若年女性の、多のう胞性卵巣や月経不順とは

月経が来ない(無月経)であったり、月経が不順であったり。

月経が来ないのを楽でいい、と思ってしまう若い方もいますが、いつ来るのか予定が立てにくい、妊娠したのではないかといつも心配、と思う方が多いです。

婦人科を受診し、血液検査や超音波検査で「多嚢(のう)胞性卵巣)」とか「PCO」「PCOS」と言われたことは無いでしょうか。

また、ホルモン検査は異常が無いものの、やはり月経は不順である。

治療法はどうしたらよいのでしょうか。

若年女性の、多のう胞性卵巣や月経不順の治療法は?

これらの女性の多くは、排卵ができていない、または排卵が毎月ではなく、たまに起こるだけ、という場合もあるため、妊娠を希望している場合は、排卵を起こす治療が必要ですが、まだ妊娠を考える前の世代、若年の皆さんの多のう胞性卵巣や月経不順に対する治療法を考えてみましょう。

PCOS・月経不順治療一覧

治療方法は大きく分けて4種類、他に漢方やサプリメントによる治療を行うこともあります。

Kaufmann(カウフマン)療法

Kaufmann(カウフマン)療法とは、本来の排卵、月経周期を擬似的に作ることにより、この治療を止めた時のリバウンド効果を期待します。
この場合のリバウンド効果、とは、それまで働きを停止していた下垂体が、治療を止めた後、治療していたときと同じようにホルモンを出さなければならない、と、正常に働くようになることです。体重が増える?とお問い合わせがありましたが、ダイエット後のリバウンドとは意味が違います。

理論的にはカウフマン療法中は排卵しない、つまり妊娠しないのですが、まれに排卵する機能が回復してきてカウフマン療法中に排卵して妊娠することがあります。妊娠を望んでいない方はきちんと避妊をしておいてください。

内服法

内服法は、月経(消退出血)の5日目からプレマリン(エストロゲン製剤)を1日2錠、21日間服用し、19日目(プレマリン開始の2週間後)からプロベラ(黄体ホルモン製剤)を1日2錠、7日間服用(プレマリンと併用)、同時に服用を終えると、数日後に出血があります。飲み忘れると不正出血があるので、注意が必要です。

注射法

注射法は、月経(消退出血)の10日目にペラニンデポー(エストロゲン製剤)を注射し、20日目にルテスデポー(エストロゲンと黄体ホルモンの合剤)を注射、ルテスデポーの注射の10日後に出血があります。この方法も、ルテスデポーの注射が遅くなると、不正出血がみられます。

妊娠を希望している方に行うカウフマン療法については、こちらもご覧ください

OC(低用量ピル)

OC(低用量ピル)は、避妊薬と同じです。他の方法では治療中に妊娠する可能性もあるため、避妊効果も期待したい場合はOCが適しています。月経痛が強い方、ニキビや多毛に悩んでらっしゃる方にも勧められます。

飲み忘れるとやはり不正出血がみられ、また避妊効果は弱まります。

OC服用中は定期的な出血が見られますが、OCは根本的に生理不順を治すものではないので、妊娠を希望される1年くらい前から、排卵誘発剤などの治療に切り替えます。

Holmstrom(ホルムストローム)療法

Holmstrom(ホルムストローム)療法は、排卵しないために分泌できていない黄体ホルモンを用いて、擬似的な排卵後(つまり月経前)の状態を一定期間作り、その後出血させる方法です。

他の方法に比べて簡単なため、学生の方たちなど、選択されています。

内服法

内服法は、ジドロゲステロン(デュファストン)を、出血から15日目(2週間後)から1日2回、10日間服用するもので、服用が終わると数日後に出血がみられます。他の内服法と同様、飲み忘れると不正出血がみられます。

注射法

注射法は二つあります。

 一つはデポー剤を使う方法で、この方がより自然の排卵に近い状態が作れます。出血から15日目(2週間後)にプロゲデポーを注射します。約10日後に出血がみられます。

 もう一つはプロゲステロンを注射する方法で、こちらは注射から約5日後に出血がみられます。

最後に、

クロミフェン療法

クロミフェンは、生殖医療でも用いられる治療で、積極的に排卵を起こす排卵誘発剤です。上記のいずれよりも最も根本的な治療で、治療後自然排卵が起こるのを期待します。ただ、治療中に排卵が起こるため、避妊を希望している方には向かない方法です。また内服中は効果をみるために基礎体温をつけて頂き、治療効果や副作用などのチェックに、毎月最低1回は受診が必要です。

しかし、自然排卵の癖をつけることができるため、妊娠したい1年くらい前を目途に、この治療法に切り替えます。

男性ホルモンに対する治療

もう一つ、表にはありませんが、多のう胞性卵巣で男性ホルモン(テストステロン)が高い場合、男性ホルモン作用を弱めるスピロノラクトン(アルダクトン)が有効な場合があります。

にきび・肌荒れ

男性ホルモン作用が弱まると、ニキビ・肌荒れや多毛、そして排卵障害が改善して月経が順調になることが期待されます。

OCにもニキビ・肌荒れ、多毛の治療効果があります。

副作用

カウフマン療法やピルは、エストロゲンを含んだ治療のため、エストロゲンに特有の副作用が起こることがあります。

最も有名なのは、稀にピルで起こる血栓症です。起こった場合には生命の危険や後遺症の可能性があるため、起こらないよう、また早期発見が必要です。

またカウフマン療法、ピルに加えて、ホルムストローム療法は黄体ホルモンが投与されます。

黄体ホルモンは安全性が高いですが、食欲が増したり、むくみやすくなり、その結果体重が増えてしまうこともあります。

副作用と思われる場合には、適切な対処を取ります。

治療期間の目安と目標

OCを除いて、どの治療法もおおむね6ヶ月ほどを目安に治療を行い、治療後にも症状が変わらなければ再度治療を行います。

このように、様々なホルモン治療があり、またそれぞれの長所短所があります。

治療の選択は、いつ頃、赤ちゃんを作るのか、という人生設計にも影響されます。

それぞれのメリットデメリットを考え、最も適した治療法を、お一人お一人に向き合って考えています。たのうほう

(初出:平成31年3月12日)
(補筆修正:令和元年7月10日)
(補筆修正:令和2年1月25日、2月17日、3月3日、25日、4月16日、5月11日、6月29日、7月6日)