また新たにHPVワクチンが不妊の原因となるデマが流布されています。
繰り返し繰り返し出されるデマなので、正直辟易します。
NHKのニュースにも取り上げられています。
少し前にもワクチン流産説を獣医のタレント教授が、再び言い出して話題になりました。話題になることが商売の方たちですが、デマを公共放送やSNSで流すのは、それにより失われる生命もあるわけですから、犯罪行為とさえ言えるのではないでしょうか。
ここでは、HPVワクチンやコロナワクチンの不妊説、またデマが流される構図、対処すべきことをまとめてみました。
この記事の目次
HPVワクチンやコロナワクチンが不妊や流産の原因となるというデマに、科学的根拠や信頼できる情報源にはどんなものがありますか?
ワクチンが不妊の原因になる、というのは、HPVワクチンの時にも、そして過去に何度も根拠なく流布されたもので、よく使われる手法です。米国でも同じような現象が2020年12月頃から見られるそうです(Sajjdi NB et al. 2021)。
反ワクチンやデマを流す人たちの手法として、「子供」「家族」「将来」を使うとのこと。なるほど、確かに不安を煽るキーワードですし、いつも反ワクチンが攻撃するのは、そこだな、と納得できます。
また、デマである根拠として、科学的な医学論文が全く無い、と言う事からも判断できます。HPVワクチンの際には、ご丁寧に医学論文の捏造が国内でも行われましたが。。
これまでの臨床試験や医学論文では、HPVワクチンが卵巣や生殖機能に悪影響を及ぼすことは報告されていません。
新型コロナワクチンの方は、元はと言えば、ファイザー社の元副社長が、根拠はないものの胎盤形成を障害する可能性がある(=不妊症の原因になる)「と思われてきましたが」と、ワクチン反対の理由の一つとして書いたものがやはり切り取られ、誤訳されて「ファイザー元副社長告発」などとタイトルをつけて拡散されているのです。これも科学的なデータや根拠は皆無です。
拡散の主体は、メディアを名乗っているものの、発行元、発行者が不明なサイトです。
現在はレプリコンワクチンについても科学的根拠のないデマが拡散されており、こちらは業界団体や企業のみならず、自治体でもデマを信じて方針を定めているところがあり、重ね重ね残念であります。
また、これらのデマを鵜呑みにして拡散している医療機関もあるので、情報元に注意してください。
各機関よりコロナワクチン接種により、不妊とはならないという見解が発表されています。(ユニセフのHP)
米国不妊学会医学誌のFBページにも、コロナワクチン、コロナ感染で生じた抗体が、体外受精などで凍結保存された卵子の融解胚移植、初期の胚発育に妨げなかった、という速報が載りました。
妊婦さんへの接種経験から、妊娠の経過、赤ちゃんへの影響など、プラセボを接種した方達と同等であり、もちろん流産率も高まっていません。妊婦さんや授乳中の方、妊活中の方への情報はこちらにまとめています。
上のユニセフだけでなく、米国生殖医学会(ASRM)(2021)・米国疾病予防管理センター(CDC)(2024)・母体胎児医学会議(SMFM)(Hsu AL et al. 2021)、豪州保健省、ジョンズ・ホプキンス大学(2024)、シカゴ大学病院(2023)、フィラデルフィア小児病院などからも、不妊との関連がない、との声明が出されています(引用サイトは現在最新にアップデートされたもの)。
ワクチンに関して科学的な根拠に基づいた情報はどのように見分けられますか?
TV局でさえ、これまでの経験からも、何度も誤報を流したり、間違った考えに導く報道をしています。オールドメディアと呼ばれる、大手の新聞社も同様です。
どうぞ皆さま、ネットリテラシーを高めてください。ニュースソースを疑ってください。
国内で日本語でアクセスするには、厚労省などの公的機関や学会の声明などがもっとも信憑性が高いですが、なかなかアクセスしたり、読解するのが難しいですよね。
我々のように、これらの声明を噛み砕いてわかりやすく解説する医療機関も少なくありませんが、一部の医療機関では根拠もなく不安を煽るところもありますので、どうか信頼できる医師のサイトなどを参考にしてください。
なお、ワクチンを接種することによる不妊はありませんし、精子形成に対する影響も報告されていませんが、コロナウイルスに感染すると男性不妊となる可能性があるため、注意が必要です。
よくあるご質問にお答えします
HPVワクチンは将来の妊娠能力に影響を与えますか?
上記にも書いたように、HPVワクチンは卵巣機能や生殖能力に悪影響はありません。実際に妊娠しにくくなったり、流産しやすくなる、という報告もありません。
逆に妊娠しやすくなることもなく、生殖能力への影響が全くないと言えます。
HPVワクチンを接種した後、いつから妊娠していいですか?
HPVワクチンの後、避妊しなければならない期間はありません。実際にワクチンを接種し終える6ヶ月間に妊娠される方もいらっしゃいます。もちろん赤ちゃんに対する悪影響もありませんし、母体の妊娠、出産へのリスクが高くなることもありません。
妊娠中はHPVワクチン接種を控えますが、出産して授乳が終わったら、なるべく早く、残りのワクチンを接種します。
HPVワクチン接種後に副反応が出た場合、不妊になるリスクはありますか?
副反応が出た場合に、何らかの悪影響が残るのではないかと心配になると思いますが、副反応は一時的なもので、その後妊娠しにくくなるということはありません。
多くの副反応がなかった方と同じということです。
HPVワクチンを接種中に、不妊治療を受けてもいいですか?
上記と同様に不妊治療も受けられますし、なかなか妊娠ができない、ということもありません。また不妊治療の結果、妊娠されても何ら影響がありません。
婦人科の病気や治療とコロナワクチン接種については、こちらをご覧下さい。
婦人科の治療中にコロナウイルスに感染してしまった場合は、こちらをご覧下さい。
コロナワクチンは他のワクチンと同時接種が可能で、接種間隔も空ける必要はありません。
このHPのコロナウイルス感染、コロナワクチン関連の記事はこちらにまとめています。
「子宮頸がんワクチン 打ってはいけない」でキーワード検索すると、当院のHPが上位ヒットします。日本の子宮頸がんの実状と、HPVワクチンの効果、安全性について解説しました。
HPVワクチンへのご質問にお答えした動画はこちらをご覧ください。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:令和3年5月6日
補筆修正:令和3年6月4日、7日、17日、19日、7月1日、8月9日
補筆修正:令和4年11月16日
補筆修正:令和5年1月10日、3月6日、9月15日
補筆修正:令和6年9月27日、10月13日