横浜市青葉区東急田園都市線たまプラーザ駅 / 不妊治療や妊娠出産のエキスパート

高度生殖医療

高度生殖医療のご案内

高度生殖医療とは

タイミング法や人工授精などの一般不妊治療に対し、体外受精を中心とした高度な生殖医療技術を用いた治療で、生殖補助医療、特定不妊治療などともよばれています。

高度生殖医療は主に、

・卵巣刺激(排卵誘発)

・採卵

・体外受精または顕微授精

・新鮮胚移植または胚凍結(受精卵凍結)とERA検査

・融解胚移植

の治療から成り立ちます。

見過ごしていませんか?

高度生殖医療を行う方たちは、

  • 卵管閉塞、卵管周囲癒着などの卵管性不妊(Pick Up障害)
  • 原因不明不妊(タイミング法などの一般生殖医療(=不妊治療)を行っても妊娠に至らない)
  • 男性側に不妊因子がある
  • 卵巣年齢が高い(AMHが低い)
  • 重度排卵障害
  • 子宮筋腫の手術後避妊期間、子宮内膜症の手術前
  • 年齢による不妊
  • 免疫性不妊

などで、現段階で高度生殖医療以外に妊娠に至る方法がなく、本方法が最も適切であると考えられるご夫婦にこの治療方法が適応されます。

治療の流れ

当院で高度生殖医療を受ける方は高度生殖医療説明会を受けていただいております。

説明会に参加できない場合は、「さくら相談室」で説明いたしますので、ご利用ください。
 
高度生殖医療は、以下の3つの周期に分けて治療が行われます。


①プレトリートメント周期(Long法の場合)

②採卵周期
卵巣刺激(排卵誘発)、採卵、新鮮胚移植または胚凍結、ERA検査

③融解胚移植周期

①プレトリートメント

Long法による卵巣刺激を行う場合には、採卵の前周期の、卵胞発育を抑制し、採卵周期に最も効果的に良好な卵子を採取する目的で行います。

プレトリートメントの途中から、GnRHアナログの点鼻薬(ナファレリール)を開始します。採卵が決定し、HCG製剤の投与をするまで、継続してお使いいただきます。

*Long法以外では、プレトリートメントの必要はありません。

プレトリートメント周期は、

以下のいずれかの周期で行います。

・OC(低用量ピル)

・カウフマン療法(2回のホルモン注射)

・自然周期

Pretreatment

OC

ファボワール(1相性低用量ピル)

月経が開始したら、5日目までに内服を開始します。
(5日目以降に服用を開始できることもありますので、6日目以降はお問い合わせください)

ファボワールの3週目からナファレリールを開始します。

Pretreatment、ファボワール

 

ナファレリール点鼻薬

点鼻薬(GnRHアゴニスト、ナファレリール®︎)

カウフマン療法

月経3〜10日目にペラニンデポーを注射し、その10日後にルテスデポーを注射します。

ルテスデポーの注射とともに、ナファレリールを開始します。

自然周期

自然排卵の1週間後から、ナファレリールを開始します。

排卵日を確定するため、卵胞計測にいらしていただきます。


また、採卵、胚移植の準備として、

採卵前検査

女性のみ:血液一般・血液型・凝固、肝・腎機能検査、糖尿病検査、AMH

ご夫婦で:感染症(梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV)

男性のみ:精液検査(当院で精液検査や人工授精を行っていない場合)

ETカテーテル検査

出血が止まったら、胚移植で使用するカテーテルがスムーズに入るか検査します。

採卵前検査の結果をお伝えするタイミングで行うことがほとんどです。

流産の原因となる細菌の検査を同時に行うことがあります。

②採卵周期

D3診察

AFC

月経開始3日目ころに来院し、超音波検査を行います。

Long法と下垂体脱感作法を除き、ホルモン採血も行います。

これらの検査により、この周期が採卵に適していると判断された場合、卵巣刺激を開始します。

適していない場合にはカウフマン療法などを行います。

卵巣刺激法

卵巣刺激法は、年齢とAMHの値から決定しています。

  • Long法
  • 下垂体脱感作法
  • クロミフェン(クロミッド)周期
  • レトロゾール周期

などがあります。その方の通院スタイルや自己注射ができるか、など価値観に合わせた卵巣刺激法を開始します。詳しくは、下方の「高度生殖医療2018治療成績」の中で解説しています。

  • Long法

プレトリートメント後に始まる出血の3日目を目安に来院し、超音波検査を行います。

胞状卵胞(AFC)を計測し、卵巣刺激の効果を予測、また卵巣に異常がないことを確認した上で卵巣刺激が開始されます。

通院で注射を行う方は、注射は開始から2日間は、FSH(ゴナールエフ®︎)を300単位、翌日からhMGを150単位、連日投与します。

自己注射を行う方は、注射は開始から2日間は、FSH(ゴナールエフペン®︎)を300単位、翌日からFSHを150単位、連日投与します。
自己注射の使用法を案内したサイトはこちらです。

多嚢胞性卵巣(PCOS)の方は、卵巣過剰刺激症候群のリスクがあるため、上記の注射を、半量ずつ投与します。

ゴナールエフ皮下注ペン900

  • 下垂体脱感作法

プレトリートメントは不要です。

月経が開始したら、3日目を目安に来院し、超音波検査を行います。

卵巣に異常がないことを確認した上で、GnRHアンタゴニスト(レルミナ®︎)を9日間服用します。

服用後、再度超音波検査で胞状卵胞(AFC)を計測し、卵巣刺激の効果を予測、当日からhMGを150単位、連日投与します。

自己注射を行う方は、hMGの代わりにFSH(ゴナールエフペン®︎)を150単位ずつ、連日投与します。

  • クロミフェン(クロミッド)周期
  • レトロゾール周期

プレトリートメントは不要です。

月経が開始したら、3日目(クロミッドは5日目まで)を目安に来院し、超音波検査を行います。

胞状卵胞(AFC)を計測し、卵巣に異常がないことを確認した上で、採血を行います。

院内で迅速検査を行い、FSHが7.0未満であることを確認してから内服を開始します。

採卵日の決定

D3診察後は採卵日が決定するまでの間、超音波検査を行います。

注射剤を用いた場合は4,5日毎に超音波検査を行い、クロミフェンやレトロゾールなどの内服薬では排卵のころに受診していただきます。
卵胞が18㎜くらいに発育したら、ホルモン採血を行い卵胞の成熟を確認します。卵胞が成熟していると判断されたら、ナファレリール点鼻薬または注射剤(hCGまたはオビドレル)で排卵のコントロール(トリガー)を行います(Long法では必ず注射剤を使用します)。

採卵前卵胞

成熟した卵胞が出来た状態[/caption]

・点鼻薬(ナファレリール)は、
採卵の2日前、20、21時に左右どちらかの鼻に1回ずつ使用します。
採卵の前日、朝8、9時に左右どちらかの鼻に1回ずつ使用します。

・注射剤(hCG)は、
採卵の2日前、17〜18時に注射します。時間はあらかじめ相談して決めておきます。
hCGはオビドレル®︎という自己投与可能な製剤もあり、来院する手間が省けます。ご希望される方にはご指導いたします。

診察の結果から卵巣刺激の効果が発揮されない、卵胞の状態が良くない場合、重症な卵巣過剰刺激症候群の発症が予測される場合は卵巣刺激・採卵の中止を提案する場合もあります。

他に採卵の2日前、1日前の夕食後、モービック®︎と言う鎮痛剤を、排卵抑制のために服用します。

採卵・採精

採卵は、鎮痛剤と局所麻酔を使用し、経腟超音波下に卵胞を直接穿刺して卵子を採取します。

当日は朝食後に、抗生物質ビブラマイシン®︎2錠と吐き気を抑えるプリンペラン®︎1錠を服用して下さい。

また採卵に来院する時間(8:50〜9:10の間で決まります)の30分前に、ボルタレン座薬®︎1錠を使用して下さい

採卵当日はご主人の精液を持参していただきます。来院時間の2時間前以降に採取して下さい。
ご主人の都合が付かない場合は、あらかじめ精子を凍結保存しておきます。

採卵後の昼食の後にも、抗生物質ビブラマイシン®︎2錠と吐き気を抑えるプリンペラン®︎1錠を服用して下さい。

体外受精・顕微授精

採卵当日に行います。

・体外受精(IVF)
卵子と精子を同じ培養液の中に置いて精子自身の能力で受精をさせる方法です。

・顕微授精(ICSI)
とても細いガラス針で精子を1個、直接卵子に注入して授精させる方法です。
初回の採卵などでは、卵子の数や精液の所見により、体外受精と顕微授精を半分ずつ行うこともあります。

受精の確認と胚培養・胚凍結

採卵・受精の翌日に、正常に受精しているかを確認します。

正常に受精していれば引き続き培養を行い、当院の基準に従って胚を凍結します。
胚凍結には、感染防止のため、Rapid-iを用いています。

このころに行う子宮内膜着床能(ERA)検査についてはこちらをご覧下さい

また胚凍結の後、結果の説明と採卵後の診察に来院して頂きます。

新鮮胚移植

子宮内膜やホルモン値の条件が良い場合、凍結せずに移植する新鮮胚移植も提案します。胚移植前から黄体ホルモン腟錠を使います。

③融解胚移植周期

産婦人科クリニックさくらでは、胚移植は原則単一胚移植を行っています。
2つ以上の胚を移植することは、多胎妊娠のリスクがあるためです。

融解胚移植は、以下の2つの周期で行います。

  • 自然周期
  • ホルモン補充療法周期
胚移植日決定
  • 自然周期では、子宮内膜の厚さと排卵日から胚移植日が決まります。
    分割期に凍結した受精卵は、排卵日から2日後に融解して胚移植します。
    胚盤胞で凍結した受精卵は、排卵日から5〜6日後に融解して胚移植します。
  • ホルモン補充療法周期では、子宮内膜の厚さと患者さんの都合から胚移植日を決めます。
    ホルモン補充周期にお渡ししているスケジュール表は以下のものです。

ホルモン補充周期

胚移植当日

着床しやすくするため移植する培養液には、エンブリオグルーを用います。
胚盤胞移植は基本的にアシステッドハッチング(透明帯に切れ目を入れる)を行います。

現在の胚移植施行時間はこちらをご覧ください

妊娠判定日

排卵日から2週間後に来院していただき、採血し、HCG(妊娠性ホルモン)を測定して判定を行います。
妊娠判定陽性の方はこちら

高度生殖医療2018年治療成績

毎年更新している高度生殖医療の治療成績をアップデートしました。
最後に2018年から引き続き行っている最新の治療戦略についてもまとめていますので、どうぞご覧下さい。

採卵と胚移植数

2018年高度生殖医療治療成績

2018年の採卵と胚移植を行った患者さんと周期数です。採卵周期数を除いて、採卵患者さん、胚移植患者さん、胚移植周期数は過去最高でした。

患者さんの平均年齢は36.6歳で、ほとんど変わっていなかったのですが、2017年から、少しずつですが低年齢化しています。

一方で卵巣予備能を表すAMH(抗ミュラー管ホルモン)も、2017年から続けて前年を下回り、年齢が若くなればAMHが高くなる、のに反しています。

これは、若いうちに、また生殖医療(不妊治療)を始めて早いうちにAMHを測定し、思ったよりも低い値であるため早期に高度生殖医療を受ける決断をする方が増えているものと考察しています。

平均回収卵数は4.0±3.5個で、統計学的にばらつきがあることから、少ない方から多い方まで様々であることがわかります。

受精方法は、体外受精、顕微授精、ほとんど同じ数です。
卵子採れず、とは、採卵しても卵子が取れなかったり、未熟卵、変性卵のみで、正常な成熟卵が得られなかったり、排卵してしまっている場合で、7.0%ありました。採卵前に内服して頂いている鎮痛剤やDHEAによって、毎年その割合は減っています。

胚移植では妊娠反応が見られる、いわゆる妊娠率は49.8%でした。
臨床妊娠率は赤ちゃんが入っている袋(胎嚢)が見られた31.2%で、妊娠率との差、18.6%は妊娠反応が出ただけで流産になってしまう、いわゆる化学流産です。
赤ちゃんの心拍が見られたのは29.4%で臨床妊娠率との差、1.8%は枯死卵という流産で、出産率は27.6%で、心拍確認後に1.8%が稽留流産となってしまいました。

特記したいのは、継続妊娠(出産率)で、高度生殖医療を始めてから毎年上昇してきたものの、2017年は、わずかながら下がってしまいましたが、2018年はV字回復し、過去最高の成績となりました。

採卵周期エントリー数

採卵周期2018

採卵は、月経が開始してから卵巣刺激を開始したり、自然排卵を待機して行われます。
しかし、採卵の周期を開始したものの採卵をキャンセルした周期が16%あったことがわかります。

その内訳で最も多かったのは、卵胞が発育しなかったり、発育したもののE2(エストラジオール)が上昇しない、つまり良い卵子が育たない「(卵胞)発育不全」で、次いで排卵させるホルモン、LHが予想より早くはじまってしまった「LHサージ」が続き、「その他」には、採卵が出来ない場所に卵巣が位置していたり、カップルが希望しているよりも少ない卵胞しか発育しなかったためキャンセルすることが多かったです。

採卵時年齢分布

採卵時年齢分布2018

採卵の際の患者さんの年齢分布です。30代後半の方が4割、続いて3割が30代前半で、41歳以降が20%、残りが30歳までの20歳代の方達で、例年とほとんど変わりはありませんが、41歳以降の方の割合が少し増え、30歳代後半の方が少し減りました。

それではそれぞれの年代で、どれくらいの妊娠が望めるのでしょうか。

年代別妊娠率

胚移植あたり年代別妊娠率2018

2018年、胚移植あたりの年代別妊娠率です。

色がついているのが妊娠で、灰色が妊娠しなかった胚移植の周期です。
色分けは、赤が化学流産、緑が枯死卵、紫が稽留流産、そして青が出産されたことを表します。

一般的に妊娠率はこの色がついた部分を指し、臨床妊娠率は胎嚢以降、つまり紫、緑、青を指すことが多いです。
当院のデータでは、原則この色分けをしています。

注目して頂きたいのは、青色の「出産率」で、全年代で前年を上回りました。特に36歳以降は2年連続で増え続け、41歳以降は初めて10%を上回りました。

続いて2008〜2018年、11年間のデータです。

胚移植あたり年代別妊娠率〜2018

これも青色の出産率を見ると、20代では39%、30代前半では約30%、30代後半では22.6%、41歳以降でも5.3%となり、2018年に全年代で出産率が上昇したため、11年間のデータも、出産率は過去最高となりました。

年齢が高くなる毎に、妊娠率の低下と流産率の上昇、つまり出産率が低下します。特に41歳以降では妊娠した胚の、実に70%が流産となってしまいます。

卵巣の予備能をはかる、抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、「卵巣年齢」とも表現されています。

後でも出てくるように当院ではこの値に応じた治療法を提案しています。

と言うのも、AMHによって妊娠・出産率が大きく異なるからです。

国内でも、AMHが低いと行って良好卵が得られないわけではない、とか、妊娠率に影響がない、とされていますが、当院でのデータでは、やはりAMHは妊娠、出産率に影響しています。

AMH別妊娠数/胚移植あたり

AMH別出産率胚移植あたり2018

2018年は上記のような傾向がありました。

AMHで大きくまとめると、1.8、4.0、10.0を境に出産率が上昇しました。

2017年と比べても、10.0までは、いずれも出産率が上昇しています。
10.0を超える方は多くなく、統計的に比較できません。

2018年までの11年間でも、AMHは高くなるほど出産率も高くなる傾向があります。

AMH別出産率胚移植あたり〜2018

この間の胚移植あたりの出産率は、20.9%でした。

AMHが1.8〜4.0でこの平均出産率を上回り、1.8以下では平均を下回りました。

また今回は、患者さんからのリクエストがありましたので、初めてAMH別の流産率をみてみました。

AMH別流産率胚移植あたり〜2018

AMHを細かく分類しています。

胚移植あたりの流産率は、化学流産も含めると実に54.4%にものぼり、大変高いことが分かります。

左のAMHが低い方たちで流産率は平均より高く、AMHが4.0を超えると流産率が低下しているのが分かります。

AMHは4.0を超えると、出産率が高く、流産率が低い、と言えます。


胚移植には、

  • 新鮮胚移植
  • 融解胚移植

の方法があります。

多くの患者さんで、受精卵を一度凍結保存し、次の周期以降に融解胚移植を行うことが多く、妊娠率も高い方法です。採卵した周期に行う新鮮胚移植は、条件が適さないことが多いためです。

一方で条件さえ整えば、新鮮胚移植でも良好な妊娠率が得られます。

新鮮/融解胚移植成績

新鮮融解胚移植2018

子宮内膜の厚さや卵巣の腫大、採血したエストラジオール値によって新鮮胚移植の施行条件を定めていますが、これらの条件をクリアすると、出産(継続妊娠)率に差がありません(25.6% vs 28.1%)。

グループ別の内訳を見ると、Dグループで低い傾向にありますが、B、Cグループではむしろ融解胚移植を上回っています。周期数は少ないのですが、2017年以外は例年同様の傾向で、新鮮胚移植は、凍結して後で胚移植をする手間やコストが省けるため、妊娠には近道でコストを抑えられる方法、と言えます。


さて、その融解胚移植の周期には二つの方法があります。

・自然周期

・ホルモン補充周期

です。

それぞれのメリット、デメリットや出産率をみてみましょう。

融解胚移植周期別妊娠率

融解胚移植周期の選択2018

自然周期胚移植は、自然排卵がある方に、

ホルモン補充周期胚移植は、排卵しにくい、自然周期では子宮内膜が薄い方に

勧めています。

2017年は、どちらの周期も出産率に差が見られませんでしたが、2018年は2016年までと同様、自然周期の方が出産率が高かったです。
現在、ホルモン補充周期はどのような方に適しているのか、解析中です。

胚移植日の決定など、自然周期はスケジュール調整が難しい方もいらっしゃるかと思いますが、まず第一に考える方法といえます。

一方でホルモン補充周期は、胚移植日を任意に設定できることが多く、仕事をしながら治療を続けている方にとっても選択しやすい方法と言えます。


次は、受精卵のグレードと妊娠・出産率の関係について紹介します。

グレード別妊娠率/胚移植あたり

胚盤胞Grade別妊娠率胚移植あたり〜2018

受精卵はその見た目で評価され、グレードが付けられます。
胚盤胞の場合、赤ちゃんになる部分と胎盤になる部分の細胞数をそれぞれをA〜Cに分類し、赤ちゃんになる部分、胎盤になる部分の順でAA、BC、CBのように表現します。

Aは細胞数が多く、Cはほとんど細胞がない、と言う意味で、グラフの左ほど良い受精卵であるとされています。

色のついた妊娠率、特に青の出産率は、おおむね左から右にしたがって、少なくなるのがおわかりになるかと思います。

最高評価のAAは、あまり得られることがなく胚移植数が少ないですが、次のBAやCAは胚移植あたり50%以上の出産率になります。
一般的にはBBまでが良好胚で、CBより右は不良胚とされますが、CBで30%、BCでも約24%、つまり3〜4回の胚移植で一人の赤ちゃんが産まれます。
CCの評価では出産することがないため、産婦人科クリニックさくらでは凍結、胚移植の対象外としています。

良い受精卵を得ることが妊娠・出産率を高める、と言うことがお分かりになると思います。

2018年は、2017年に比較して、AB以外はすべて出産率が高くなりました。

次は、2017年から公表しているデータですが、BMI別の妊娠率です。

BMI別妊娠率

BMI別妊娠率採卵あたり2018

BMI(Body Mass Index)は体重・体格指数の一つで、身長と体重から簡単に求めることができて、様々な科学的根拠が示されているものです。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

で計算できます。例えば身長155cm、体重50kgであれば、50(kg)÷1.55(m)÷1.55(m)=20.8と求めることが出来ます。

BMIに科学的根拠が示されているのは、BMI 22が、最も疾病率(病気をする確率)が低く、最も平均寿命が長いため「標準体重」とされています。また、海外のデータでも、21.5が最も排卵障害が少ないことが示されています。

これらを根拠に、日本肥満学会(2016)はBMIを

・18.5未満:低体重

・18.5〜25:普通体重

・25以上:肥満

と定めています。

上のグラフから、2018年に採卵した患者さんで、BMI 18.6〜25.0まではほとんど出産率に違いはありません。

しかし、18.5以下、25.1以上では出産率が非常に低くなりました。BMIが低いと栄養が悪く、BMIが高いと肥満が悪影響を及ぼす、と考えられています。


次は胚移植回数別の妊娠率、つまり、何回目の胚移植で出産をしているか、を紹介します。

これはある意味、皆さんの治療回数の目安になる、と言えると思います。

採卵・胚移植回数別妊娠数

採卵回数別出産数胚移植回数別出産数

2008年から2017年10月までの約10年間に行った採卵・胚移植で、何回目の治療で出産に至ったか、を表しているものです。
横軸はそれぞれ採卵、胚移植回数、縦は出産に至った場合を、累積して表しています。

この間に当院での初回治療で210名の赤ちゃんが産まれました。二人目以降のお子さんはこの統計には載っていません。初回の採卵、また初回の胚移植で、実に55〜57%が出産しています。これは、この治療法がカップルにとって最適であれば、早いうちに妊娠が成立する、ということを表しています。 その数は2回目、3回目と増え、つまり3回目までに87%、6回目では98%とほとんどが出産に至りました。

では、3回、あるいは6回目で妊娠しなければ、妊娠を諦めるか。

これはとても重要な問題ですが、産婦人科クリニックさくらでは、良好胚を複数回移植しても妊娠しない場合、着床障害の検査サプリメントによる栄養補助、生活習慣指導、漢方専門外来、また理学療法を勧め、妊娠率向上を目指しています。

採卵では12回目、胚移植では15回目に出産をされた方が一番回数が多かったことから、7回以上の採卵、胚移植は意味がない、とは言い切れません。

何回まで治療を受けるか、カップルの価値観を重視しています。

産婦人科クリニックさくらでは、高度生殖医療の治療成績を毎年振り返り、より妊娠率の高い方法を皆さまにお勧めしています。

2018年から継続している「治療戦略」を紹介します。


年齢とAMH値によって卵巣機能を5つのグループに分け、それぞれの治療方針を立てています。

  • Aグループ;40歳以下でAMHが3.0以上
  • Bグループ;40歳以下でAMHが1.0~3.0
  • Cグループ;40歳以下でAMHが1.0未満
  • Dグループ;41歳以上
  • 多嚢胞性卵巣(PCOS)またはそれに準ずる方で、AMHが5.0以上が目安です。

このAMH値ですが、3.0=33歳相当、1.0=43歳相当です。

これらのグループ別に、治療前に行う準備、卵巣刺激法、受精卵の培養期間が決められます。表にすると、以下のようになります。

卵巣機能に応じた新しい治療法の選択

卵巣機能に応じた新しい治療法の選択2018〜

治療前の準備

Aグループの方は卵巣機能が良く、妊娠率もとても高いため、治療前の準備は特に行う必要がありません。胚移植周期に入ったら、葉酸の摂取を開始してください。
B~Dグループの方たちには、4種類のサプリメントを服用して頂くことをお勧めします。
厳密にはMVMとARTサポートがサプリメント、DHEAとメラトニンは医薬品に分類されるため、後2者は服用前に同意書にサインを頂いています。
これらのグループの方たちは、4種のサプリを服用して頂いた方が、妊娠率が向上します。
Dグループの方たちには、さらに妊娠しやすい体質に改善するため、当院の漢方専門外来、生活習慣指導、理学療法もお勧めしています。少なくともARTサポートとDHEAは服用することをお勧めしています。
多嚢胞性卵巣(PCO)の方は、AMHが高いもののビタミンD不足であることが多いため、血中のビタミンD濃度測定と、低値である場合、ビタミンDが含まれたVD、またはMVMのサプリメントを勧めます。

卵巣刺激法

採卵までに卵胞を育てる方法です。

A、B、C、PCOグループでは、Long法が最も妊娠率が高いです。
Long法は毎日注射通院が必要ですが、自己投与の注射が可能な方には別途ご指導させて頂きます。

( )を付けているのは、Long法が出来ない方、つまり連日の通院や自己注射が出来ない場合です。Aグループではクロミッド、B、Cグループはレトロゾールを内服して治療します。

DグループではHMGアンタゴニスト法をアレンジした方法で、連日HMGによる注射をお勧めします。

培養期間

採卵後の体外培養期間です。

A、B、Cグループ、多嚢胞性卵巣では採卵後5または6日目まで胚盤胞まで育て、Dグループは分割期である2日目まで体外培養します。

卵巣機能が低下すると長期間の体外での培養に受精卵が耐えられないことが多いため、良好胚が得られない場合は培養期間を短縮します。

新鮮胚移植/凍結融解胚移植

採卵した周期に体外培養を経て胚移植するか、一度胚凍結して次の周期以降に融解胚移植を行うか、です。

以下の条件であれば新鮮胚移植が可能です。
すなわち、

  • 子宮内膜が10ミリ以上に達している
  • 採卵前のE2(エストラジオール)値が1000以下
  • 両側の卵巣腫大がない、か軽度である
などです。
 
これらの方法はあくまでもこれまでの妊娠率の高い方法から決定しました。

治療を受けるカップルのご都合や価値観を共有し、より良い治療法の選択を一緒に考えていきたいと思います。

最後に高度生殖医療の新しい考え方「受精卵バンク」という概念について説明します。

「受精卵バンク」とは?

高度生殖医療では、他の治療では不可能な、受精卵を凍結して保存しておくことができます。

卵巣機能が低下する前に、パートナーがいなくても「卵子凍結」しておくのと考えは似ています。

パートナーがいる場合、そのパートナーとの「受精卵」を凍結保存しておくのが卵子凍結とは異なる点で、卵子凍結よりも高度生殖医療として実績のある受精卵凍結の方が推奨されます。

さて、高度生殖医療は、一般的な夫婦生活で妊娠、出産するのと異なり、きわめて計画的な妊娠に取り組む、といえます。

それはある意味で、人工的で、不自然な妊娠かもしれません。しかしながらそのメリットを最大限発揮することができます。

たとえば、今妊娠したとすると、次のお子さんは、いつ頃妊娠するでしょうか。

妊娠、授乳を経て、ある程度してから次の妊娠に取り組むと思うのですが、早い方でも1年以上、ほとんどの方が2〜3年後に相談にいらっしゃいます。

単純に計算しても、今から2、3歳、齢を取ってから、です。

卵巣機能が良く妊娠が直ぐできたのなら別ですし、たくさんの良い受精卵を凍結して保存できた方も悩まずに済みますが、なかなか良い受精卵ができなかった場合、次のお子さんを希望するときには、さらに治療回数が必要となる可能性があります。

ここで、当院の高度生殖医療でお一人授かった方が、次のお子さんを妊娠するまで胚移植を何回行ったか、を示します。

受精卵バンク

人数は多くありませんが、ほとんどの方は、1回の胚移植で次のお子さんを出産しています。中には、2回、3回、5回かかった方もあります。

つまり、採卵後胚移植をする際に、残り1個から、できれば3個くらいの良い受精卵をお持ちだと、次の妊娠も胚移植だけで可能かもしれません。

また、この回数を年齢、AMH別に検討すると、

受精卵バンク2

やはり、年齢が高くなると回数が増える傾向にあります。AMHは低い方が回数が増えますが、あまり相関は強くありません。

この受精卵バンクの考え方をもう少し明らかにできる様に、こちらもさらに解析を進めていますので、改めてお示ししたいと思います。

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