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月経の回数を減らしたい、休薬期間の体調が悪い、子宮内膜症の治療効果を高めたい 〜低用量ピルのフレックス・連続投与〜

毎月、月経がないと身体に悪い?

「毎月きちんと月経が来ないと身体に悪い」

「生理は身体に不要なものをデトックスしてるから」

これ、よくある誤解の一つです。

矛盾するようですが、「月経来なくてもへっちゃら」「ない方が楽」「昔から不順だから」と、生理がない状態を放置しておくのはいけません。

確かに女性として、毎月排卵をし、月経が来る状態が「正常」であることに間違いはありませんが、月経への価値観は、「毎月来なければならないもの」と「来なきゃ来ない方が楽だから治療なんかする必要がない」という意見に二分されます。

最近処方が増えている黄体ホルモン製剤(POP)も同じように月経がなくなるので、不思議に思われる方が多いです。

生理痛に低用量ピル

最近では高校生でも「生理痛にピルが効く」「ピルは避妊のためだけじゃない」との理解が広がっています。

むしろ指導者側にピル=避妊、という固定観念が払拭されていないので、改善していかなければなりません。

正しい婦人科の知識を得て、自分自身のQOL向上のためにピルを服用したい、とても良いことです。

もともとピルの避妊効果は「排卵をさせない」ことと「子宮内膜を薄くする」ことによります。

排卵をしなくても、ピルを飲み終えれば血液中のホルモンが減り、子宮から出血が起こります。あたかも生理のようですが、厳密には排卵をしていないので、月経ではなく消退出血とよばれるものです。

月経痛は排卵後に強く、排卵をさせずに起こる出血の痛みは軽い。また子宮内膜を厚くさせないから出血量が少なく痛みが軽い。

またピルに含まれる黄体ホルモンが、痛みを起こす物質の産生を減らします。

この特徴を利用したのが、ピル、特に現代では副作用をなるべく減らそうと、含まれるホルモン量を減らした「低用量」ピルが用いられるのです。

低用量ピルでも痛い、ときは?

せっかくピルを始めたのに、出血のとき痛いんですけど、という声もあります。

お話を伺うと、ピルの前は鎮痛剤も効かなくて、大変だった。ピルを使ってから、鎮痛剤を1、2個服用することもあるが、痛みが完全に無くなってはいない。

もちろんピルの出血の際に、無痛であることが治療としては理想ですが、痛みが全くなくなる、とは限りません。ピルの前と同じ痛みなら「効果なし」ですが、痛みが軽くなったなら「効果あり」で、ピルをベースに、痛い時に鎮痛剤を組み合わせるのも決して悪くはありません。

また、何ヶ月かピルを服用していくうちに効果が出てきたり、ピルの種類を変えることによって痛みが無くなってくるかもしれません。

そして、現在では、フレックス投与・連続投与を検討しても良いと思います。

フレックス投与と連続投与

これまでの低用量ピルは、4週に1回の出血を起こす、「周期投与」でした。これには21日の実薬と7日の休薬するものと、24日の実薬と4日の休薬の「ヤーズ」がありました。

「フレックス投与」は、このヤーズを最長120日間、連続して服用します。成分は全く同じですが、「ヤーズフレックス」という薬剤名に変わります。フレックス投与は途中3日間不正出血が見られたら、4日間休薬します。

「連続投与」は、「ジェミーナ」というピルで、ジェミーナは21日の実薬と7日の休薬の周期投与にも使えますが、77日間の連続服用もできます。ジェミーナはヤーズフレックスと異なり、途中不正出血があっても休薬せず、77日間服用を続けます。

ピルのマイナートラブルの中で、内服中の不正出血は比較的多いものですが、フレックス・連続のように服用期間が長くなるほど不正出血が見られることが多くなります。

それでも、28日毎の出血を起こすよりも、77日、あるいはそれ以上の期間、出血が起こらない方が楽、痛みを感じる回数が減らせる、痛みそのものが軽くなる、休薬期間中の体調不良を減らせる、というメリットを重視するならフレックス・連続投与がお勧めできます。

またピルで稀にみられる血栓症のリスクがほとんどなく、少量の不正出血をのぞいて定期的な月経・消退出血をなくしてしまうPOP(黄体ホルモン製剤)も最近では選択する患者さんがとても増えています。

子宮内膜症の治療効果を高めたい

もう一つ、フレックス・連続投与をお勧めしたいのが、卵巣チョコレート嚢胞など子宮内膜症をお持ちの方です。

すでに複数の報告で、チョコレート嚢胞に対して周期投与よりもフレックス・連続投与の方が早く小さくさせる効果が報告されています。特に欧州などは、子宮内膜症の治療目的に、連続投与が行われています。

OC/LEPによるチョコレート嚢胞の治療効果は比較的マイルドですが、少しでも早く良くするために、周期投与よりもフレックス・連続投与を検討しても良いと思います。

国内のヤーズフレックス、ジェミーナ連続投与も卵巣チョコレート嚢胞の縮小効果が報告されており、当院でも周期投与より縮小するスピードが速い印象があります。

低用量ピルやPOPについて解説した動画を作成しました。

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:令和2年5月20日
補筆修正:令和2年7月13日、8月16日、10月6日
補筆修正:令和3年4月23日、7月14日、9月5日、27日
補筆修正:令和5年8月24日
補筆修正: 令和6年1月3日、3月26日、フレックス・連続投与の疼痛軽減効果を追記しました。