毎月訪れる月経痛に悩まされている方、少なくありません。
毎回辛い思いをするけど、女性だから仕方ない、生理痛があるのが当たり前、とか、痛い日々が過ぎた後は痛みは無くなってしまうから。。
と、月経痛を軽く考えていませんか?
「生理痛は辛いから、と近隣の薬局で相談し、鎮痛剤を購入した」
辛いのを我慢するのは正しいことではありません。日常生活が送れるように、適切な対策を取っていると思います。とてもよいことです。
しかし、薬局で産婦人科の受診は勧められましたか?
当院の調査では、薬局で月経痛の相談をしたことのある方のうち、4.0%しか、婦人科受診を勧められていませんでした(2019)。
月経痛は、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気で起こることがあります。
もちろん、何の病気もないのに月経痛が見られることも少なくありません。
しかし、月経痛のある女性は、月経痛が無い女性と比べて、将来的に子宮内膜症が発症するリスクが2.6倍に増加します。
子宮内膜症は、ひどくなると月経困難症でも腰痛や排便痛を伴ったり、性交痛、慢性骨盤痛(月経と関係ない骨盤内の痛み)、また不妊の原因となったり、妊娠した後も妊娠中のトラブルが多いことが知られています。
さらに妊娠、出産を終えた後も、卵巣チョコレートのう胞の癌化や、血管障害による狭心症や脳梗塞が増えることが知られ、生涯にわたって影響を及ぼし続けます。
産婦人科診察では、主に超音波検査や内診、血液検査CA125などで子宮内膜症を診断し、必要な治療を提案します。
今後妊娠を希望する方には薬によるホルモン治療が優先されます。
例えば、低用量ピル(OC/LEP)の服薬で、子宮内膜症の発症リスクが、0.63倍に低下することも知られ、手術や長期間のホルモン治療によってチョコレートのう胞の癌化を防ぐともされています。
また最近ではピルの最大の副作用である血栓症のリスクがほとんどない黄体ホルモン製剤の処方も広がっていますし、さらに新しい低用量ピル「アリッサ」も発売が決まっています。
生理痛を感じる女性は一度は産婦人科診察を受けて頂きたいですが、特に以下の様な方は診察が強く勧められ、必要に応じて治療するレベルと言えます。
・月経の度に、毎回鎮痛剤を服用している。
・月経痛の程度がだんだん強くなっている。
・鎮痛剤が効かない、または効かなくなってきた。
・月経の期間は日常生活に支障を来している(仕事、家事ができない、寝たきりになる、など)。
・他に性交痛や慢性骨盤痛、排便痛がある。
産婦人科医は女性の皆さんの味方です。月経痛を緩和できる方法を一緒に考えましょう。
月経とも上手に付き合い、ストレスのない、素敵な毎日を過ごして下さい。
低用量ピルや黄体ホルモン製剤を解説した動画を紹介します。参考にしていただけたらと思います。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:平成31年2月28日
補筆修正:令和2年6月11日、8月24日
補筆修正:令和3年1月21日
補筆修正:令和3年3月3日、4月22日、9月24日
補筆修正:令和4年8月13日、9月23日、12月19日
補筆修正:令和6年8月10日、11月28日、新しい低用量ピル「アリッサ」について追記しました。