婦人科診療の中に「ブライダルチェック」があります。
文字通り、結婚、または妊娠を前に婦人科的な病気がないかを診るものです。
ブライダルチェックとしてお勧めしている検査項目は以下の通りです。
簡単に言うと、嫁入り前に病気がないか、を診るもので、まだ女性の社会的立場が低かった時代に、病気がない、子どもを産める健康な身体である、と婦人科医がお墨付きを与えて入嫁したそうです。
現在でも診療内容の大筋は同じですが、子宮がん検診にはじまり、超音波検査で子宮卵巣を診たり、また不妊の原因となる病気がないか確認します。
表にあげた項目を解説します。
◯基本セット(22,990円・21,500円*)
・内診・超音波検査
この2項目は、いわゆる婦人科検診の基本項目です。
子宮頸がん検査は横浜市がん検診を利用できる場合があります(この場合、*の価格になります)。毎年年度末が期限となりますので、3月はお急ぎください。
子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウィルス)が原因のため、HPV検査を同時に行ったり、あらかじめHPVワクチンを接種したりすることもお勧めしています。
内診では小さな子宮筋腫や子宮内膜症を見逃してしまうこともあるため、不妊の原因となる病気がないか、超音波検査を併用します。
特に若い世代に多いのが、クラミジアや淋菌です。いずれも感染しても気づかないうちに卵管を障害し、不妊の原因となります。
その他、梅毒やHIVも近年増えており、マイコプラズマ・ジェニタリウムは流産、早産や骨盤内感染症の原因となります。
検診の場合は自費検査となりますので、相談の上、検査項目を決めます。
AMHは卵巣予備能といって、卵巣にどれくらいの卵子が残っているか、つまり卵巣は何歳相当なのか、を検査します。
いつ頃、赤ちゃんを考えるか、とう言う人生設計の目安にもなるでしょう。
◯プレママオプション(13,530円・9,020円*)
数ヶ月以内に妊娠を希望する方にお勧めする項目です。
・風疹などのウイルス抗体検査
妊娠中にかかると赤ちゃんの病気や流産、早産となる、風疹(三日ばしか)、麻疹(はしか)、ムンプス(おたふく)、水痘(水ぼうそう)の抗体を調べ、低い場合にはワクチン接種を勧めます。
過去にかかったり、ワクチンを打っていても抗体が低いことがあり、現在かかってしまう可能性もあります。
麻しんの感染が報じられたように、近年、これらのウイルスは繰り返し流行しており、注意が必要です。
詳しくはこちらのページもご覧下さい。横浜市の風しん抗体検査を利用できる場合があります(この場合、*の価格になります)。
*令和6年1月26日現在、麻疹ワクチン、MRワクチンが出荷制限となったため、ネットでの予約を停止し、お電話、または直接受付でご予約いただいております。接種を希望される方は、お早めにご連絡ください。
・甲状腺機能
甲状腺の病気は女性に多くみられ、特に妊娠世代で問題となることが多いです。
橋本病など甲状腺の機能が低下すると、排卵しなくなったり、流産しやすくなったりするので、妊娠前から注意が必要です。反対にバセドウ病などの甲状腺機能亢進も、妊娠中の重い合併症となるため、やはり妊娠前に血液検査で確認が必要です。
◯プレコンオプション
「プレコンセプションケア」耳にしたことがあると思いますが、Pre=「前に」、Conception=「受胎」妊娠することですね、Care=ケア、治療などを指します。
将来的に妊娠を考えている方に、栄養チェックを勧めています。
・ビタミンD
妊娠のためだけではなく、骨や免疫にも影響したり、乳がん予防にもなるビタミンで、重要性は周知されてきている一方で、大半の女性ではビタミンDは不足しています。
不足している場合、妊娠前から摂取することで、卵巣の老化を予防し、卵子を良くし、また受精卵が子宮に着床するのを助けてくれます。
・鉄セット
血清鉄、UIBC、フェリチンを測定します。
鉄も月経のある女性では不足することが多く、鉄の不足は貧血だけでなく体調や精神の不調につながり、不妊や妊娠してからの赤ちゃんへの影響も考えられます。
・亜鉛
亜鉛の不足は貧血や皮膚や髪の毛、味覚などに影響を及ぼし、近年、ビタミンDや鉄と共に注目され、卵子や精子の質を改善し、また受精卵が子宮に着床させやすくする作用があります。
◯その他、オプションとして、
・基礎体温とホルモン検査
月経が順調に来ているようでも、排卵ができていなかったり、排卵後の黄体期が短かったりすることがあります。
月経が不順な方はもちろんですが、妊娠に備えて基礎体温をつけてみましょう。
また、ホルモン検査にも色々ありますが、月経期間中に採血する、基礎分泌値は月経不順の原因や、妊娠しにくいホルモン状態ではないか、がわかります。
日本人の乳がんはとても増えています。1年間に9万人、乳がんが見つかりますが、子宮、卵巣のがんを合わせても3倍多いです。
乳がんは40歳代からピークを迎えますが、20代後半以降、増えており、25歳以降の女性に超音波検査を勧めています。
妊娠・授乳期は乳がんが見つかりにくいため、妊娠前に異常の無いことをチェックしておきましょう。
・男性のブライダルチェック
最近では、男性もブライダルチェック、という考えがあります。
結婚前、子供を作る前に、精液所見の異常がないかをみる精液検査です。
不妊カップルの半数は男性にも原因があります。男性も妊娠のためにあらかじめ検査をしておく時代と言えます。ブライダルチェック費用
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:令和元年7月18日
補筆修正:令和3年1月15日、9月7日、11月23日
補筆修正:令和4年1月7日、5月1日、10月15日
補筆修正:令和5年7月2日、8月2日
補筆修正:令和6年1月6日、27日、3月12日、横浜市子宮がん検診の期限について追記しました。