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PPOS 〜新しい卵巣刺激法〜

PPOS、Progestin-primed Ovarian Stimulation、日本語に統一された訳語はまだありませんが、「黄体ホルモン併用卵巣刺激法」と言う意味です。

体外受精などの生殖補助医療(高度生殖医療)では、多くの場合、HMGやFSHなどの排卵誘発剤で卵胞を発育させる卵巣刺激法を行っていますが、採卵前に排卵してしまわない様に、併用する薬剤があります。

・Long法(ロング法):排卵抑制の目的に、GnRHアナログ(ブセレリン®︎)を併用しています。

また、一部の多嚢胞性卵巣の方で行なっているのが、

・アンタゴニスト法:排卵抑制の目的に、GnRHアンタゴニスト(ガニレスト®︎やレルミナ®︎)を併用しています。

これに対して、PPOSでは、プロゲスチン=黄体ホルモンを併用して排卵を抑制する方法です。

使用するプロゲスチンには、複数の報告がありますが、当院ではメドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)を用います。

対象となるのは、

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)AMHが5.0以上の高値の場合

・Long法などの他の卵巣刺激法で卵胞発育がみられない場合

です。


方法を以下に示します。


①月経が開始したら、

月経の3日目を目安に受診、超音波検査、採血を行なった後に、この日からHMG/FSHの注射とMPAの内服を開始します。

HMGは通院しながら連日注射します。FSHは自己注射ができるレコベル®︎ゴナールエフペン®︎の使用も可能です。

MPAは朝夕食後に1錠ずつ服用していただきます。

②卵胞計測は、

3〜5日ほど注射をしたところで卵胞の発育を超音波で検査します。

卵胞が16㎜くらいの大きさに育つまで注射・内服と診察を繰り返し、16mmくらいを目安にホルモン採血を行い、卵胞が十分成熟しているか、確認します。

③採卵の決定は、

主にエストロゲンの値を参考に、採卵を決定します。

採卵前のトリガーには、

スプレキュア/ブセレリン点鼻薬の場合、採卵日の2日前の20、21時、また前日の朝8、9時に両方の鼻に1回ずつ点鼻。

hCG注射の場合、採卵2日前17時以降に注射、これもオビドレル®という自己注射が出来る製剤があります。

このトリガー以降は、MPAを服用する必要はありません。

以後、採卵、受精卵凍結、胚移植は従来の卵巣刺激法と違いはありません。

これらに使用する薬剤、検査、治療法も4月から開始する保険適用を受けられます。保険適用については、こちらもご覧ください

当院の生殖補助医療の治療成績と新しい治療戦略も最新のデータにアップデートし動画で解説しています。


また、保険で行う生殖補助医療の実際を解説した動画です。


文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:令和3年2月8日
補筆修正:令和3年3月16日、10月3日、12月13日
補筆修正:令和4年1月17日、3月24日、6月10日、12月14日
補筆修正:令和5年1月6日、2月20日、8月9日、12月11日
補筆修正:令和6年3月23日