子宮内膜症治療薬「ジエノゲスト」とは?

子宮内膜症の治療に広く用いられている「ジエノゲスト(ディナゲスト®)」について解説します。

平成20年1月21日に先発品「ディナゲスト」が発売されました。

ジエノゲストは低用量ピル(OC/LEP)に含まれている黄体ホルモンを改良、改善されたいわゆる「第4世代」の黄体ホルモン製剤です。

この黄体ホルモン製剤の開発の経緯は、いかに「アンドロゲン活性がない(=男性ホルモン作用がない)」黄体ホルモン製剤を作るか、でした。
これは黄体ホルモンの、ニキビや肌荒れ、多毛などの副作用を軽減する、ということです。肌きれい

またOCでは稀ではあるものの重篤な副作用として血栓症があり、特に40歳代から増えるため、当院でも40歳以降のピル処方は、原則行っておりませんが、ジエノゲストにはエストロゲンが含まれていないため、OCと異なり血栓症の副作用がほとんどありません。

そこで子宮内膜症の内服治療法としてお勧めするのは、
・10~30歳代は、OCやLEP
(LEPとは、治療目的に用いる低用量ピル、のことで、使用目的が異なるためこう呼ばれますが、実際はOCと同じものです)
・40歳からはジエノゲスト
と言う安全に配慮した治療です(10~30歳代の方にジエノゲストが向かない、と言う意味ではありません)。

偽閉経療法との違いは?

ジエノゲストの服用中は、「排卵をしない」状態です。

月経が来なくても、「閉経」した状態とは異なります。

レルミナリュープロレリンのような偽閉経療法は、この閉経と同じようなホルモン状態で治療効果を発揮します。

閉経の状態ではエストロゲンのレベルは、ほとんど出ていない、のに対して、排卵をしない、と言うことはエストロゲンのレベルは低く抑えられているのです。

また、時々卵胞が発育した状態を診ることがありますが、その後排卵することはほとんどありません。

まとめると、ジエノゲスト服用中のホルモンは、

・エストロゲン(エストラジオール)は、低いレベルから、高めのこともあります。

・黄体ホルモン(プロゲステロン)は、0。排卵していないので、検出されることは通常ありません。

ジエノゲストの副作用

ジエノゲストは卵巣から分泌されるエストロゲンを低下させますが、偽閉経療法にみられるような、副作用としての更年期障害もほとんどありませんが、まれにはみられます。

最も頻度の高い副作用が不正出血です。いつ、どれくらいの量や期間、出血するのか予想できません。
服用を忘れた場合にも出血することがあります。
特に子宮腺筋症では大量出血となることがまれにあり、いくつかの不正出血対策が試みられています。

不正出血もディナゲストを服用し続けているとほとんどみられなくなる、または非常に少量になりますが、女性にとっていつ出血するのかが分からないのは、不便なことだと思います。
現在当院では偽閉経療法、またはOC/LEPを3~6ヶ月使用してからディナゲストに移行する方法をお勧めしていますが、これはSequential法と呼ばれ、各施設でも試みられ、効果がみられています。

その他、分かってきた副作用として、
抑うつが5%くらいにみられるそうです。これは先に述べたように、ディナゲストにアンドロゲン活性がないためだそうで、LEPの一つであるヤーズも同様です。

また脱毛も3%くらいにみられるようですが、この脱毛の原因は低エストロゲン状態によるものかも知れません。ただ、抑うつ、脱毛のどちらも、当院で処方している患者さんでは、ほとんどみられていません。

また、低エストロゲン状態により、骨密度の低下がみられることがあります。

2017年に韓国で出された発表では、ジエノゲストを服用して、1年で骨量が2%台低下した、と言うものでした。カルシウム

ジエノゲスト服用前と、服用中の骨密度測定をお勧めしています。

性欲減退がみられる事もあります。上に書いた男性ホルモン作用が少ない黄体ホルモンだからです。矛盾しますが、ニキビや肌荒れ、多毛など、男性ホルモン作用による欠点ですが、男性ホルモンは性欲や、やる気、元気の源にもなります。男性ホルモン作用を減らすと、性欲減退、うつ症状が出ることもあるのです。

コレステロールに関する報告もドイツからあります。これによると、良い善玉コレステロールであるHDLや悪い中性脂肪は低下し、悪玉のLDL-コレステロールは上昇する、というもので、全体的に悪くなるようですが、統計学的に有意差を持って悪化するものではない、わずかな変化、と結論づけられています。

乳腺に関しては、乳腺症が縮小する報告はありますが、乳がんが増える副作用は報告されていません。

ジエノゲストの内服方法と服用期間、治療費

ジエノゲストの服用方法は、1日に2錠を朝夕に分けて、食後に服用します。

服用期間ですが、6ヶ月服用よりも12ヶ月服用の方が子宮内膜症に対する治療効果が高いです。これは治療を開始したら、半年ほどで止めるよりも1年以上続けた方が良い、つまり例えば妊娠前に内膜症治療を行う場合、数ヶ月とか、1年以内の妊娠を希望される方は他の方法、ジエノゲストよりも効果の高い方法を選択した方が良いだろう、ということが言えると思います。

子宮内膜症の手術後、約30%くらいの再発率が見られますが、術後再発を予防する目的にもジエノゲストは処方されることがあります。
もちろん、術後再発予防に、低用量ピルを用いることも多いです。

また、ジエノゲストを長期間服用する事への懸念もあるとは思いますが、現在までの所、10年以上服用されている方もいらっしゃいますが、大きなトラブルはみられていません。これは多くの医療施設からも同じように報告されています。

副作用である不正出血と、比較的高かったコストから、とかく敬遠されがちだったジエノゲストですが、現在ではジェネリック医薬品が主流となり、月に3,500円くらいの治療費となっています。

治療効果は非常に高く、また治療開始後長期間にわたり患者さんから受け入れられている治療薬です。

1日2回服用する薬のため、飲み忘れのお問い合わせも頂きます。

正確な決まりはありませんが、おおむね、1回の飲み忘れは気付いた時に服用し、2回以上飲み忘れた時には1錠だけ服用してください。飲み忘れによって不正出血が見られることがあります。

その他の使用法

ジエノゲストの特性を活かした工夫として、TCR、つまり子宮鏡下手術の術前投与への応用です。
TCRは、不妊原因となる子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫を治療対象とします。
ジエノゲストは子宮内膜の増殖を抑制する薬剤です。ですから内膜症や腺筋症に効果があるのですが、正常の子宮内膜も服用中に増殖が抑制されます。これは短期間であってもです。
そこで月経が発来後、子宮鏡手術に至る期間、ジエノゲストを服用し続けることによって正常の子宮内膜が厚くなることが抑制される、ひいては子宮鏡下に子宮内膜ポリープや子宮筋腫が内膜に隠されることなくよく見える、手術がやりやすい、手術時間の短縮が図れる、さらに病変の取り残しが防げます。

2017年6月、ジエノゲストは、登場から10年が経ち、ジェネリック医薬品が薬価基準収載され、処方が可能となりました。オーソライズド・ジェネリック(AG)は、先発品「ディナゲスト」を開発した持田製薬から、ジエノゲスト「モチダ」として販売されています。

ジェネリック医薬品の最大のメリットである薬価は、これまでの半額くらいになりました。

当院で処方しているディナゲストも、ほとんどの方がジェネリック医薬品のジエノゲストに切り替えていますが、ジェネリック医薬品に対しては、心配される方もあると思います。診察室でよく相談し、適切な治療を選択して下さい。

ジエノゲスト(ディナゲスト)を服用していると、妊娠はしない?

ジエノゲスト(ディナゲスト)は、避妊薬ではありません。

OC(低用量ピル)のように、避妊を目的として開発、承認された薬剤とはこの点が大きく異なります。

上に書いてきたように、内服することで排卵を抑制し、低エストロゲン状態となることから治療効果が発揮されます。

と言うことは、理論上、妊娠することはない、または妊娠はほとんどない、と言う意味なのですが、人の体、医療では絶対でなければ、可能性は言及せざるを得ません。
実際に服用中の妊娠も報告されており、きちんと避妊をしたい場合は、他の方法で避妊を行わなければなりません。


令和2年5月28日、ディナゲストが月経困難症治療薬として処方できるようになりました。

これまでの半分の量を内服する方法です。低用量ピルでみられる血栓症のリスクがないため、リスクのある方には向いている方法です。

子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症の4つの薬物療法について、こちらをご覧下さい。

妊娠を希望している方、近い将来赤ちゃんが欲しい方にもベストな治療法の提示をしてまいります。ジェノゲスト療法

初出:2016年12月28日
補筆修正:2017年5月14日
補筆修正:2017年6月15日
補筆修正:2019年5月23日
補筆修正:2019年12月2日
補筆修正:2020年1月16日
補筆修正:2020年1月30日
補筆修正:2020年2月10日、18日、19日、3月13日、5月9日、29日、6月12日、8月3日、28日、10月10日、17日、11月14日

ジュナゲスト