多のう胞性卵巣とは?

生理不順には、さまざまな原因がありますが、最も多い原因の一つが、「多のう胞性卵巣(多囊胞性卵巣症候群、PCO、PCOS)」です。


月経が来なかったり (無月経)、月経が不順であったり。

極端な方だと、半年から1年くらい、月経が来ない方もいらっしゃいます。

排卵しないために不正出血が続くこともあります。

多のう胞性卵巣、なんて言われたら、卵巣に何か病気が出来てしまったのではないか、悪い病気ではないか、と心配してしまうかもしれません。

この病名は、冒頭にあげた卵巣の超音波所見で分かるでしょうか、小さな、のう胞(袋状の部分)が卵巣にたくさんできてしまったような形から、そのような病名となったのです。

症状の主体は排卵障害ですが、妊娠成立した後でも、流産率が高いとされています。

また肥満がみられることがあります。

多のう胞性卵巣の診断

現在では超音波所見だけでは多嚢胞性卵巣の診断とはならず、ホルモン採血をして確定診断とします。

ホルモン検査の特徴は、

・LHが正常より高い、FSHは正常

・テストステロン(男性ホルモン)が高い

のいずれか、または両方がみられます。その他、

・AMH(抗ミュラー管ホルモン)が高い

のも特徴です。

欧米では診断基準に「肥満」も含まれますが、日本人の多のう胞性卵巣では肥満の方は決して多くありません。

LH、FSHはともに下垂体から分泌され、本来は卵巣を刺激して排卵を起こすホルモンです。多嚢胞性卵巣では、例えば、LHが15、FSHが5、のように、LH>FSHとなったバランスの悪さが、排卵を起こしにくくさせます。

テストステロンは男性ホルモンのため、女性の卵巣機能に反対の作用をもたらし、すなわち排卵しにくくなるのです。

テストステロンが厄介なのは、男化作用を持つことです。もともと男性ホルモンですから、女性の身体も男性らしくさせます。よくみられる症状が、ニキビ・肌荒れと多毛です。男化作用も排卵障害、月経不順と同じ様に、治療が可能です。

多のう胞性卵巣の治療法

若年者(まだ赤ちゃんを考えていない年代)とそろそろ赤ちゃんを考えている、いますぐに妊娠を考えている方では治療の考えが異なりますが、ともに肥満のある方には減量が勧められます。

若年の方の治療はこちらをご覧下さい

そろそろ赤ちゃんを考えている方、だいたい1年くらい前には、きちんと排卵できるよう、治療に取り組まなければなりません。

妊娠を希望している方の治療法

多嚢胞性卵巣、略してPCOSは、排卵障害を主体とする病気で、そのため月経不順、無月経、無排卵、不妊症など、様々な女性のトラブルの原因となります。

不妊治療では、いろいろな種類の医薬品が用いられますが、その代表はクロミッド(クロミフェンクエン酸塩)で、これまでPCOS以外の排卵障害を含めた不妊治療に、最も多く服用されています。

また特に肥満のある多のう胞性卵巣で有効とされている排卵誘発法に、レトロゾールがあります。

さて、クロミッドの効果は人それぞれで、効果が弱い方から、反対に卵巣が過剰に刺激されてしまう方もあります。どちらも困るのですが、効果の低い場合は、つまり排卵をしないこと。これでは妊娠することが出来ません。

当院では、
・男性ホルモン(テストステロン)が高い場合=アルダクトン
・インスリン抵抗性がみられる場合=メトフォルミンまたはグリスリン
・他に温経湯(うんけいとう)や柴苓湯(さいれいとう)という漢方薬
ビタミンD不足の方が多く、ビタミンDが低い方=ビタミンDサプリメント
などを併用する方法で、クロミッドの効果を高めようと工夫していますが、なかなか効果がみられないことがあります。

上記のようにクロミフェンが効かない状態を、「クロミフェン抵抗性」と呼びますが、PCOS患者さんにクロミフェンとコエンザイムQ10を併用効果がエジプトで発表されました。

この併用効果で改善されたのは、
・発育卵胞数の増加(高度生殖医療では有用です)
・子宮内膜が厚くなる(クロミフェンの副作用で内膜が薄くなることがあります)
・排卵率の上昇
・妊娠率の上昇
が報告されました。

また、PCOSでは肥満が合併することがあり、肥満のPCOSの方がクロミフェン抵抗性の強いことが多いですが、この併用法では肥満の有無にかかわらず効果がみられたそうです。

クロミフェン抵抗性の場合、クロミフェンの服用量を増やしますが、増やすと子宮内膜が薄くなってしまう副作用が出ることがあります。
またクロミフェンを増量しても排卵しない場合は、hMGとかFSHといった注射剤の排卵誘発剤が必要になりますが、コストや通院回数も増えてしまいます。
さらにPCOSの問題として、クロミフェンを増量したり注射剤を用いたり、と卵巣刺激を強めて行くと、ある一定の強さから過剰に反応する、卵巣過剰刺激症候群の発症リスクがあります。もちろん、多胎妊娠のリスクもです。

コエンザイムQ10

抗酸化作用を持つビタミン様の物質、コエンザイムQ10の併用は、誘発剤効果を高めることが期待でき、つまり弱い刺激でも排卵させることが出来るかも知れません。

当院で扱っているサプリメントでは、コエンザイムQ10は「ARTサポート」に50mg含まれています。コエンザイムQ10は脂肪燃焼効果もあるため、肥満の方には一石二鳥かも知れませんね。

グリスリン

グリスリン 産婦人科クリニックさくら サプリメント

グリスリンの原料はなんと舞茸です。舞茸に含まれた成分で、名前も似ている血糖を下げるホルモン「インスリン」と作用が似ています。

実際に内科の領域では、グリスリン摂取によって、血糖値が下がったり、体重が減少したり、効果が認められています。

婦人科では、特に「多嚢胞性卵巣(PCOS)」の方への有用性が認められています。
排卵障害のある多嚢胞性卵巣の方が用いると、排卵が出来るようになったり、排卵誘発剤を減量できる可能性があります。
この効果は当院で服用されている方でも実際に認められていますし、また当院では高度生殖医療で不良胚ばかり回収されていた患者さんで良好胚が得られるようになり、妊娠、出産に繋がっている方もいらっしゃいます。

初出:令和2年6月11日
補筆修正:令和2年6月17日、7月9日