乳がん患者さんや、乳がん治療後の患者さんは、女性ホルモンであるエストロゲンや黄体ホルモンの治療が受けられません。乳がんを悪化させたり、再発させる可能性があるからです。

一方で、ピルを飲むと乳がんのリスクが上がるでしょうか。

4f00407608ec317d80d09c8c11ae4156_s

OC・LEPガイドライン(日本産科婦人科学会、2015)や乳癌診療ガイドライン2018年版(日本乳癌学会、2019)では、同じような文献の紹介の元、結論づけています。

要点をまとめると、

・過去のエストロゲン、黄体ホルモンが含有されたピルでは、わずかながら乳がんが増える可能性があります。

・現在、超低用量と位置づけられている、ルナベル(フリウェル)ULD、ヤーズ、ジェミーナに含まれるエストロゲン(エチニルエストラジオール20㎍)の量では、乳がんを増やさない、むしろ減らす可能性があります。

・上記のデータは海外のもので、日本ではOCや特にLEP製剤の歴史が浅く、限られたデータが発表されていますが、乳がんは増えない、と結論づけています。

また比較的新しいデンマークのデータ(2017)では、「ピルやピル以外のホルモン避妊薬を含めて、現在使用している、と過去6カ月以内まで使用していた女性の乳癌の相対リスクは1.20」と、わずかながら増えることが示されました。さらにこのリスクは、「ホルモン避妊薬の使用期間が長くなるほど上昇して、使用期間が1年未満ではリスクは増えないが、10年を超えると1.38」になり、「使用期間が短い場合、中止後しばらくすると使用歴のない女性とリスクは同等になるが、使用期間が5年を超えると中止から5年以上経過しても相対リスク1.30と上昇」し、薬剤の種類別では、ノルエチステロン配合剤(ルナベル・フリウェル)はリスクを増やさず、デソゲストレル配合剤(マーベロン・ファボワール)、レボノルゲストレル配合剤(ジェミーナ・トリキュラー・ラベルフィーユ)の順に上昇し、レボノルゲストレル放出子宮内システム(ミレーナ)の乳癌の相対リスクは1.21でした。そして、7690人が避妊薬を1年間使用すると、乳癌患者が1人増加すると結論されています。日本人のデータではありませんが、参考になると思います(日本語訳はこちらのサイトを参考にさせていただきました)。


最初に書いたように、乳がん患者さんはピルを服用することはできませんが、WHOがOCに関する医学的適応基準を示したWHOMECによると、OCを服用する利点がリスクを上回るとき、ややこしい表現ですが、利点が大きいと判断されるときには、乳がん治療後5年以上再発がなければ慎重にOCを処方して良い、としており、日本の両学会もこれを踏襲しています。


なかなかはっきりとした表現をされていませんが、現在のOC/LEPでは、過度に乳がんを心配することはなく、今後日本人のデータが蓄積されて発表されるのが期待されます。

また、OC/LEPのリスクは低いとは言え、日本人の乳がんが増えている以上、OC/LEPの服用をきっかけに、年に1回の乳がん検診を是非受けて下さい。

初出:令和元年12月26日
補筆修正:令和2年1月4日