ピルの服用に伴う最大のリスク、合併症は「血栓症」です。
当院では、ピル服用開始前にチェックシートによる問診と採血でスクリーニング検査を行い、ピルの服用が適していることを確認し、ピル服用が適さない患者さんには、代わりの治療法を勧めています。
Q. なぜ、ピルの服用で血栓症のリスクが高まるの??
ピルに含まれるエストロゲン(女性ホルモン)の作用により、まれではありますが、血管内で血液が固まる、すなわち「血栓」を作ります。
血栓が起こりやすいのは、
・もともと血栓傾向がある(先天的な病気もあります)
・ピルを使い始めた頃
そして
・ 40歳以上
・ 喫煙者
・ 肥満の方
・ 上記のスクリーニング検査結果異常
などです。
ピルによる血栓は、妊娠、分娩による血栓のリスクよりも低く、一般的には安全な薬、と言っても差し支えありませんが、稀であるとは言え、ピルによる血栓症のため亡くなる方もあり、また一度血栓ができると次から次へと血管内で血栓ができるようになってしまうため、血栓溶解剤を長期間服用しなければならなくなります。
血栓溶解剤は血が固まりにくくする薬ですから、血液検査で採血を受けても、怪我をしても出血は止まりにくい状態です。さらに手術も受けにくくなり、最も困るのは、月経が止まりにくいことです。
令和3年3月に発刊された「OC・LEPガイドライン2020年版」では、いつまでピルを服用出来るか、について、
との表現に改めました。また、40歳以降のピルの継続を勧めない対象として、以下の様な方たちをあげています。
当てはまるものがないか、改めて一緒に確認しましょう。
そして、40歳以降にピルを服用するメリットとデメリットをあげられています。
有益性と危険性を良く理解し、有益性が危険性を上回ると判断した場合に服用を継続します。
最後に産婦人科クリニックさくらの、40歳以降のピル処方の方針は、
40歳になったら、以下に挙げる代替療法への変更も検討しましょう。
継続して服用することよりも、新しく始める方が血栓症のリスクが高いので勧められません。
○月経痛や過多月経の治療法として低用量ピルを服用されている場合の代替療法について
子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症の治療として用いられることが多い治療法で、
・手術療法
・ジエノゲスト
・POP(低用量ディナゲストなど)
・ミレーナ
・子宮鏡下子宮内膜焼灼(蒸散)術
・偽閉経療法
などが代替治療の候補です。
○避妊目的の場合、コンドームや子宮内避妊リング(IUD)を使うなどの他の治療法をお勧めします。
○PMS(月経前症候群)であれば漢方療法やエクオール含有サプリメント・ビタミンE含有サプリメントなどです。
また比較的長期間にわたって内服していた場合、ピルを止めても症状が無くなっていることもあります。
それぞれの患者さんに応じた治療法をお勧めしています。
参考までに、現在当院で処方しているピルの一覧です。ご自身で処方されているピルをご確認下さい。
・中用量ピル
プラノバール
・低用量ピル(OC)
トリキュラー
マーベロン
ラベルフィーユ(トリキュラーのジェネリック)
ファボワール(マーベロンのジェネリック)
・低用量ピル(LEP)
ルナベルLD
ルナベルULD
ヤーズ
ヤーズフレックス
ジェミーナ
フリウェル (ルナベルのジェネリック)LD、ULD
ドロエチ (ヤーズのジェネリック) 年齢
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:2017年4月20日
補筆修正:2017年9月12日
補筆修正:2018年9月28日
補筆修正:2019年3月5日
補筆修正:2019年12月6日
補筆修正:2020年5月13日、14日、21日、5月29日、9月14日、30日
補筆修正:2021年1月10日、2月16日、3月31日、4月13日、9月16日、12月8日、22日
補筆修正:令和4年5月2日、6月17日、7月19日、トコエルを追記しました。
40代以上のピル