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GnRHアンタゴニスト(レルゴリクス・レルミナ)は、どのような子宮筋腫に有効ですか? 〜粘膜下筋腫や子宮腺筋症〜

平成31年3月より処方ができるようになったGnRHアンタゴニスト(レルゴリクス、レルミナ®)ですが、発売前から作用についてはこちらで解説しています。

また令和3年12月より、子宮内膜症にも保険適用となりました。昨年4月より保険適用となった生殖補助医療でも早く使える様になるといいのですが。

さて、GnRHアンタゴニスト(レルゴリクス)は、どのような子宮筋腫に向いているでしょうか。


子宮筋腫の治療法には

  • 手術療法
    • 子宮全摘術
    • 子宮筋腫核出術
    • 子宮鏡下手術
  • 薬物療法
    •  偽閉経療法
      • GnRHアゴニスト(GnRHa)
      • GnRHアンタゴニスト
    • その他の対症療法

があります。

手術療法ですが、子宮筋腫は子宮にできる、良性とは言え腫瘍ですから、手術で子宮を取ってしまう子宮全摘手術は、その後の再発もなく、選択肢として上位にあります。最近ではお腹を切らずに穴を開けて行う腹腔鏡下子宮全摘手術が多くなっています。

しかし、今後妊娠を希望されている方は選択肢となりえず、また多くの女性にとって子宮を失うのは、精神的な喪失感も大きい場合があります。

また、子宮を残し、筋腫だけ取る(核出する)方法も、手術をしても再発をする可能性があり、さらに、手術後に3〜12ヶ月の避妊期間が必要となるのは、赤ちゃんを希望している方にとって、その間に生殖補助医療で受精卵凍結を行なっておくことができるとは言え、なかなか受け入れ難いことも多いです。筋腫核出術後の出産は、帝王切開となることがほとんどです。


薬物療法は、偽閉経療法とその他の対症療法、としました。その他の対症療法とは、例えば子宮内黄体ホルモン放出システム(LNG-IUS、ミレーナ®)低用量ピルPOPなど、で月経血量を減らす、月経痛を軽くする、月経を起こさないようにする、など筋腫による症状を和らげる治療法で、子宮筋腫を小さくすることを目的とするものではありません。

もちろん、ミレーナや低用量ピルで子宮筋腫が小さくなることもありますが、反対に大きくなる場合もあります。

さて、偽閉経療法については、こちらのページで解説しています

ここでは、偽閉経療法の中でも新しい治療薬、GnRHアンタゴニストがどのような子宮筋腫に適しているか、考えてみましょう。

偽閉経療法には、GnRHアゴニストと、GnRHアンタゴニストがあります。

名前が似ていて大変ややこしいのですが、

・GnRHアゴニスト、注射剤と点鼻薬:治療開始時にFlare Upがある。注射剤の場合、治療後は治療前のホルモン状態に戻るまで2〜3ヶ月かかる

・GnRHアンタゴニスト、内服薬(注射剤は生殖補助医療のみ適応):治療開始時にFlare Upがない。治療後はすぐに治療前のホルモン状態に戻る。

どちらの薬剤も、ホルモンを閉経の状態に低下させるものですが、アゴニストは一度ホルモンを上昇させた後で、低下させます。この一時的なホルモンの上昇をFlare Upと呼びます。

一方、アンタゴニストはFlare Upがなく、速やかにホルモンを低下させ、閉経状態となります。

これは、Flare Upによる一過性の不正出血(時に大量)が見られない、と言うことで、粘膜下筋腫や子宮腺筋症を合併している方には最も適していると思われます。

またFlare Upがなく、すぐにホルモンが低下するため、アゴニストよりも筋腫が小さくなり始めるのが早い方が多いです。

さらに、休薬することにより、速やかに元のホルモン状態に戻るため、副作用などでお困りの場合には、いち早く副作用がなくなるのもメリットです。

最大の特徴であるFlare Upがないため、アンタゴニストは、

・粘膜下筋腫

・子宮腺筋症

がある方には最適と言えます(令和2年9月、レルミナ錠の添付文書が改定され、粘膜下筋腫が慎重投与とされました。詳しくは下記の*をご覧下さい)。もちろん保険適応となるのは子宮筋腫や子宮内膜症があるからですので、子宮腺筋症のみの方には保険適応外となります。

また、休薬による回復が早いため、更年期障害様の副作用が心配な方には向いていると思います。

いずれにしても、多くの治療法が出てきたことは、患者さんにとっては選択肢が広がり、何を重視すべきか、価値観も含めて選ぶことができるようになってきています。

ぜひ、主治医の先生とよく相談なさって、ベストな治療法を選択してください。生理止まる
また一部でレルミナがホルモン剤であるため、血栓症のリスクがあると誤解されている方がいらっしゃいますが、ホルモン剤と言ってもホルモンを加えるものからレルミナのようにホルモンを抑えるものまで様々です。

血栓症リスクとなるのは、エストロゲン製剤で、レルミナは卵巣から出るエストロゲンを抑制する治療です。血栓症リスクはありませんので心配なさらないでください。

そのため当院では血栓症の副作用を持つ低用量ピルを、血栓症リスクの高まる40歳以降、レルミナを始めとした他の治療への切り替えを勧めています。

*令和2年9月、レルミナ錠の添付文書が改定され、新しく「粘膜下筋腫」を慎重投与とし、重度の不正出血が起こることがある、とされました。これまで重度の不正出血が13例の患者さんに見られたそうで、詳細に報告されている患者さんは粘膜下筋腫が筋腫分娩の状態となったようです。ただ、これはGnRHアゴニストを含めた偽閉経療法で起こりうるもので、レルミナ固有のものではありません。レルミナを服用している際に多量出血がみられる場合は受診するか、ご連絡下さい。

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:令和元年11月27日
補筆修正:令和2年1月28日、3月31日、4月21日、7月11日、8月19日、9月16日、10月6日
補筆修正:令和3年12月28日
補筆修正:令和4年1月12日、5月26日、8月14日、11月3日
補筆修正:令和5年1月18日