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不妊と流産の原因「黄体機能不全」

「黄体(おうたい)」とは、排卵した卵胞が「黄体化」して(本当に黄色く変化します)、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌するようになります。
 
この黄体ホルモンの作用は、
・体温上昇作用があり、基礎体温が上昇して高温相が形成されます。
・子宮内膜を成熟させて、受精卵が着床しやすい環境にします。
 
黄体ホルモンの分泌が少なく、不足した状態を「黄体機能不全」と呼びます。
 
黄体機能不全では、
 
・排卵後の基礎体温が低い。
・排卵後の高温期が短い。そのため、月経周期が短くなることも。
・排卵後から月経までの期間に不正出血がみられる。
 
などの症状が見られます。
 
出血や基礎体温の異常がみられないものの、血液検査をすると黄体機能不全が診断される場合があります。

不妊症や流産の経験がある方には、黄体機能検査は必ず受けて頂きたい検査の一つです。
 
検査方法は、
排卵の1週間後(黄体中期)に来院していただき、
基礎体温のチェック
・経腟超音波
・血液検査で黄体ホルモン(プロゲステロン)の測定
を行います。
 

血液検査では、黄体ホルモンだけでなく、この時期のエストロゲン(E2、エストラジオール)の分泌値や黄体ホルモンとエストロゲンの比も重要です。

黄体ホルモン値が低い(黄体機能不全)場合、治療として排卵前後にhCG製剤の注射を行なったり、黄体ホルモンの補充を行います。

また排卵誘発剤により、黄体機能不全の改善を図ることがあります。
生殖補助医療では、黄体機能不全の有無にかかわらず、胚移植の前から黄体ホルモンの腟剤を使って補充します。
子宮内膜症慢性子宮内膜炎が原因で着床障害を起こしやすいですが、黄体ホルモンによって改善される作用が報告されています。
 
黄体機能不全は、卵巣機能が未熟な若い方や、加齢などにより卵巣機能が低下した方に見られることが多いです。
若い方は年齢とともに自然治癒することがありますが、サプリメントや食べ物などご自分で改善する有効な手段は今のところ報告されていません。
 

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:平成30年10月9日
補筆修正:令和2年1月27日、2月17日、6月3日、7月9日、9月23日
補筆修正:令和3年9月2日
補筆修正:令和4年7月6日
補筆修正:令和5年4月24日
補筆修正:令和6年5月9日、生殖補助医療、着床障害の項を補筆修正しました。