最新のお知らせ

国内初のミニピル「スリンダ」

国内初のミニピル「スリンダ®」が6/30に処方が可能となりました。

早速当院でも処方が開始されています。

診察室でもご質問が増えてきたため、これまでのピルと比べてどう違うのか、現時点での情報を元に解説します。

基本情報

  • 「スリンダ」は、 低用量ピル「ヤーズ」「ヤーズフレックス」「ドロエチ」「アリッサ」に含まれる黄体ホルモン、ドロスピレノンのみを含むプロゲスチン製剤で、ピルには含まれているエストロゲンを含んでいない経口避妊薬のため、「ミニピル」または「POP」と呼ばれ、2025年1月時点で世界62か国以上で承認実績があります。

  • いつから使えるの?

    令和7年6月30日に国内発売開始されます。当院では当日午後の外来から処方が可能です。

どうして避妊効果があるの?

スリンダ錠は以下の3つの作用で避妊効果を発揮します:

  1. 排卵抑制:プロゲスチン(ドロスピレノン)により、LHサージを抑制し排卵を防止。

  2. 子宮内膜の菲薄化:受精卵の着床を抑制。

    排卵抑制がうまく行かなかった時でも、精子と卵子が受精した受精卵を着床しにくくします。

  3. 子宮頸管粘液の粘性を増加:粘性が強いため、精子が子宮に侵入するのを妨げるます。


低用量ピルと比べて、メリットは?

  • 血栓症リスクが低い:血栓症の原因となるエストロゲンを含まないため、低用量ピル(OC/LEP)に比べて血栓症のリスクが少ない

  • 適用対象が広い:喫煙者、高血圧、肥満、脂質異常症、40歳以上、血栓症リスクがある女性など、従来のピルの内服が禁忌だった方にも処方が可能です。

  • 月経痛・PMS症状が緩和される可能性があります
     これは低用量ピルでも同様ですが、排卵が抑制されるため、PMSが起こらず、本来の月経は起こりませんので、生理痛も緩和される可能性が高いです。


どうやって飲むの?

  • 用量:1日1回、なるべく一定時刻に1錠服用します。

  • 1シートは28日分。24錠の実薬と4錠のプラセボ(偽薬)から構成されています。これを繰り返し服用します。

  • 偽薬を開始して、2,3日目に少量の出血(多くは茶色の織物程度)がみられることが多いですが、全く出血がないこともあります。
  • 他の方法からの切替え方法

    • ピルから切り替える場合:OC/LEPの実薬を全て飲み終えた翌日から服用を開始します。

    • ミレーナやノバTから切り替える場合:ミレーナやノバTを抜去した当日から服用を開始します。切り替え後の飲み始めが遅れると、避妊効果が弱くなってしまうからです。


副作用や注意すべき点は?

比較的頻度が高い副作用

不正性器出血(約90%)、下腹部痛、頭痛、乳房不快感、悪心、ざ瘡など。

一方で、エストロゲン由来の副作用は低く、吐き気や血栓症のリスクは極めて低いです。

1年以上服用している方には、副作用チェックのため血液検査を勧めています。

不正出血

使用初期(特に6周期以内)は3割くらいの方で続く場合がありますが、繰り返し使用することで頻度が低くなったり、量も減る傾向があります。

禁忌・慎重投与、授乳中は

乳がんや生殖器系の腫瘍、重度の肝臓や腎臓の障害、未診断の不正出血などのある場合は服用出来ない、または慎重な服用が必要です。

また授乳中は、添付文書では母乳中へ移行することがあり、授乳の継続または中止を検討、とされています。

乳がんなど乳腺への影響は?

乳房症状

乳房症状には、乳房の不快感(5%以上)、乳頭痛(1~5%)、乳房痛(1%未満)がみられますが、いずれもエストロゲンを含まないため、低用量ピルに比べて頻度、症状の強さは軽減されます。

乳がん

乳がん患者さんは禁忌で、処方することはできません。乳がんが完治している方には、乳腺の主治医の先生と相談した上で、慎重に投与を検討します。

乳がんの発生について、エストロゲンを含む低用量ピルは、わずかではあるものの乳がんのリスクが上昇すると議論されています。一方、エストロゲンを含まないため、スリンダを始め、黄体ホルモン単剤のホルモン治療は、低用量ピルよりも乳がんリスクが低いと考えられ、現段階ではスリンダが乳がんリスクを増加するエビデンスはありません。

コンドームは?

当然のことながら、性感染症予防には効果がないため、コンドーム併用を推奨します


避妊効果は?

  • 臨床試験では、正しく服用された場合の妊娠例はほぼゼロでした。例外として、8日連続して飲み忘れた場合の妊娠が報告されています。

  • 避妊効果を表すデータとして、パール指数があります。
    パール指数は、この方法を100人の女性が1年間使った場合の妊娠する人数で表されます。スリンダのパール指数は0.41(Genzell-Danielsson K et al. 2021)で、低用量ピルのパール指数0.3〜0.9と同等と言えます。国内の臨床試験でのパール指数は0.39でした(Kitamura K et al. 2025)。

治療費は?

自費診療となるため、医療機関によって価格が定められます。

当院では1シート28日分で3,300円(税込)で処方します。

新薬ですが、自費診療のため、長期処方の制限がありません。

来院した際には6ヶ月分まで、オンライン診療では3ヶ月分まで処方します。

スリンダに関するよくあるご質問(FAQ)

 💊 スリンダって他のピルとどう違うの?

スリンダは「エストロゲンを含まない」日本初のプロゲスチン単剤ピル(ミニピル、POP)です。
血栓症リスクが低く、40代以上でも開始できたり、低用量ピルが禁忌でも使える新しい選択肢です。

👩‍⚕️ スリンダはどのような人に適していますか?

血栓症のリスクが高い方(40歳以上、喫煙者、高血圧、肥満、前兆のある頭痛など)、エストロゲンが使用できない方、従来の低用量ピルで副作用があった方に特に適しています。

 🔄 飲み忘れたらどうすればいい?

飲み忘れに気づいたら、24時間以内であればすぐに1錠服用して、次も予定通りに服用してください。

2日以上飲み忘れたら、飲み忘れの分1錠と、その日の分を服用しますが、避妊効果が低下するため、コンドームの併用をしてください。

3日以上忘れたら、服用を中止し、一度月経が来るのを待って再開して下さい。この間の避妊に気をつけて下さい。

 💉 定期的な血液検査や診察は必要?

血栓リスクは低いものの、初回は必ず診察・問診が必要ですし、子宮がん検診(超音波検査を含む)・乳がん検診を行っているか、血液検査を行っているか確認します。

その後も少なくとも1年に1回、子宮がん検診、乳がん検診、血液検査を行っているか、確認します。

 🚫 生理が止まるって本当?

スリンダを服用していると月経が軽くなる・止まることがありますが、異常ではありません。

ただ、低用量ピルもそうですが、出血が無い場合には、妊娠の可能性がないか、確認しましょう。

不正出血がある場合もありますが、通常は数か月で減ってきます。

 👶 妊娠希望のときはどうすればいい?

スリンダの服用をやめれば、数日〜数週間で排卵が再開します。
妊娠を希望される方は、服用を中止し、自然妊娠の準備を始めることができます。その際には必要な検査やワクチン接種、サプリメント摂取など、相談いたしましょう。

ご質問があれば、診察室でお気軽にどうぞ。

初出:令和7年6月23日
補筆修正:令和7年6月28日、30日、7月1日、乳腺への影響、よくある質問を追記しました。