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授乳中の内膜症治療や月経痛・過多月経 〜使えるホルモン剤、使えないホルモン剤、適切な治療は?〜

出産後、授乳中でも月経が再開して、月経痛PMSの症状や、 子宮筋腫子宮内膜症子宮腺筋症の症状が始まってしまうこともあるでしょう。

また授乳中でも排卵が起こって月経が来るのなら、妊娠する可能性があるため避妊のための治療が必要な場合も。

逆に生理不順のため黄体ホルモンを服用することもありますね。

妊娠前に行っていたホルモン治療は、授乳中でも行えるの?

ここでは授乳中のホルモン治療についてまとめました。

授乳中に使えないホルモン剤

偽閉経療法

レルミナ、リュープロレリン

動物実験で母乳に薬剤が移行したため。

条件付きで授乳中に使えるホルモン剤

OC/LEP(低用量ピル)

低用量ピルは、いずれも添付文書では授乳中は「禁忌」とされています。その文書には以下の様な記載があります。

「投与しないこと。他の避妊法をすすめるなど適切な指導をすること。母乳の量的質的低下が起こることがある。また、母乳中への移行、児において黄疸、乳房腫大が報告されている」

つまり母乳の出が悪くなるため、またホルモンが母乳に移行してお子さんに影響がないとは言えない、と言う意味です。

一方で日本産科婦人科学会と日本女性学学会が発行した「OC・LEPガイドライン2020年度版」では、以下の様に規定しており、我々もこれを参考に授乳中でも条件次第で内服可能、としています。

・出産後21日間(3週間)は、血栓症のリスクが高いため、授乳の有無に関わらず服用することができません。

・他の血栓症のリスクが高い場合(動けない状態、分娩時に輸血した、BMI>30の肥満、産後出血、帝王切開後、妊娠高血圧症候群、禁煙)は、服用できない期間が42日間(6週間)に延長されます。

・授乳している場合、産後6か月までは乳汁分泌抑制作用があるため、服用できませんが、それ以降は内服できます。

デュファストン、ルトラール

黄体ホルモン製剤です。

デュファストンは現在生産量が減少していますが、月経困難症に用いることができます。

ともに内服するか、断乳するか、よく相談して決定する必要があります。

プラノバール(中用量ピル)

デュファストン、ルトラールと同じ表現で、内服するか、断乳するか、よく相談して決定する必要があります。

レボノルゲストレル(緊急避妊薬)

緊急避妊に使われるレボノルゲストレルは、乳汁移行があるため服用後24時間、授乳を避ける必要があります。

ミレーナ

ミレーナは過多月経、月経困難症に保険適応があり、また自費診療で避妊目的にも使用することができます。

添付文書は、母乳中に微量ながらミレーナの薬剤(レボノルゲストレル)が移行するため「第一に選択する方法ではありません」とあります。

しかし、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が発行した「産婦人科診療ガイドラインー婦人科外来編2023」では、レボノルゲストレルが赤ちゃんの成長、発達に悪影響はない、とした報告(Shaamash AH, ea al. 2005)を紹介しています。

ジエノゲスト、プロベラ

ジエノゲストは子宮内膜症治療月経困難症の治療に用いられています。

プロベラは月経がなかなか来ない無月経や、不妊治療でも用いられます。

ともに母乳中に微量ながら薬剤が移行するため、授乳しないことが望ましい、とされています。


以上、各薬剤の添付文書や産婦人科のガイドラインを参考にまとめました。

低用量ピルや黄体ホルモン製剤(POP)について解説した動画を紹介します。

初出:令和5年11月24日
補筆修正:令和6年2月18日、ピルやPOPを解説した動画を追記しました。