今年に入って、生理痛治療薬の黄体ホルモン製剤を希望して来院される方がいらっしゃいます。お姉さんやお友達が使っている、のがきっかけだったようです。
これまでは、生理痛の対策としてこちらからお勧めしていたもので、かつてはピルやミレーナも同じようでした。今後はこう言う患者さんが増えてくると思います。
この記事の目次
生理痛治療用の黄体ホルモン製剤とは?
低用量ピルは、エストロゲン作用のホルモンと、黄体ホルモン作用のプロゲスチンの合剤です。
エストロゲンと黄体ホルモンが含まれている、と理解して下さい。

さて、ピルの副作用として有名な血栓症は、エストロゲン作用によるもので、エストロゲンを除いた黄体ホルモンだけを利用したピルは安全性が高いです。
日本国内で避妊薬として認可されている黄体ホルモン製剤は、6/30に「スリンダ®」が発売されますが、生理痛の治療としては、黄体ホルモンの排卵抑制効果を利用した治療法が認可されています。
どんな黄体ホルモン製剤があるの?
・ジエノゲスト(ディナゲスト®):低用量(1錠0.5mg)のディナゲスト療法は、令和2年5月に月経困難症治療薬として認可されました。通常量(1錠1.0mg)のジエノゲスト療法は、子宮内膜症や子宮腺筋症に保険適応があります。
・ジドロゲステロン(デュファストン®):排卵抑制効果は高くありませんが、月経痛を和らげる効果は高いです。排卵後に黄体補充療法として不妊治療に、また無月経の際にゲスターゲンテストやホルムストローム療法としても、よく使われています。
・ノルエチステロン(ノアルテン®):連続して服用することにより、排卵を抑制できます。
黄体ホルモン製剤の飲み方は?
これらのお薬を、毎日2〜3回、服用し続けます。ノアルテンは1日1回でも効果のある場合があります。
内服開始は、月経開始から5日以内の方が、最初の1ヶ月目の不正出血を起こしにくくなります。
ジエノゲストは12時間毎に内服すると不正出血しにくくなります。
出産後は21日以上経ってから、流産後は5日以上経ってから開始しますが、ジエノゲストやノアルテンは授乳中は内服出来ません。授乳中のホルモン治療については、こちらにまとめています。
黄体ホルモン製剤の副作用は?
デュファストンは、弱い排卵抑制効果のため、多くの方は少し月経が遅れたり、不正出血がみられる場合もありますが、通常の月経周期であったり、排卵して妊娠する可能性もあります。
ノアルテン、ジエノゲストは、排卵抑制効果がとても強く、そのため月経がほとんど起こりません。つまり生理痛もほとんどありませんが、閉経した状態ではなく、卵巣からエストロゲンは分泌されているため、不正出血が起こりえます。この不正出血はいつ起こり、どれくらいの期間続くか分からないのですが、きちんと服用している場合は、少量で、月経痛やPMSの症状を伴わないことがほとんどです。
ノアルテンは、男性ホルモン作用のある黄体ホルモンのため、にきびや肌荒れが悪くなることがあります。肌あれやニキビの改善が期待できるのは、低用量ピルのドロエチ(ヤーズ)やアリッサと同様に、黄体ホルモン製剤ではジエノゲストですが、月経困難症のある方のみが保険処方が可能な点に注意して下さい。
いずれの黄体ホルモンも、乳腺の張り、時に痛みが生じることがあります。
黄体ホルモン製剤によって乳がんが増えない、という十分なデータはありませんが、乳がんへの影響は軽微と考えられています。黄体ホルモン製剤服用中も、年に1回の乳がん検診も受けて下さい。
黄体ホルモン製剤の安全性は?
低用量ピルの、糖尿病発症を調べた研究で、妊娠糖尿病の既往歴がある場合、低用量ピルはホルモン剤を使わない避妊法と同等のⅡ型糖尿病発症率であったのに比べて、黄体ホルモンのみの避妊薬(POP)では有意に上昇している報告(Kjos SL et al. 1998)が、OC・LEPガイドライン2020年度版に紹介されています。
また、最近の研究では低用量ピルの開始年齢が17歳までの場合、最大骨量(Peak bone mass、20歳前後)への影響があるとされ、つまり高校生までの月経痛に対するホルモン療法は、黄体ホルモン製剤の方が適していると言われています。
1年以上内服を続ける場合には、黄体ホルモン製剤に限りませんが、副作用チェックのために血液検査を行ったり、骨密度の検査を行いましょう。
黄体ホルモン製剤の治療費は?
それぞれの薬剤は、月経困難症がある場合、保険適応となります。価格は3割負担の場合で、薬価のみ、28日分を表しています。
・デュファストン 620〜830円(1日3〜4錠で1ヶ月分。4錠は子宮内膜症がある場合のみ)
・ノアルテン 260〜520円
・ジエノゲスト 690円
子宮内膜症の治療や予防効果は?
子宮内膜症の治療としては、1錠1.0mgのジエノゲストや、デュファストンを用います。
予防効果としては、最近では低用量ピルよりも黄体ホルモン製剤の方が適しているとされて来ました。
最新の情報をもとに、治療法を相談しましょう。
低用量ピル(OC/LEP)と黄体ホルモン製剤について解説動画を作成しました。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:令和3年6月9日
補筆修正:令和3年10月10日、11月7日
補筆修正:令和4年7月5日、6日、12月15日
補筆修正:令和5年8月8日
補筆修正:令和6年1月13日、4月11日、5月15日、7月23日
補筆修正:令和7年6月10日、20日、7月11日、8月11日

