「妊娠中、授乳中の方も、新型コロナワクチンを受けることができます。」

厚生労働省のHPに、明確に記載されました。

コロナワクチンを接種するか、戸惑う妊婦さん、授乳婦さんには安心できる一言だと思います。

医療従事者のワクチン接種が開始され、妊活中の方、不妊治療中の患者さんからも質問が増えてきました。

妊活中、妊娠中、授乳中でもコロナワクチンは接種できます。

しかし、妊娠がわかってから、妊娠12週までの期間はワクチン接種を控えてください。

16歳以上の方は、ワクチン接種が努力義務、とされている一方で、妊婦さんは努力義務の対象となっていません。よく考えて決めて下さい、と言う意味です。


新しい薬やワクチンが登場するたびに、妊婦さんや授乳中の女性ではどうすべきか、必ず話題になります。

お腹の赤ちゃんに何かあったら心配。母乳を介して幼いお子さんへの影響は?

当然心配されることですよね。

一方で妊娠後期のコロナの重症化が報告されており、また子癇発作や血栓症、早産などもあり、本来であれば妊婦さんも率先してワクチンを受けて頂きたいところです。

また授乳中の幼いお子さんを置いて、お母さんが入院、なんて事態は絶対に避けたいですよね。

インフルエンザワクチンのように、これまで長年安全性が確かめられてきたワクチンであれば、妊婦さんも授乳中の方も積極的に勧められるところですが、新しいワクチンとなると、妊婦さん・授乳婦さんも、接種する医師側も、二の足を踏んでしまいますよね。

妊婦さん、授乳婦さんは接種できない、と決めつけた表現が、されることがこれまで少なくありませんでしたが、新型コロナウイルスワクチンは、有益性が危険性を上回る場合で、医師が判断し、妊婦さんが希望した場合、接種できることになりました。

コロナ感染のリスクが高い医療従事者などの妊婦さんにとっては、大きな支えになることと思います。

これまでにファイザー-ビオンテック製、モデルナ製、ヤンセン製のコロナワクチンを、妊娠前、妊娠中に投与した動物実験や、ヤンセン製のアデノウィルスを用いたベクターワクチンはエボラワクチンにも使われていますが、これらの投与では妊婦さんや産まれたお子さんの異常はありませんでした。

また妊娠中にワクチンを接種した場合、母体内で産生されたコロナウィルスに対する抗体は、臍帯を通じて赤ちゃんに移行したり、母乳にも移行するため、新生児・乳児のコロナ予防に繋がる可能性があり、欧州米国では妊婦さんへの接種を推奨する声明が出されてきています。

現在妊婦さんを対象とした臨床試験が行われたり、計画されたりしています。

母乳への研究によると、ワクチン接種後80日後まで母乳中への抗体移行が認められています(それ以上長い可能性が高いですが、データが80日まで取られています)。

さて、すでに1月27日に、日本産婦人科感染症学会と日本産科婦人科学会が共同で声明を発しています。

・米国のACIP(ワクチン接種に関する諮問委員会・1/7)は、妊婦を除外すべきではないとし、イスラエルでは積極的な接種対象としています。
 
一方で、英国やカナダでは十分な臨床データがないことから、妊婦中の COVID-19ワクチン接種は推奨していません。
 
COVID-19 mRNAワクチンの動物の生殖に関する研究はまだ完了していません。また、中・⻑期的な副反応については、現時点では不明です。
 
と言うことを前提として、以下の提言を行なっています。
 

・流行拡大の現状を踏まえて、妊婦をワクチン接種対象から除外することはしない

・器官形成期(妊娠 12 週まで)は、ワクチン接種を避ける。

・母児管理のできる産婦人科施設等で接種を受け、なるべく接種前と後にエコー検査などで胎児心拍を確認する。
(解説:現状では国は一般接種は集団接種で行うことを前提としています。つまり、体育館のような大型施設で接種するので、ここで母体のエコー検査ができるのか。練馬区モデルのように、個別接種が可能な自治体内の産科施設であれば可能ですが、この点は結構ハードルが高いと、産婦人科医の中でも認識されています)

感染リスクが高い医療従事者、重症化リスクがある可能性がある肥満や糖尿病など基礎疾患を合併している方は、ワクチン接種を考慮する
 
 
さらに前述のACIPの3/1の発表(3/3、アップデート)では、2/16までに米国では5000万人以上の方がワクチンを接種されており、安全性調査に登録した妊婦もファイザー16,000人、モデルナ14,400人と、30,000人を超えました。
 
この発表によると、現在まで、妊婦さんと非妊婦さんとの間で、局所・全身反応の副作用に違いはなさそうです。

また、妊娠中の合併症、出産したお子さんの異常なども、ワクチンと無関係に発生する自然発生率と、ワクチン後の経過で明らかな差はみられませんでした。
 
翌日3/2に発表されたFIGO(国際産婦人科連合)のステートメントでも、現実にも理論的にも、妊婦さんへのワクチンはリスクがなく、妊婦と授乳婦へのワクチン提示を支持する、としています。
 
 
日本で初めて承認され、接種が開始されるファイザー社製のmRNAワクチン(トジメラナン、コミナティ®︎)は、生ワクチンではないため、ワクチン接種によりコロナ感染症を引き起こすことはありません。
 
またこれもよく言われていますが、接種されたmRNAは素早く分解されるため、ヒトのDNAとの相互作用を起こさず、遺伝情報に何ら変化を来さないとされています。
 
前述のACIPから提供された情報では、妊娠中のワクチン接種について、
・医療従事者、並びにエッセンシャルワーカーの接種を推奨しています。
・妊娠中のCOVID-19感染で、頻度は低いものの、重症化と早産などのリスクが高い可能性があります。
・一方でCOVID-19ワクチンの妊婦さんへの安全性データは限定的です。モデルナ社製のワクチンを接種したラットでは、安全性の懸念は示されませんでした。日本で接種が開始されるファイザー社製のワクチンでは、研究が進行中とのことです。
妊娠を考えている女性が、ワクチン後に避妊する必要はありません(妊活中と言う理由でワクチンを受けない、と判断しなくて良い、と言うことです)。
・授乳中の女性に対する安全性、乳児への影響に関するデータはありませんが、乳児にとってリスクとは考えられていません。
 
以上、現在までに明らかとなっている公的な声明やデータを元にまとめてみました。
医療従事者ではすでに、一般の方でも遠くない日にワクチン接種が開始されます。
妊婦さん、授乳婦さん、また妊娠を考えている方たちへの情報提供をアップデートしていきます。

初出:令和3年2月14日
補筆修正:令和3年2月17日、18日、3月4日、6日、8日、31日、4月4日