも、コロナ感染後に精液検査を受けて、結果が良くなかった患者さんがみられています。
忽那賢志先生(現在大阪大学)が、Yahoo!ニュースに書いて下さった記事がありました。
コロナウイルスが精液から検出されたり、精巣組織にあることが確認された報告をきっかけに、その後イタリア(Gacci M et al. 2021)やドイツ(Maleki BH and Tartibian B. 2021)、欧州生殖医学会(ESHRE, 2023)から感染後の精子減少や無精子症が報告されています。
ドイツからの報告では、コロナ感染後60日が経過しても精子の数が回復しない状態が詳細に書かれています。
またESHREから発表されたのは、COVID-19の感染後、3カ月以上が経過しても改善しないことが確認されました。この研究は、スペインの不妊治療クリニックで行われ、特に運動性と総精子数の低下が深刻で、半数の男性では総精子数が57%減少していました。
COVID-19感染が精液の質に長期的な影響を及ぼす可能性を示唆しており、特に炎症や免疫系の損傷が関与していると考えられます。
新型コロナウイルス感染の重症度が高いほど精子への影響も大きく、重症患者では無精子症に至ることもあり、感染が軽症であっても、精子の質が3カ月以上にわたって低下することが確認されています。
この3ヶ月、と言う目安がとても重要で、精子が作られ始めてから射精されるまで、およそ3ヶ月かかりますので、3ヶ月以上の低下、と言うことは、感染後も継続して精子形成が妨げられている、と言うことになります。
知人の男性も、コロナウイルス感染後に経時的に精液検査を行って、精子数が減少し、ほとんど運動しなくなってしまったことをSNSで報告してくれました。
ウイルス感染の中でも、ムンプス(おたふくかぜ)は精巣炎の原因となり、男性不妊となる可能性があります。
コロナウイルス感染によって引き起こされる精子減少が、一時的なものでいずれ回復するのか、その後ずっと続いてしまうものなのか、感染から115日(中央値)経ち、精子の運動率と運動精子数が減少している、という報告があります(Pazir Y et al. 2021)。
病気は罹るまでなかなかその怖さを実感しませんが、若くしてコロナウイルスに感染し、その結果、将来妊娠できなくなったら、、これはとても恐ろしいことです。
コロナ感染した方は、一度、精液検査を行ってみてはいかがでしょうか。当院でも感染前より悪くなっている方がいらっしゃいます。
また、これ以上の感染を予防するために、ワクチン接種を考えてください。当院でもコロナワクチン接種を開始しています。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:令和3年5月26日
補筆修正:令和3年5月29日
補筆修正:令和4年7月19日、9月12日、10月21日、12月19日
補筆修正:令和5年3月7日、10月5日
補筆修正:令和6年1月16日、4月11日、5月22日、8月18日、10月16日、コロナワクチン接種開始を追記しました。