千葉県内で妊娠29週のコロナ感染した妊婦さんが、出血があると救急要請したものの、受け入れ先が見つからず、残念ながら赤ちゃんが助かりませんでした。

コロナ感染していなければ、と悔やまれるニュースです。

コロナウイルス感染が拡大する中、都内では感染した妊婦さんの人数が7月に98名と報告され、過去最多となりました(NHKニュース)。

8月23日に厚生労働省から、事実上の妊婦さんへの優先接種を行うよう通知が出され、反応の早い自治体では、上のニュースの後、続々と妊婦さんの優先接種を開始しています。

8月14日、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会の3学会は、「新型コロナウイルスワクチンについて(第2報)」を発表しました。

この中では、

・妊婦さんは時期を問わず(=週数にかかわらず)、ワクチン接種が勧められる。

・パートナーにもワクチン接種をお願いする。

ことが明記されました。ようやく欧米諸国と同等の基準となり、これを受けて厚生労働省のQ&Aも、妊娠初期は避けるように、が消されました。

理由として、

・妊娠中のコロナ感染は重症化する

・妊婦さんの場合、臍帯血を介してお腹の赤ちゃんに、授乳婦さんの場合は母乳を介して赤ちゃんに、それぞれ抗体を与え、赤ちゃんを感染から守ることが出来る

事が上げられます。

また、副反応としてみられる発熱、痛み、だるさは、妊娠中はアセトアミノフェンを服用して下さい。

・妊婦さんの感染は80%が同居するパートナーから、とされています。妊婦さんと揃って接種を急いで下さい。

米国CDC(疾病対策センター、疾病予防管理センター=日本で言えば厚労省に作られた感染症研究所、のような公的機関)は、デルタ株の拡大で妊婦の重症化がみられる、一方で妊娠20週までの接種での流産率は、一般的な流産と変わらないことを示し、これまで以上に妊婦さんへのワクチン接種を推奨すると声明を出しました。授乳婦さんへの推奨も同様です。

また、コロナワクチンは不活化ワクチンのため、インフルエンザワクチンと同様、接種後に避妊の必要はありませんので、不妊治療や妊活を延期すべきではありません

これまでは妊娠12週までのワクチンを避けることが勧められましたが、現在では冒頭に上げたように、妊娠の週数にかかわらずワクチン接種が推奨されています。妊娠は病気ではないとは言え、重症化リスクは基礎疾患を持ってらっしゃる方と同等と思います。むしろ妊婦さんには、基礎疾患を有する方と同じように優先的に接種を行えるようにしていただきたいと思います。


さて、新しい薬やワクチンが登場するたびに、妊婦さんや授乳中の女性ではどうすべきか、必ず話題になります。

お腹の赤ちゃんに何かあったら心配。母乳を介して幼いお子さんへの影響は?

当然心配されることですよね。

一方で妊娠後期のコロナの重症化が報告されており、また子癇発作や血栓症、早産などもあり、本来であれば妊婦さんも率先してワクチンを受けて頂きたいところです。

また授乳中の幼いお子さんを置いて、お母さんが入院、なんて事態は絶対に避けたいですよね。

インフルエンザワクチンのように、これまで長年安全性が確かめられてきたワクチンであれば、妊婦さんも授乳中の方も積極的に勧められるところですが、新しいワクチンとなると、妊婦さん・授乳婦さんも、接種する医師側も、二の足を踏んでしまいますよね。

妊婦さん、授乳婦さんは接種できない、と決めつけた表現が、なされることがこれまで少なくありませんでした。

これまでにファイザー-ビオンテック製、モデルナ製、ヤンセン製のコロナワクチンを、妊娠前、妊娠中に投与した動物実験や、ヤンセン製のアデノウィルスを用いたベクターワクチンはエボラワクチンにも使われていますが、これらの投与では妊婦さんや産まれたお子さんの異常はありませんでした。

また妊娠中にワクチンを接種した場合、母体内で産生されたコロナウィルスに対する抗体は、臍帯を通じて赤ちゃんに移行したり、母乳にも移行するため、新生児・乳児のコロナ予防に繋がる可能性があり、欧州米国では妊婦さんへの接種を推奨する声明がすでに出されています。

現在妊婦さんを対象とした臨床試験が行われたり、計画されたりしています。

母乳への研究によると、ワクチン接種後80日後まで母乳中への抗体移行が認められています(それ以上長い可能性が高いですが、データが80日まで取られています)。

米国の不妊学会(ASRM)は4/20に「妊婦や妊娠しようとしている人たちを含めた、すべての人がワクチンを打つべきだ。ワクチンは安全で効果的である」と、とてもわかりやすく、クリアに声明を出しました。

翌日4/21にはCDCの研究成果が発表され、これまで妊婦さんへの安全性が明らかでなかったが、今回16歳から54歳までのワクチンを接種した35,691人の妊婦さんの分娩経過や生まれた赤ちゃんに、ワクチンの影響と考えられる異常はなかったとのことです。

米国のACIP(ワクチン接種に関する諮問委員会・1/7)は、妊婦を除外すべきではないとし、各国で妊婦さんの接種については対応が異なるとは言え、当初消極的であった英国でも接種をためらうべきではない、という立場に変わってきています。
 
COVID-19 mRNAワクチンの動物の生殖に関する研究はまだ完了していませんが、妊婦さん、胎児への悪影響はなく、不妊の原因となるという報告もありません。
 
 
さらに前述のACIPの3/1の発表(3/3、アップデート)では、2/16までに米国では5000万人以上の方がワクチンを接種されており、安全性調査に登録した妊婦もファイザー16,000人、モデルナ14,400人と、30,000人を超えました。
 
今までの発表によると、妊婦さんと非妊婦さんとの間で、局所・全身反応の副作用に違いはなさそうです。

また、妊娠中の合併症、出産したお子さんの異常なども、ワクチンと無関係に発生する自然発生率と、ワクチン後の経過で明らかな差はみられませんでした。
 
翌日3/2に発表されたFIGO(国際産婦人科連合)のステートメントでも、現実にも理論的にも、妊婦さんへのワクチンはリスクがなく、妊婦と授乳婦へのワクチン提示を支持する、としています。
 
 
日本で初めて承認され、接種が開始されたファイザー社製のmRNAワクチン(トジメラナン、コミナティ®︎)は、生ワクチンではないため、ワクチン接種によりコロナ感染症を引き起こすことはなく、接種後一定期間の避妊も必要ありません。次いで承認されているモデルナ社製のワクチンも同様です。
 
またこれもよく言われていますが、接種されたmRNAは素早く分解されるため、ヒトのDNAとの相互作用を起こさず、遺伝情報に何ら変化を来さないとされています。遺伝子に組み込まれる、のは、起こり得るように聞こえますが、デマです。
 
 
なお、よくいただくご質問ですが、ややこしいのでまとめると、現在日本国内で接種が開始されているワクチンは、
1回目と2回目の間はファイザー社製のコミナティ®︎3週間あける、モデルナ社製は4週間あける。
 
当然ですが、男性も妊活中でも不妊治療中でもいつでもワクチン接種ができます。
 
以上、現在までに明らかとなっている公的な声明やデータを元にまとめてみました。
今後も妊婦さん、授乳婦さん、また妊娠を考えている方たちへの情報提供をアップデートしていきます。
 

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:令和3年2月14日
補筆修正:令和3年2月17日、18日、3月4日、6日、8日、31日、4月4日、15日、19日、24日、25日、5月1日、6月10日、11日、19日、22日、26日、7月9日、31日、8月12日、16日、18日、19日、24日