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子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症の4つの薬物療法と副作用、治療費など

ジエノゲスト

ジエノゲストは子宮内膜症の新しい治療薬として、2008年1月21日に発売されました。
内膜症の内服治療薬は、実にダナゾール(ボンゾール®)以来でした。

ジエノゲスト(ディナゲスト®)発売までは、OC(低用量ピル)の副効用を期待して、OCが内膜症の治療薬として使われる傾向にありました。

ジェノゲストは、黄体ホルモン(プロゲステロン)製剤で、子宮内膜の増殖抑制効果があり、また子宮内膜症の増殖も抑制することから、内膜症の治療効果があらわれる治療薬です。
服用法は毎日、朝夕食後に1錠ずつ内服します。開始するのは月経2~5日の間で、OC/LEPのような休薬期間はなく継続して服用します。
また偽閉経療法のように、投薬期間は6ヶ月まで、といった期限はなく、当院でも投与期間が13年を越えた患者さんもいらっしゃいます。

排卵も抑制されるため、月経は来なくなります。理論的にはほとんど妊娠はしないと考えられるため、現在妊娠を希望されている方には向かない、また妊娠を考えるときには服用を中止します。OCのような避妊目的の薬剤ではないため、妊娠を望まない場合は、内服中でも避妊は必要とされています。

無排卵性周期となるため、不正出血が一番多い副作用です。
服用を開始して、月を追うごとに不正出血の頻度、出血量は減少します。1年近く経っても、半数近くの方に出血が残ることがあるとされていますが、産婦人科クリニックさくらで処方している方では、半数よりずっと少ないです。
この不正出血対策については、別に触れます。

2017年、韓国の施設から、ジエノゲストの長期服用で骨密度が低下する、と言う医学論文が出されました。
これによると、腰椎で内服開始後6ヶ月で骨密度が2.2%、12ヶ月で2.7%低下し、75%の方で有意な低下を認め、大腿骨頸部でも1年で2.8%低下する、とされています。
これまで詳しい長期投与による骨密度への影響がわかっていなかったのですが、当院でも内服前と、1年ごとの骨密度検査を推奨しています。


ジエノゲストは保険適応の薬剤で、一か月の患者さん負担額は、ジェネリック薬を選択した場合、1ヶ月、約1,300円です。

また保険適応は現在、子宮内膜症、子宮腺筋症の疼痛が対象で、子宮筋腫は対象外ですし、子宮筋腫には明らかな治療効果は認められていません。

治療効果としては、偽閉経療法とOC/LEPの間に位置し、OC/LEPはエストロゲンと黄体ホルモン(プロゲステロン)の合剤であるのに対し、ジエノゲストは黄体ホルモン単剤で、エストロゲンが含まれていないメリットがあります。

OC/LEPには最大の副作用である血栓症がリスクとしてあります。40歳以上の方も、血栓症のリスクが高まりますが、ジエノゲストには血栓症のリスクはほとんどありません。

さて、上に書いたジエノゲストの最大、最多の副作用、不正出血の対策ですが、ジエノゲストの不正出血は少ないことが多く、実際に服用されている方にとってトラブルと、とらえられることはあまり無いようです。むしろこれまで月経量が多い、月経痛が強いことに悩まされて来た方たちなので、これくらいの出血は困っていないと言う方がほとんどです。

しかし、特に子宮腺筋症では、この不正出血、時に大量となることがあり、国内でも輸血が必要であった例が報告されています。

これに対して、ジエノゲストを開始する前、3〜6ヶ月の間、偽閉経療法、またはOC/LEPを投与し、子宮内膜が十分薄くなってからジエノゲストを服用すると、不正出血が少なくてすむ、という方法を、ジエノゲストSequential法と呼びます。

偽閉経療法に続けるジエノゲストSequential法が、卵巣チョコレート嚢胞の術後再発が少なく、また不正出血が少ない方法と報告されています。

ジエノゲストもホルモン剤のため、ホルモン剤=太るのでは?と心配される方も少なくありません。

エストロゲンや黄体ホルモンでは、食欲増進作用や水分貯留作用により、体重が増えることがあります。ジエノゲストは水分貯留作用の少ない黄体ホルモンで、また食欲が増えて困る、という方もほとんどいらっしゃいません。


令和2年5月28日、このジエノゲストの低用量剤が処方できるようになり、さらに令和4年6月17日にオーソライズド・ジェネリック薬が出ました。

適応は月経困難症です。低用量ピルの副作用、血栓症のリスクがないこと、また服用終了後の内膜症の発生が少ないことが最大のメリットです。

 

次はIUS(子宮内黄体ホルモン放出システム・ミレーナ®)について説明します。

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