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妊婦さんのコロナ感染により、赤ちゃんの神経発達障害が増えたと報告されています。

妊婦さんのコロナ感染の、生まれた赤ちゃんへの影響が報告されています。

2022年、米国からの報告では、7772人の乳児を対象として、妊娠中の感染で、赤ちゃんが1歳になるまで、神経発達症と診断されるリスクが高まるという研究結果です(Edlow AG et al. 2022)。

神経発達症には自閉症、双極性障害、統合失調症、学習障害、脳性麻痺などが含まれ、乳児が発話能力や言語・運動機能に問題を抱える可能性が高いことを指摘しています。

この研究は、米マサチューセッツ州の病院で生まれた、そのうち222人の母親が妊娠中に新型コロナウイルスに感染していました。これらの乳児は、妊娠第3期(28週以降)に感染した母親から生まれた場合、特にリスクが高いことがわかりました。

この研究は観察研究で、ウイルスへの曝露が神経発達症の発生にどのように影響するかわかっていませんが、妊婦の感染が早産やその他のリスクを高めることが確認されています。インフルエンザなど他のウイルス感染も同様に影響を及ぼすことが知られています。研究チームは今後、長期的な影響を確認するためにさらなる研究が必要であると述べています。

また同様に、ブラジルからも報告がありました。

妊娠中にコロナに感染した場合、赤ちゃんの神経発達障害が、生後12ヶ月以内に20.3%診断されました。非感染者の赤ちゃん5.9%に比べて有意に高い、4倍も多かった結果でした(Santos CAD et al, 2023)。

同様の研究、報告を今後も注視して参りますが、妊娠中には特に感染予防に注意した方が良い、のは妊婦さん自身だけでなく、赤ちゃんのためでもあるのがお分かりかと思います。


コロナウイルスのワクチンが、コロナ感染と死亡率をそれぞれ90%以上減らせた、と特に日本では大きな成果が報じられています。

妊娠を考えている方、妊娠初期の方からも「やはり打つべきですか?」とワクチン接種について質問されます。

第7波の大流行では、当院に通院中の患者さんにも、コロナ感染のため、不妊治療や妊娠の診察など、中断を余儀なくされる方が少なくありませんでした。

また第8波の中、年末に、ご主人から妊婦さん、小さなお子さんへとコロナ感染を来してしまい、なかなか妊娠の診察に来院できなかった方が後悔していました。

「やっぱり副反応あるし、若いので重症化することもないから周りの人と同じように、夫婦でワクチン接種は止めておこう、と考えたんですよね。不妊治療で通院した折に院長先生に聞いた時も、妊娠を考えているんだから、他の人よりももっと打った方がいい、って言われたのに、面倒になってしまっていて。。」

「そんな矢先、タイミング指導で幸いにも授かったのですが、最初に主人が罹ったんです。勤務先の同僚の若い方もみんな2回までしか打っていなくて、うつされちゃって。家で咳や熱が出始めた時に嫌だな、と思って、自宅内隔離したんですが、そもそも自宅内で隔離なんてできませんよね、無理でした。すぐに2歳の娘が熱を出して、受診先を探しているうちに自分もおかしいなあ、って思って。やっと発熱外来やってる受診先が見つかり、検査したら陽性でした。明日はさくらの受診日だし、数日前に少しだけ出血してしまって、子宮外妊娠だったらどうしよう、お腹の赤ちゃん大丈夫かな、と。。 でも受診はできないし、主人も娘も私もぐったりしてしまって、お腹の赤ちゃんも含めて4人でもうダメかな、、って。」

ようやく外出できる日に再受診してくれて、幸いにも妊娠経過は順調でした。でもご主人は後遺症なのか、若いのに「仕事してる最中に息切れするようになってしまって。。」妊婦さんも「妊娠のせいかと思ったんですが、上の子を妊娠している時よりだるくて、ほとんど横になっているんです。」と言っていました。

そして「やっぱり、先生たちが接種するようにと言うのは本当なんだな、と当たり前のことなのにやっと気づきました。子どもの方が重症化率が高いと聞いて、こんな幼い娘にも辛い思いをさせてしまったし、お腹の赤ちゃんが無事なのか、ずっとドキドキしていて、コロナも辛いけど、そっちも耐えられませんでした。これからはこの子たちの親として、守ってあげる責任を再度痛感しました。」と語ってくれました。

*外来診療中に話してくれたことを一人でも多くの方に知って頂きたいため、許可をもらって一部修正し掲載しています。

私がお話しする、妊婦さんがワクチン接種を受けた方が良いと思う理由は、

・妊婦さんのコロナ感染は重症化しやすい。

これは普通の風邪でも、インフルエンザでも再三言われていることですが、妊婦さんは中期から後期、子宮が大きくなりますから、呼吸がしにくい状態になります。つまり呼吸器系の感染症の重症化リスクがある、ということです。

コロナも肺炎など呼吸器感染症ですから、当然重症化が心配されますが、日本国内のデータでもそれが裏付けられています。次のページにその発表を紹介しています。

「息苦しくても何日か我慢すれば治るでしょ?」 確かにそうですし、大人の貴女は我慢できるかも知れませんが、お腹の赤ちゃんにも同じ思いをさせるのですか?


・分娩やトラブルがあって受診する際にコロナに罹っていれば診てもらえない。

ワクチンを打っていなくても、分娩を断られることはほとんどないようです。しかし、感染してしまったら受診はできないかもしれません。ここでこんなお産をしたい、とずっと思い描いていても願いは叶えられないかもしれません。また分娩施設の先生やスタッフの方たちも、全力で妊婦さんと赤ちゃんを守るよう努力してくれますが、その方たちにとってもコロナ患者さんの分娩はリスクがあります。

柏市の痛ましい例を忘れかけているのかも知れませんが、出血してしまった妊婦さん、コロナ感染していて受け入れ先が見つからず、赤ちゃん亡くなってしまいましたよね。妊娠を診られて、コロナ患者さんも診られる施設となると、大変限られ、搬送先も見つかりにくいです。ましてやこのコロナ禍では、いっそう見つからないのではないでしょうか。

・妊婦さんの感染により、赤ちゃんへの影響が報告されている。

上に書いたように、赤ちゃんの神経発達障害や、早産、未熟児出産のリスクがあります。

日本産科婦人科学会は、第7波を受けて、改めて妊婦さんへの接種を呼びかけています


さて、今年10月から、新たにコロナワクチン接種を開始していますが、定期接種の対象者は65歳以上の方たちと基礎疾患を持つ方たちで、我々医療従事者や妊婦さんは任意接種となり、接種費用は全額自費となってしまいます。

妊娠したのですが、本当に打った方がいいんですか? とも聞かれますが、妊娠中でも安全性とコロナ予防効果の重要性が強く言われています。

結論を申し上げると、

・妊娠している方

・妊娠を考えている方

・授乳をしている方

・そのパートナーである男性

は、1日も早く、コロナワクチン接種を受けていただきたいです。


男性が受けた方が良い理由がもう一つ。コロナ感染後に精子が減少することが報告されています。実際に当院でも、かなり悪くなってしまった不妊症の方がいらっしゃいます。

昨年8月14日、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会の3学会は、「新型コロナウイルスワクチンについて(第2報)」を発表しました。

この中では、

・妊婦さんは妊娠の時期を問わず(=週数にかかわらず)、ワクチン接種が勧められる。

・パートナーにもワクチン接種をお願いする。

ことが明記されました。ようやく欧米諸国と同等の基準となり、これを受けて厚生労働省のQ&Aも、「妊娠初期は避けるように」の文言が消されました。

次のページでは国内外でこれまで発表されて来た、妊婦さんとコロナ感染、ワクチン接種について説明します。