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「最後までいけないんです。」〜性交障害・射精障害は決して珍しいことではありません~

ある日の外来診療で、患者さん(ご主人)から、「射精障害」を相談されました。膣内 腟内

30代半ばのその男性は、

「妊娠に良いと思って、数年前に禁煙したんです。それと、同じように妊娠には悪いと聞き、お酒も毎日飲んでいたのを止めて、飲み会とかお祝いの時だけにしてました。」

と語り始めました。

精液検査は全く問題が無いことを説明した時に、何気なく生活習慣について聞いていた際のことです。

「でも先生、僕、持続しにくいんです。」

射精障害ということ?

「え?」

あ、ごめんなさい、それは、最後までいけない、つまり射精出来ないということですか?

「そうなんです、『中折れ』しちゃうんです。先月のタイミングでも、射精できなかったんです。」

中折れ、つまり、性交渉の途中でダメになってしまうようなことですね?
ご主人のような射精障害が原因で赤ちゃんに恵まれないカップルは決して珍しくはありませんよ?
多い日には1日に数組の同じような相談に乗ることもありますし。

「先生、この話、初めて他人にしました。。」

 

この記事では「性交障害」や「射精障害」について解説し、解決方法を提案します。


さて、時に女性の性交障害を相談されることがあります。女性の場合、多くは性交痛や恐怖心。

痛みの原因として、出産時の腟の傷が痛んだり、腟がもともと狭い、とか、力が入ってしまって、ということが多いです。

また、恐怖心は、これまでの性交経験であまり良くない記憶があり、性交渉を苦手、と思ってしまっていることがあるようです。

しかし、実際には性交障害や射精障害の多くは、男性側の相談です。

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女性から、ご主人の「性交障害」の相談もありますが、皆さん深刻に悩んでらっしゃいます。

射精できなければ妊娠できないし、自分に女性としての魅力が無いのか、と思って、診察室で泣き崩れる方もいらっしゃいます。

性交障害は広い意味では勃起不全を含みます。
勃起不全は男性が勃起しない状態で、「ED」と呼ばれています。
EDの中には、加齢や生活習慣に起因する一般的なものと、交通事故などによる神経損傷が原因になるものがあり、神経損傷の治療はとても困難です。

性交障害は、狭い意味ではマスターベーションはできるものの性交渉では勃起不全となる状態です。勃起して性交渉はできるても、射精までできない状態、射精障害があります。

外来ではこの射精障害をよく相談されます。射精に至らないため妊娠ができず、また原因も同様のため、ここでは男性の「性交障害」として解説します。

これらの状態も加齢とともに増える、と考えられますが、最近では30歳代はおろか、20歳代でも同様の相談をされることが少なくありません。

多くは心因性のもので、疲れやストレス、そしてプレッシャーも大きな理由だと思われます。
他にはアルコールや喫煙、また不適切なマスターベーション習慣も、性交できなくなる理由です。

特に一般生殖医療であるタイミング法では、排卵日を予想したり、排卵日を調整して性交渉をご指導します。「今日です」「明日です」と確かに我々は妊娠にベストと思われる日を説明していますが、排卵日はお二人の都合や気持ちに関係なく訪れます。

つまり排卵日は週末だとか、平日、お二人の忙しい日を問わずやって来て、この性交渉を逃したら次のチャンスは来月になる、この性交渉は赤ちゃんを授かるために必須である、と言うように、女性のみならず、男性にとっても大きなプレッシャーとなります。

産婦人科クリニック さくらでは、なるべくご主人のご意見も取り入れ、治療法を提示しています。

ED治療は「勃起不全」に対して行われますが、性交障害を原因とする不妊症に、令和4年4月から、保険適用となりました

また、不妊治療の一つである人工授精(AIH)はご主人がマスターベーションで採った精液を調整し、良好な運動精子を選別して排卵期に合わせて子宮の中に入れる方法で、性交障害が最も適しています

これらの治療とは別に、治療や妊活を一時的にお休みするのもひとつの選択肢です。
普段排卵と関係ないときには性交渉は出来る、でも排卵日にあわせて性交を持つのは、プレッシャーでうまくいかない。精神的ストレスとなる可能性があるため、少しの間、通院をお休みすることもあります。

女性が通院治療に疲れてしまったときにも、同様にお休みを提示することがありますが、男性も少し休憩しながら、自然なスタイルでご夫婦の時間を持つのも決して間違っているものではありません。

最後に、神経損傷によるED治療は、特殊な治療法を行わなければなりません。
泌尿器科での治療や、精巣から直接生検するTESEといった治療法が必要となることがありますので、専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

平成29年11月より「シアリス錠」を、令和3年4月6日より「タダラフィル10mg錠CI」に採用変更してきましたが、上述したように保険適応となり、泌尿器科での処方とされたため、近隣の医療機関を紹介しています。

また、性交障害・射精障害でも、「不適切なマスターベーション」による場合、TENGAヘルスケアの「MEN'S TRAINING CUP(メンズトレーニングカップ)」のご利用もお勧めしています。

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:平成29年11月2日
補筆修正:平成30年1月19日
補筆修正:令和2年1月19日、29日、2月13日、7月27日、10月10日
補筆修正:令和3年2月9日、12日、22日、4月6日
補筆修正:令和4年4月5日
補筆修正:令和5年2月18日