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月経困難症治療薬「ジエノゲスト(ディナゲスト)錠0.5mg」

3月から、数名の方が、この薬の処方を希望して来院しています。

これまではこういう選択肢もある、とこちらから提示していたもので、多くの患者さんは、え?そんな薬聞いたことがない、生理を止めちゃって大丈夫なんですか? と言った反応でした。

振り返ると低用量ピルも、ミレーナも、当初は皆さん同じような反応でした。

多くの方が使い始めると、知人や姉妹が使っている、とかネットで見た、という方が増えてきますね。

販売から実に4年になろうとしています。当院ではこれまでに300名近くの方に処方を行っており、治療する割合も、徐々に増えてきています。

ディナゲストと言えば、子宮内膜症の治療薬として有名。現在ではジェネリック医薬品の「ジエノゲスト」として処方されることが多くなりました。

このディナゲストの通常の半量、0.5mg錠が令和2年5月28日から「月経困難症」を対象に処方が出来るようになり、また6月17日からジェネリック処方できるようになりました。先発品と同じ持田製薬から発売される、オーソライズド・ジェネリック(AG)です。


さて、子宮内膜症治療との違いですが、以下のようになります。

・子宮内膜症治療は、1mgの製剤を1日に2錠=1日2mg服用

・月経困難症治療は、半量の0.5mgの製剤を1日2錠=1日1mg服用

月経困難症の治療は、他にも

低用量ピル(LEP)

ミレーナ

や鎮痛剤、鎮痙剤、漢方薬があります。また運動療法などの代替医療もあります。

低用量ピルには「血栓症」が稀ではあるものの重篤な副作用として知られていますが、血栓症はエストロゲンによって起こされるため、エストロゲンを含まないジエノゲストには、血栓症の副作用がないと言えます。

低用量ピルには、血栓をはじめとして、喫煙者など服用出来ない「禁忌」がありますし、血栓症リスクが高まる40歳以上や肥満の方には慎重投与、と言って処方がしづらいのですが、ジエノゲストにはそのような心配がありません。

また、新型コロナウイルスに感染した場合にも血栓症のリスクが高まるため、重症の場合にはジエノゲストのようなエストロゲンを含まない製剤への変更が勧められています

最近では低用量ピルの内膜症治療効果の一方で、治療後の内膜症発症が問題視されてきており、黄体ホルモン製剤の処方が増えてきています。

ディナゲストは子宮内膜症治療で発売されてから15年、長期にわたって服用している方もいますが、安全性はとても高い薬です。

一方で服用中は排卵しにくくなるため、妊活中の方には適さない方法です。海外では黄体ホルモンはPOPと言って、避妊薬として使用されていますが、完全に排卵が抑制されるとは限らないため、日本では避妊薬として使うことはできません。妊娠を希望しない方はコンドームやIUD(子宮内避妊リング)などの避妊法を取ってください。

また、副作用は、不正出血が最もよくみられます。

月経痛(生理痛)の治療に、また一つ選択肢が誕生しました。

どの治療法が適しているか、皆さんの価値観やライフスタイル、妊娠の希望などを伺いながら一緒に考えていきましょう。

LEPやPOPを解説した動画を作成しました。

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:令和2年5月27日
一部更新:令和2年5月28日、6月29日、8月6日
一部更新:令和3年1月4日、2月1日、4月12日、9月9日
補筆修正:令和4年6月17日、7月28日、10月27日、12月22日
補筆修正:令和5年2月15日、8月26日
補筆修正:令和6年4月18日、5月20日、8月13日