日本のメディアでは取り上げられていませんが、スコットランドでは、12〜13歳でHPVワクチンを接種した女性に子宮頸がんが発症していないことがBBCニュースで報じられました。
スコットランドでは年間300人の子宮頸がんが発症しています(日本では17,000人)。やはりワクチンプログラムの成功は、学校での接種のようで、日本のように希望者のみ、とするとなかなかこのレベルには達することは出来ません。
子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を予防するHPVワクチン。
スウェーデンから報告に続いて、英国からも子宮頸がん減少効果が報告されました(Falcaro M et al. 2021)。
この報告のポイントは以下の通りです。
・2008年から行われているHPVワクチン接種。
・英国居住者の1370万人を対象として、ワクチン接種した人としていない人を比較したら、接種年齢が、
12〜13歳では、リスクが87%減少。
14〜16歳で、62%減少。
16〜18歳で、34%減少。
・同様に子宮頸がんの前癌病変とも言える異形成も減少。
スウェーデンからの報告(Lei J et al. 2020)のポイントは以下の通りです。
・2006年から2017年の、10〜30代の1,672,983人の女性を対象。
・4価ワクチン(ガーダシルⓇ)を接種した女性は、ワクチン未接種に対して、30歳までの発がんリスクが0.37倍に減少。
・特に17歳までにワクチン接種した場合、未接種に対して実に0.12倍に減少。
4価ワクチンには発がん性のHPV、16、18の2つのタイプを防ぐことが出来ますが、他の10数種類に対する効果は限定的です。
日本でも使えるようになった9価ワクチンでは、さらなる、がん予防効果が期待されます。
日本では小6生から高1生までが、HPVワクチンの助成対象となり、無料で接種できます。
スウェーデンの報告の17歳以下、と同じ条件です。
ワクチン接種は、15歳以降に接種を開始した場合、半年を要します。高1生の11月までに、できれば14歳のうちにワクチン接種を始めましょう。
*いよいよ令和5年度より、9価ワクチンも公費接種できることが決定しました。
また、キャッチアップ接種にも2005年・平成17年度生まれまでの方を対象に、9価接種が令和6年度まで行われています。
スウェーデンの報告までは、子宮頸がんの前の状態である、異形成を減らす効果のみが報告されていました。
異形成が減るのであれば、子宮頸がんも減って当たり前なのですが、HPVに感染してすぐに子宮頸がんになるわけではないので、ワクチンが登場してからまだ、特に進行した子宮頸がんの予防効果まで判定出来なかったのです。
ワクチン反対派はこの点を挙げ、異形成は減るが頸がんは減らない、と主張してきました。文面通りには正しいですが、科学的な解釈が出来ていないことになります。
HPVワクチンについて、分からないこと、心配なことはどうぞ、いつでも相談にいらしてください。
ずばり、HPVワクチン、打った方がいいですか?
この記事にもあるように、打った方が、子宮頸がんの発症を予防できます。
HPVが原因の病気やHPVワクチンについて解説した動画を作成しています。公費接種の変更をふまえ、アップデートしました。
また皆さんから頂くご質問にお答えした動画を、最新のデータを元にアップデートしました。
YOKOHAMA・KANAGAWA HPV PROJECT by Etsuko Miyagiさんが作成された動画もどうぞご覧下さい。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:令和2年10月11日
補筆修正:令和3年4月1日、7月30日
補筆修正:令和3年11月7日
補筆修正:令和4年1月7日、9月2日、10月13日、28日、11月14日、12月3日、21日
補筆修正:令和5年3月21日、4月20日、8月11日、10月30日
補筆修正:令和6年1月25日、5月23日、YOKOHAMA・KANAGAWA HPV PROJECT by Etsuko Miyagiさんが作成された動画を紹介しました。