子宮内膜症の治療に広く用いられている「ジエノゲスト(ディナゲスト)」について解説します。


ジエノゲストは低用量ピル(OC/LEP)に含まれている黄体ホルモンを改良、改善されたいわゆる「第4世代」の黄体ホルモン製剤です。

この黄体ホルモン製剤の開発の経緯は、いかに「アンドロゲン活性がない(=男性ホルモン作用がない)」黄体ホルモン製剤を作るか、でした。
これは黄体ホルモンの、ニキビや肌荒れ、多毛などの副作用を軽減する、ということです。

またOCでは稀ではあるものの重篤な副作用として血栓症があり、特に40歳代から増えるため、当院でも40歳以降のピル処方は、原則行っておりませんが、ジエノゲストにはエストロゲンが含まれていないため、OCと異なり血栓症の副作用がほとんどありません。

そこで子宮内膜症の内服治療法としてお勧めするのは、
・10~30歳代は、OCやLEP
(LEPとは、治療目的に用いる低用量ピル、のことで、使用目的が異なるためこう呼ばれますが、実際はOCと同じものです)
・40歳からはジエノゲスト
と言う安全に配慮した治療です(10~30歳代の方にジエノゲストが向かない、と言う意味ではありません)。

ジエノゲストは卵巣から分泌されるエストロゲンを低下させますが、偽閉経療法にみられるような、副作用としての更年期障害もほとんどありません。

最も頻度の高い副作用が不正出血です。いつ、どれくらいの量や期間、出血するのか予想できません。
特に子宮腺筋症では大量出血となることがまれにあり、いくつかの不正出血対策が試みられています。

不正出血もディナゲストを服用し続けているとほとんどみられなくなる、または非常に少量になりますが、女性にとっていつ出血するのかが分からないのは、不便なことだと思います。
現在当院では偽閉経療法、またはLEPで3~6ヶ月使用してからディナゲストに移行する方法をお勧めしていますが、これはSequential法と呼ばれ、各施設でも試みられ、効果がみられています。

その他、分かってきた副作用として、
抑うつが5%くらいにみられるそうです。これは先に述べたように、ディナゲストにアンドロゲン活性がないためだそうで、LEPの一つであるヤーズも同様です。

また脱毛も3%くらいにみられるようですが、この脱毛の原因は低エストロゲン状態によるものかも知れません。ただ、抑うつ、脱毛のどちらも、当院で処方している患者さんでは、ほとんどみられていません。

また、低エストロゲン状態により、骨密度の低下がみられることがあります。

2017年に韓国で出された発表では、ジエノゲストを服用して、1年で骨量が2%台低下した、と言うものでした。

ジエノゲスト服用前と、服用中の骨密度測定をお勧めしています。

その他、ジエノゲストは、6ヶ月服用よりも12ヶ月服用の方が子宮内膜症に対する治療効果が高いです。これは治療を開始したら、半年ほどで止めるよりも1年以上続けた方が良い、つまり例えば妊娠前に内膜症治療を行う場合、数ヶ月とか、1年以内の妊娠を希望される方は他の方法、ジエノゲストよりも効果の高い方法を選択した方が良いだろう、ということが言えると思います。

さらにジエノゲストの特性を活かした工夫として、TCR、つまり子宮鏡下手術の術前投与への応用です。
ジエノゲストは子宮内膜の増殖を抑制する薬剤です。ですから内膜症や腺筋症に効果があるのですが、正常の子宮内膜も服用中に増殖が抑制されます。これは短期間であってもです。
そこで月経が発来後、子宮鏡手術に至る期間、ジエノゲストを服用し続けることによって正常の子宮内膜が厚くなることが抑制される、ひいては子宮鏡下に子宮内膜ポリープや子宮筋腫が内膜に隠されることなくよく見える、手術がやりやすい、手術時間の短縮が図れる、さらに病変の取り残しが防げます。

また、ジエノゲストを長期間服用する事への懸念もあるとは思いますが、現在までの所、10年近く服用されている方もいらっしゃいますが、大きなトラブルはみられていません。これは多くの医療施設からも同じように報告されています。

副作用である不正出血と、比較的高いコストから、とかく敬遠されがちなジエノゲストですが、治療効果は非常に高く、また治療開始後長期間にわたり患者さんから受け入れられている治療薬です。

2017年6月、ジエノゲストは、登場から10年が経ち、ジェネリック医薬品が薬価基準収載され、処方が可能となりました。
ジェネリック医薬品の最大のメリットである薬価は、これまでの半額くらいになりました。

当院で処方しているディナゲストも、ほとんどの方がジェネリック医薬品のジエノゲストに切り替えていますが、ジェネリック医薬品に対しては、心配される方もあると思います。診察室でよく相談し、適切な治療を選択して下さい。

子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症の4つの薬物療法について、こちらをご覧下さい。

妊娠を希望している方、近い将来赤ちゃんが欲しい方にもベストな治療法の提示をしてまいります。

初出:2016年12月28日
補筆修正:2017年5月14日
補筆修正:2017年6月15日
補筆修正:2019年5月23日