ICU入院や死亡率も同様でした。
また中等症以上は妊娠初期6.9%、14週以降の中期34.5%、後期58.6%で、後期になるほどリスクが高く、また糖尿病などの基礎疾患がある方もリスクが高かったそうです。
これまで海外で報告されたり、妊婦さんのインフルエンザの傾向と同様です。
また家庭内での感染が39.4%で、妊婦以外19.8%と比べると高いのは、妊婦さんが外出など制限して感染に気をつけている一方で、家族が感染して妊婦さんにうつしてしまうのを表しており、これも風疹など他の感染症と同様の傾向です。
日本人のほとんどがコロナワクチン接種を済ませている中、妊娠した、と受診される方の中には、コロナワクチンをまだ接種していないケースがまだ見られます。20、30代の2回接種率が8割に満たず、50歳以降はほとんど9割以上が接種しているのと比べて低い傾向です(令和4年3月7日現在)。
千葉県内で妊娠29週のコロナ感染した妊婦さんが、出血があると救急要請したものの、受け入れ先が見つからず、残念ながら赤ちゃんが助かりませんでした。コロナ感染していなければ、と悔やまれるニュースでしたが、残念ながら忘れられてしまっているのかもしれません。
上に挙げた方たちにワクチンを接種してほしい理由として、
・妊娠中のコロナ感染は重症化する。
・コロナにかかれば、お腹の赤ちゃんは、お母さんから十分な酸素を受けることができません。
・妊婦さんの場合、臍帯血を介してお腹の赤ちゃんに、授乳婦さんの場合は母乳を介して赤ちゃんに、それぞれ抗体を与え、赤ちゃんを感染から守ることが出来る(お母さんの身体ってすごいですね)。
ことが上げられます。
副反応としてみられる発熱、痛み、だるさは、妊娠中はアセトアミノフェンを服用して下さい。妊婦さん以外は、アレルギーのない解熱鎮痛剤、なんでも内服できます。
・妊婦さんの感染は80%が同居するパートナーから、とされています。
このあたりもお伝えしてきましたが、上記のデータで裏付けられました。
米国CDC(疾病対策センター、疾病予防管理センター=日本で言えば厚労省に作られた感染症研究所、のような公的機関)は、デルタ株の拡大で妊婦の重症化がみられる、一方で妊娠20週までの接種での流産率は、一般的な流産と変わらないことを示し、これまで以上に妊婦さんへのワクチン接種を推奨すると声明を出しました。授乳婦さんへの推奨も同様です。
また、コロナワクチンは生ワクチンではないため、インフルエンザワクチンと同様、接種後に避妊の必要はありませんので、不妊治療や妊活を延期する必要はありません。
昨年夏頃までは妊娠12週までのワクチンを避けることが勧められましたが、その後は妊娠の週数にかかわらずワクチン接種が推奨されています。妊娠は病気ではないとは言え、重症化リスクは基礎疾患を持ってらっしゃる方と同等です。
さて、新しい薬やワクチンが登場するたびに、妊婦さんや授乳中の女性ではどうすべきか、必ず話題になります。
お腹の赤ちゃんに何かあったら心配。母乳を介して幼いお子さんへの影響は?
当然心配されることですよね。
一方で妊娠後期のコロナの重症化が報告されており、また子癇発作や血栓症、早産などもあり、本来であれば妊婦さんも率先してワクチンを受けて頂きたいところです。
また授乳中の幼いお子さんを置いて、お母さんが入院、なんて事態は絶対に避けたいですよね。
インフルエンザワクチンのように、これまで長年安全性が確かめられてきたワクチンであれば、妊婦さんも授乳中の方も積極的に勧められるところですが、新しいワクチンとなると、妊婦さん・授乳婦さんも、接種する医師側も、二の足を踏んでしまいますよね。
妊婦さん、授乳婦さんは接種できない、と決めつけた表現が、なされることがこれまで少なくありませんでした。
これまでにファイザー-ビオンテック製、モデルナ製、ヤンセン製のコロナワクチンを、妊娠前、妊娠中に投与した動物実験や、ヤンセン製のアデノウィルスを用いたベクターワクチンはエボラワクチンにも使われていますが、これらの投与では妊婦さんや産まれたお子さんの異常はありませんでした。
また妊娠中にワクチンを接種した場合、母体内で産生されたコロナウィルスに対する抗体は、臍帯を通じて赤ちゃんに移行したり、母乳にも移行するため、新生児・乳児のコロナ予防に繋がる可能性があり、欧州や米国では妊婦さんへの接種を推奨する声明がすでに出されています。
母乳への研究によると、ワクチン接種後80日後まで母乳中への抗体移行が認められています(それ以上長い可能性が高いですが、データが80日まで取られています)。
実際に妊婦さんのワクチン接種が、乳児のコロナ感染による入院を減らす効果が米国から報告されました(Halasa NB et al. 2022)。
米国の不妊学会(ASRM)は4/20に「妊婦や妊娠しようとしている人たちを含めた、すべての人がワクチンを打つべきだ。ワクチンは安全で効果的である」と、とてもわかりやすく、クリアに声明(現在デッドリンク)を出しました。
翌日4/21にはCDCの研究成果が発表され、これまで妊婦さんへの安全性が明らかでなかったが、今回16歳から54歳までのワクチンを接種した35,691人の妊婦さんの分娩経過や生まれた赤ちゃんに、ワクチンの影響と考えられる異常はなかったとのことです。
また、妊娠中の合併症、出産したお子さんの異常なども、ワクチンと無関係に発生する自然発生率と、ワクチン後の経過で明らかな差はみられませんでした。

・副作用である心筋炎は、米国からの大規模なデータから、2回目接種後の16、17歳の男子が最も多いものの、1万人に一人の頻度と報告(Oster ME et al. 2022)されており、ワクチンによるメリットが上回ります。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:令和3年2月14日補筆修正:令和3年2月17日、18日、3月4日、6日、8日、31日、4月4日、15日、19日、24日、25日、5月1日、6月10日、11日、19日、22日、26日、7月9日、31日、8月12日、16日、18日、19日、24日、11月19日、12月16日
補筆修正:令和4年1月19日、2月15日、28日、3月9日、12日、16日、24日、4月6日、5月7日、18日、31日、6月25日、7月8日、28日、8月8日、12日、17日、11月4日、5日、12月1日、27日
補筆修正:令和5年1月5日、令和5年6月2日、14日、8月8日、10月3日、11月20日、12月8日、9日
補筆修正:令和6年7月8日、10月15日、コロナワクチン接種を開始したことなどを追記しました。