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子宮筋腫と子宮内膜症の治療薬「レルミナ」錠

令和3年12月24日から、経口GnRHアンタゴニスト「レルゴリクス(レルミナ)」が「子宮内膜症に基づく疼痛」の適応を取得しました。

GnRHアンタゴニストとは、体外受精などの生殖補助医療(高度生殖医療)で、LHサージやFSHの分泌を抑制し、採卵前の排卵を抑える「ガニレスト®」や「セトロタイド®」という注射剤を使うことがありますが、レルミナ®は、経口で毎日服用する子宮筋腫と子宮内膜症の治療薬です。

このレルゴリクスですが、当院でも子宮筋腫や子宮内膜症の患者さんに臨床治験を行った経緯があり、臨床で使えるのは、とても感慨深いものがあります。

レルミナが発売されるまで子宮筋腫や子宮内膜症の治療薬として用いられて来たのは、GnRHアゴニストで、注射や点鼻薬で用いられている「リュープロレリン(リュープリン®︎)」などがあり、偽閉経療法と呼ばれています。この「アンタゴニスト」も偽閉経療法ですが、これらのGnRH「アゴニスト」と、は少し異なる薬剤です。

大きな違いは、GnRHアゴニストは、投与直後、Flare Upと呼ばれる、下垂体からのLH、FSHを放出させる現象があります。このため、投与後すぐに、エストロゲンが高まり、不正出血を起こします。その理由で、初回投与は月経中から行います。しかし、このFlare Upを良い作用として利用するのが、排卵惹起です。排卵のコントロールとも表現していますが、Flare UpによりLHサージを来たし、排卵を起こすことができるからです。

やがてFlare Upがおさまると、今度はDown Regulationとよばれる状態になり、低エストロゲン、すなわち偽閉経の状態で、子宮筋腫や子宮内膜症に治療効果をもたらします。

一方でアンタゴニストは、Flare Upがなく、すみやかにDown Regulationの状態をつくることができるため、子宮筋腫の中でも粘膜下筋腫や子宮腺筋症でも使いやすいと思われます(令和2年9月、レルミナ錠の添付文書が改定され、粘膜下筋腫が慎重投与とされました。詳しくは上記のリンク先をご覧下さい)。

また、注射剤と異なり、内服を中止すればすぐに卵巣機能が回復してくるため、副作用などで治療が継続できなくなってしまった場合など、元に戻るのが早いです。

副作用は「卵巣欠落症状」とも呼ばれ、更年期障害様の症状がみられる可能性があります。印象としては、リュープロレリンが様々な更年期障害様の症状がみられるのに比べて、レルミナはホットフラッシュと呼ばれる、ほてりが主のようです。

保険適用された患者さんの負担額は、月に8,000円くらいです。

また骨密度低下のリスクがあるため、6ヶ月を超える投与では、定期的な骨密度の検査を行わなければなりません。

当初保険承認されたのは、子宮筋腫のみで、卵巣チョコレート嚢胞などの子宮内膜症や子宮腺筋症では保険処方が出来ませんでしたが、作用は同じなので、将来的に適応が拡大することも期待されていました。

また現在多くの薬剤は海外からの輸入品ですが、このレルゴリクスは国内開発で、世界初の日本製の薬剤です。

*レルミナは、自費診療で行っていた体外受精などの高度生殖医療ではよく使われていましたが、令和4年4月の生殖補助医療の保険適用では、残念ながら適用外、とされてしまいました。ガニレストやセトロタイドは保険適用となったので、保険で行っている患者さんは通院、または自己注射で連日注射をしなければなりません。さらにガニレストの供給量が追いつかなくなり、当院への供給も滞っており、治療法の変更を余儀なくされています。このように拙速な保険適用により、患者さんの治療に支障があったり、成績の低下が見られることがあり、安かろう悪かろうとならないよう志を同じくする先生方と日々ディスカッションしながら工夫をおこなっています。レルミナが保険適用される予定は早くても令和6年度、とのことです。

*レルミナを避妊目的に服用して良いか、質問されることがありますが、排卵を抑制するわけですから理論上妊娠することはほとんどないと言えます。しかし、偽閉経療法中の妊娠報告は皆無ではなく、また避妊目的の適応はありませんので、妊娠を希望しない場合は、他の方法できちんと避妊をしてください。

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

(初出:平成31年1月17日)
(補筆修正:平成31年2月21、26日)
(補筆修正:令和元年9月18日)
(補筆修正:令和2年1月23日、2月13日、3月2日、10日、4月6日、6月11日、15日、7月28日、9月16日、10月2日、6日)
(補筆修正:令和3年2月18日、22日、5月31日、9月4日、11月1日、12月24日、31日)
(補筆修正:令和4年2月3日、27日、5月3日、7月30日、11月4日、12月30日)
(補筆修正:令和5年4月7日、5月15日)