他科の先生たちから、患者さんからの質問で、「避妊相談」を受けることが多い、と聞きます。
そんなとき、どう答えたらよいのか、お医者さんでも戸惑われる相談なので、今日はIUD、子宮内リングを中心にご紹介します。
避妊方法は様々ですが、効果が高いものをあげると、
・IUD(子宮内リング)
・OC(低用量ピル)
・コンドーム
があります。それぞれ一長一短があり、一概にこれがいい、と言うことはできないので、その方にあった方法をお勧めしています。以下に表にまとめましたので、ご覧ください。
効果が高い順に、1年間の失敗率(完璧に使えた場合)を上げると、
IUDの中でも、黄体ホルモン(レボノルゲストレル)付加のIUS(ミレーナ®):0.2%
OC:0.3%
銅付加のIUD(ノバT®):0.6%
の順です(Trussell,2011)。
この、完璧に使える、とは、OCは服用を忘れてはなりませんが、IUDは子宮に入れたら定期検診以外、ご自身で気をつけることはありません。
一方で、やはり子宮に異物を入れるため、挿入したころに痛みや違和感、また不正出血がみられる事があります。
1ヶ月もすると、これらの症状はなくなってきますが、症状が持続、悪化する場合、特に子宮内感染を疑われる場合には抜去が必要です。
また挿入後5年経過したら、入れ替えが必要です。
これを怠ると、子宮筋層に深く食い込んでしまい、容易に取れなくなってしまったり、放線菌という特殊な菌が繁殖することがあります。
放線菌はとても難治性で、子宮内膜炎や骨盤腹膜炎を併発しやすく、再発を繰り返し、また長期間抗生物質を服用しないと完治しません。
くれぐれも入れ替えを忘れないようにしてください。
IUDは、経腟分娩を経験したことのない方、未産婦の方は子宮口が狭く、挿入が困難なことがあります。この場合、子宮頚管拡張術が必要です。
挿入は妊娠していないことが確認できる、月経7日以内に行うこと、とされていますが、月経のピークを過ぎた頃に行うのが最も良いと考えています。
また除去も、月経直後が適しています。月経以外でも可能ですが、1週間以内に性行為があった場合、避妊する場合には新しいIUDを挿入する必要があることと、除去後の不正出血が多くなる可能性があります。
銅付加のIUDは、銅アレルギーや銅代謝異常(ウィルソン病)の方には使えません。
価格は全て自費(ミレーナは保険適用となることがあります)で、
挿入時、
ノバT®:36,630円
ミレーナ®:67,430円(令和2年7月より価格が下がりました)
抜去時、
13,750円
です(いずれも税込)。
最近、大変興味深い論文が発表されました(Spotnitz, Matthew E et al.、2020)。
この銅負荷のIUDが子宮頸がんのリスクを低くする可能性があるかも知れません。
これは、銅不可IUDと子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナなど)を挿入した後の子宮頸部病変の発症率に差が認められ、銅負荷の方が4割くらいだった、と言うものです。
理由として、
・IUDから放出される銅イオンが、子宮頸がんの原因ウィルス、HPVを減らす可能性。
です。当院の患者さんにも、同様の効果がみられている方がいらっしゃいますが、かねてよりIUD挿入が子宮頸がんリスクを低下させることが言われており、IUDの種類によって違いがあるか、が検証されたものです。
IUDを入れない場合との比較はされていません。
詳しくは担当医までお問い合わせください。
IUDやIUSの受診の目安はこちらをご覧下さい。
*令和6年末で、「ノバT」の販売終了が決定しました。
OCなどを解説した動画はこちらです。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:平成30年9月20日
補筆修正:令和2年2月20日、3月27日、5月20日、7月14日、10月10日
補筆修正:令和3年3月18日、5月3日
補筆修正:令和4年11月22日
補筆修正:令和5年4月17日、ノバTの販売終了について追記しました。