昨年、閉経後の女性がコロナワクチン接種後に月経が来た、という海外のニュースを見て、その時はそんなはずはないだろう、と正直あまり深く考えていませんでした。
ところが、まだ閉経はしていない、当院のスタッフや当院に通院している患者さんの中でも、ワクチンの後に不正出血をした、と、複数の報告を受けました。
ワクチン接種後、発熱やだるさなど、体調を崩すことが知られています。実際に高頻度で起こるものです。
女性の卵巣機能は、脳の視床下部、下垂体によって調整されていますが、これらの部位は、とてもストレスに弱く、例えば仕事が忙しくて、職場が変わって、引っ越して、進学して、などの理由で月経が遅れたり、不正出血をすることがある、と言えば、思い当たる女性は少なくないと思います。
同じように、風邪を引いたり、手術を受けたりした後にも同様の症状があり、繊細だとつくづく感じます。
さて、ワクチンの後にも体調が悪くなることから、不正出血が見られても不思議はない、と思います。
同様に排卵が遅くなり、月経が遅れる、生理が来ない、生理不順や生理が長引く、ということもあり得ます。
精神的、肉体的なストレスの反応と考えられています。
また、海外の研究者の中には、ワクチン後の免疫の影響であると考えている方もおり、私もあり得ると思っていますが、EUの医薬品規制当局、欧州医薬品庁(EMA)は、月経異常との因果関係は認められない、と発表し、さらなるデータの提出をワクチン開発側に求めたそうです。
英国政府も不正出血や月経不順の報告は、0.07%の女性に相当し、ワクチンと無関係に起こりうる数値であると述べています(Coronavirus vaccine, Updated 2 September 2021)。この報告では4,690万人のワクチン接種を行なった女性のうち、33,221人の反応としていますが、母数が出血を起こしうる年齢であるか、また子数は全例報告とは考えにくい点が気になるところです。
米国産婦人科学会は、月経周期に関係なくワクチンを接種するよう勧めています。
いずれにしろ、上にあげたようなストレスからの症状も、多くは一過性で、長く続くことはなく、ストレスから解放されれば元に戻ることがほとんどです。
コロナワクチンの副反応であっても同じことが言え、その後、長期にわたる影響はありません。
ましてや不正出血を起こすからと言って、不妊症になる、なんて荒唐無稽です。
しかし、大切なこともあります。
ワクチンの後だから、と結論づける前に、子宮がん検診を受けているか、思い起こしてください。もし1年以上受けていない場合や、次回の検診予定を過ぎている場合には、まずは検診を受け、異常がなかった場合にワクチンの影響と考えましょう。
出血をきっかけに見つかる子宮頸がん、体がんは少なくありません。
これを機会に思い出してください。
他にもワクチンの後で生理が来た、生理が重い、長かった、生理こない、おりものが出た、などなど、様々なお問い合わせをいただいていますが、どこまでワクチンの副反応とするか、とても難しいですが、少なくとも何か病気ではないのか、きちんと診察しましょう。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:令和3年7月2日
補筆修正:令和3年7月3日、8月1日、24日、9月6日、8日、10月27日、29日
補筆修正:令和4年3月2日、5月26日、みられる症状を追記しました。