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低用量ピルは「毎月の出血」から「回数を減らす」へ 〜新しい3つの飲み方〜

2026年8月17日に「ドロエチフレックス®配合錠」が、9月1日には「マルシロン®」が発売され、低用量ピル(OC/LEP)の選択肢がまた一つ広がりました。

これを機に、月経困難症の診療でよくご相談いただく「月経(生理)の回数そのものを減らす」飲み方について、フレックス投与・連続投与・アクティブコントロールの3つに整理して、まとめて解説します。

「毎月の月経」は必須ではありません

「毎月きちんと月経が来ないと身体に悪い」「生理は身体に不要なものをデトックスしている」——これは、よくある誤解のひとつです。

矛盾するようですが、「月経が来なくても平気」「ない方が楽だから治療なんてしなくていい」と、月経がない状態をそのまま放置しておくのも良くありません。女性として毎月排卵し、月経が来る状態が「正常」であることに間違いはありませんが、月経への価値観は「毎月来なければならないもの」という考え方と、「来ないなら来ない方が楽」という考え方に分かれているように思えます。

そもそも低用量ピルを服用しているときの出血は、排卵を止めたうえで、ホルモンが減ることで起こる「消退出血」であり、厳密には月経ではありません。排卵を伴わない分、痛みも軽くなります。この仕組みを利用すれば、消退出血そのものの回数を減らすことも医学的に問題のない選択肢です。実際、近年処方が増えている黄体ホルモン製剤も、同じように月経がなくなるタイプの治療です。

月経回数を減らす、3つの飲み方

これまでの低用量ピルは「周期投与」が基本でした。これは、

21日間の実薬+7日間の休薬

または

24日間の実薬+4日間の休薬

で休薬期間中に、4週に1回の消退出血を起こすもので、1年では出血が13回くらいみられます。

これに対して、実薬を長く続けて服用し、消退出血そのものの回数を減らす飲み方が広がっており、今後主となることが予想されています。

この月経回数を減らす主な方法は、次の3つです。

フレックス投与(ヤーズフレックス®・ドロエチフレックス®)

ドロスピレノン3mg+エチニルエストラジオール0.02mgを含むLEPで、最長120日間連続して服用できます。

服用開始後24日間は出血の有無にかかわらず服用を継続。25日目以降に3日連続の出血があれば4日間休薬します。出血がなくても120日間服用した時点で4日間休薬します。

8月17日発売の「ドロエチフレックス®配合錠」は、先発品「ヤーズフレックス®配合錠」と有効成分・添加剤・製造方法が同一のオーソライズド・ジェネリック(AG)です。28日分の薬剤費(3割負担)は、ヤーズフレックス®が約2,250円であるのに対し、ドロエチフレックス®は約830円と、治療内容を変えずに費用を抑えられる点が特徴です(ドロエチフレックス®の詳細はこちら)。

連続投与(ジェミーナ®)

レボノルゲストレル0.09mg+エチニルエストラジオール0.02mgを含むLEPです。21日間服用+7日間休薬の周期投与にも使えますが、77日間連続で服用することもできます。

フレックス投与と異なり、途中で不正出血があっても休薬せず77日間服用を続け、その後7日間休薬します(84日を1周期として繰り返します)。

服用期間が長くなるほど不正出血は増える傾向がありますが、それでも28日ごとに出血が起こるより、77日、あるいはそれ以上出血がない方が楽、痛みを感じる回数そのものを減らせる、休薬期間中の体調不良を減らせる、というメリットを重視する方に選ばれています(連続投与についてはこちら)。

アクティブコントロール(マルシロン®)

9月1日発売の新しい低用量ピルです。デソゲストレル+エチニルエストラジオール20μgを含む第3世代の1相性ピルで、マーベロン(エチニルエストラジオール30μg)よりもエストロゲン量が少ない「超低用量ピル」に分類されます。

24〜80日間の範囲で自分の決めたタイミングまで連続服用し、その後4日間休薬。以後、連続投与と休薬を繰り返します。

フレックス投与・連続投与との一番の違いは、休薬に入るタイミングを自分で選べることです。休薬してから2〜3日で消退出血が起こるため、旅行や試験などの予定に合わせて出血の時期をある程度コントロールできます。かつては「Stop & Go」とも呼ばれていた方法で、これが「アクティブコントロール」です。デソゲストレルには男性ホルモンの作用を抑える働きもあり、ニキビや肌荒れの改善が期待できる点も選ばれる理由のひとつです(マルシロン®の詳細はこちら)。マルシロンの薬価は1錠276.90円、28錠分(3割負担)で約2,330円です。

3つの方法をくらべると

それぞれ「連続して服用し、消退出血の回数を減らす」という考え方は共通していますが、休薬に入るタイミングの決まり方が異なります。

 ① フレックス投与② 連続投与③ アクティブコントロール
代表的な薬剤ドロエチフレックス®ジェミーナ®マルシロン®
連続服用の期間

24日~最長120日間

77日間(固定)24〜80日間
休薬期間4日間7日間4日間
休薬に入るタイミング25日目以降、3日連続の出血があれば休薬。なければ120日で休薬出血の有無に関わらず77日間継続後、固定で休薬24〜80日の間で自分の決めたタイミングで休薬
出血日のコントロールできないできない(77日ごとに固定)旅行や試験などに合わせて自分で選べる

どんな方に向いている?

特に、次のような方ではメリットが期待できます。

  • 月経痛が強い、月経のたびに痛みがつらい
  • 月経回数そのものを減らしたい
  • 周期投与の低用量ピルを服用していても、出血時に痛みが残る
  • 休薬期間中の体調不良(頭痛・気分の落ち込みなど)がつらい
  • 卵巣チョコレート嚢胞など子宮内膜症がある

*ココから

子宮内膜症をお持ちの方には、フレックス投与・連続投与は特におすすめしたい方法です。複数の研究で、チョコレート嚢胞に対しては周期投与よりもフレックス投与・連続投与の方が早く小さくする効果があるとされております(Seracchioli R et al. 2010)。チョコレート嚢胞の再発についても連続投与の方が小さく抑えられる傾向が報告されています。欧州の学会ガイドライン(ESHRE)でも、月経困難症を伴う子宮内膜症に対する選択肢のひとつとして低用量ピルの連続投与が挙げられています。

国内のヤーズフレックス®・ジェミーナ®の連続投与でも縮小効果が報告されており、当院でも周期投与より縮小するスピードが速い印象があります。アクティブコントロール(マルシロン®)についても、連続して服用することで排卵・月経を抑える考え方は共通していますが、子宮内膜症に対する効果は今のところフレックス投与・連続投与ほど報告が蓄積していないため、その点も踏まえてご相談ください。

*ココまで

反対に、「毎月決まった時期に出血がある方が安心」という方には、従来通りの周期投与の方が向いていることもあります。

服用にあたっての注意点

いずれの方法も、服用開始からしばらくは不正出血(少量の出血や茶色いおりもの)が起こることがあります。連続して服用する期間が長くなるほど不正出血がみられる可能性が高くなります。長引く場合や出血量が多い場合は、別の飲み方や薬剤への変更を検討しますので、お気軽にご相談ください。

また、エストロゲンを含むピル共通の注意点として、頻度は非常に低いものの血栓症のリスクがあります。突然の激しい腹痛・胸の痛みや息苦しさ・これまでにない激しい頭痛・視覚異常・片脚の痛みや腫れなどがあれば、服用を中止しすぐに医療機関を受診してください。血栓症のリスクが気になる方では、LEPではなくジエノゲストなどの黄体ホルモン製剤を選ぶこともあります。

症状・年齢・既往歴・血栓症などのリスク・出血への希望をふまえて、ご自分に合った治療を選ぶことが大切です。服用前・服用中には、血圧測定や血液検査などの確認も行っています。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 3つの方法の一番の違いは何ですか?

A. どれも「連続して服用し、消退出血の回数を減らす」点は共通していますが、休薬に入るタイミングの決まり方が異なります。フレックス投与は不正出血の出方によって自動的に、連続投与は77日ごとに固定で、アクティブコントロールは24〜80日の間で自分の決めたタイミングで休薬に入ります。旅行や試験などに合わせて出血の時期を調整したい方には、アクティブコントロールが向いています。

Q. 不正出血が心配です。よくあることですか?

A. はい、いずれの方法でも服用開始後2〜3か月程度は不正出血や茶色いおりものがみられることがあります。連続して服用する期間が長いほど起こりやすい傾向がありますが、多くは数周期で自然に改善します。改善しない場合や出血量が多い場合は、飲み方や薬剤の変更を検討しますので、診察時にご相談ください。

Q. これらの薬は避妊にも使えますか?

A. ヤーズフレックス®・ドロエチフレックス®・ジェミーナ®・マルシロン®は、いずれも月経困難症の治療を目的としたLEPで、保険診療で処方します。排卵を抑える働きがあるため結果的に避妊効果も期待できますが、保険適用の対象はあくまで月経困難症の治療です。避妊を主な目的とする場合は、自費診療のOC(経口避妊薬)としての処方が基本になりますので、目的に応じて診察時にご相談ください。

Q. 子宮内膜症がなくても、月経回数を減らす目的だけで使えますか?

A. はい。月経困難症(月経に伴う痛みや体調不良)が保険診療の対象ですので、子宮内膜症の診断がついていない方でも、月経痛がつらい、月経回数を減らしたいといったご希望があれば選択肢になります。

Q. どの方法が自分に合うかは、どう決めればいいですか?

A. 出血の時期を自分でコントロールしたいか、多少不正出血があっても回数を最大限減らしたいか、薬剤費を抑えたいかなど、重視するポイントによって向き・不向きがあります。現在ヤーズフレックス®などを服用中で費用を抑えたい方は、AGであるドロエチフレックス®への変更も選択肢です。診察の際に、症状やライフスタイル、ご希望を伺いながら一緒に決めていきましょう。

文責 櫻井明弘(院長、日本専門医機構認定産婦人科専門医)

産婦人科クリニックさくら
たまプラーザ駅 徒歩3分

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生理・からだの悩みは、お気軽に婦人科へ

低用量ピルや黄体ホルモン製剤による生理痛対策や避妊ケア、子宮内膜症・子宮筋腫などの早期発見と治療、子宮がん・乳がん検診まで、女性のからだをトータルにサポートします。

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診療時間:午前10:00〜18:30(月・水・金)/10:00〜17:30(火・木)/午前10:00〜13:00(土・日)
土日午後・日祝休診 / 女性医師が月〜土曜日の診察に入っています

初出:令和8年8月21日

毎月、月経がないと身体に悪い?

「毎月きちんと月経が来ないと身体に悪い」

「生理は身体に不要なものをデトックスしてるから」

これ、よくある誤解の一つです。

矛盾するようですが、「月経来なくてもへっちゃら」「ない方が楽」「昔から不順だから」と、生理がない状態を放置しておくのはいけません。

確かに女性として、毎月排卵をし、月経が来る状態が「正常」であることに間違いはありませんが、月経への価値観は、「毎月来なければならないもの」と「来なきゃ来ない方が楽だから治療なんかする必要がない」という意見に二分されます。

最近処方が増えている黄体ホルモン製剤も同じように月経がなくなるので、不思議に思われる方が多いです。

生理痛に低用量ピル

最近では高校生でも「生理痛にピルが効く」「ピルは避妊のためだけじゃない」との理解が広がっています。

むしろ指導者側にピル=避妊、という固定観念が払拭されていないので、改善していかなければなりません。

正しい婦人科の知識を得て、自分自身のQOL向上のためにピルを服用したい、とても良いことです。

もともとピルの避妊効果は「排卵をさせない」ことと「子宮内膜を薄くする」ことによります。

排卵をしなくても、ピルを飲み終えれば血液中のホルモンが減り、子宮から出血が起こります。あたかも生理のようですが、厳密には排卵をしていないので、月経ではなく消退出血とよばれるものです。

月経痛は排卵後に強く、排卵をさせずに起こる出血の痛みは軽い。また子宮内膜を厚くさせないから出血量が少なく痛みが軽い。

またピルに含まれる黄体ホルモンが、痛みを起こす物質の産生を減らします。

この特徴を利用したのが、ピル、特に現代では副作用をなるべく減らそうと、含まれるホルモン量を減らした「低用量」ピルが用いられるのです。

低用量ピルでも痛い、ときは?

せっかくピルを始めたのに、出血のとき痛いんですけど、という声もあります。

もちろんピルの出血の際に、痛みがあれば鎮痛剤を併用しても構いませんが、海外で使われている一部のピルとロキソニンなどの鎮痛剤(NSAIDs)の併用で、やや静脈血栓症が増えるという報告があり、全体としては稀ではあります(BMJ Group, 2023)が、ピルで鎮痛剤を服用しないで済むに越したことはありません。

つまりピルを飲んでも鎮痛剤を服用しなければならない時には、異なるピルを試してみましょう。

また、フレックス投与・連続投与を検討しても良いと思います。

フレックス投与と連続投与

これまでの低用量ピルは、4週に1回の出血を起こす、「周期投与」でした。これには21日の実薬と7日の休薬するものと、24日の実薬と4日の休薬の「ヤーズⓇ」がありました。

「フレックス投与」は、このヤーズを最長120日間、連続して服用します。成分は全く同じですが、「ヤーズフレックスⓇ」という薬剤名に変わります。フレックス投与は途中3日間不正出血が見られたら、4日間休薬します。

「連続投与」は、「ジェミーナⓇ」というピルで、ジェミーナは21日の実薬と7日の休薬の周期投与にも使えますが、77日間の連続服用もできます。ジェミーナはヤーズフレックスと異なり、途中不正出血があっても休薬せず、77日間服用を続けます。

ピルのマイナートラブルの中で、内服中の不正出血は比較的多いものですが、フレックス・連続のように服用期間が長くなるほど不正出血が見られることが多くなります。

それでも、28日毎の出血を起こすよりも、77日、あるいはそれ以上の期間、出血が起こらない方が楽、痛みを感じる回数が減らせる、痛みそのものが軽くなる、休薬期間中の体調不良を減らせる、というメリットを重視するならフレックス・連続投与がお勧めできます。

またピルで稀にみられる血栓症のリスクがほとんどなく、少量の不正出血をのぞいて定期的な月経・消退出血をなくしてしまう黄体ホルモン製剤も最近では選択する患者さんがとても増えています。

子宮内膜症の治療効果を高めたい

もう一つ、フレックス・連続投与をお勧めしたいのが、卵巣チョコレート嚢胞など子宮内膜症をお持ちの方です。

すでに複数の報告で、チョコレート嚢胞に対して周期投与よりもフレックス・連続投与の方が早く小さくさせる効果が報告されています。特に欧州などは、子宮内膜症の治療目的に、連続投与が行われています。

OC/LEPによるチョコレート嚢胞の治療効果は比較的マイルドですが、少しでも早く良くするために、周期投与よりもフレックス・連続投与を検討しても良いと思います。

国内のヤーズフレックス、ジェミーナ連続投与も卵巣チョコレート嚢胞の縮小効果が報告されており、当院でも周期投与より縮小するスピードが速い印象があります。

低用量ピルや黄体ホルモン製剤について解説した動画を作成しました。

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:令和2年5月20日
補筆修正:令和2年7月13日、8月16日、10月6日
補筆修正:令和3年4月23日、7月14日、9月5日、27日
補筆修正:令和5年8月24日
補筆修正: 令和6年1月3日、3月26日
補筆修正:令和7年6月19日、7月14日
補筆修正:令和8年3月3日