風疹や麻疹、ムンプス(おたふく)、水痘(水ぼうそう)は、流産や赤ちゃんの病気の原因となるウィルス性疾患の中でもワクチンがあるもので、いずれも一度かかると生涯かからない、「終生免疫」を獲得する、とされています。
「子どもの頃にかかった」「ワクチンを打った」ので、大丈夫、自分はかからない、と思っていませんか?
それは、以下の理由から、再度確認する必要があります。
・感染やワクチン接種の記憶違い
・感染の際に確実な診断をされていない
・ウィルスの抗体価は低くなることがある
子どもの頃にかかった記憶、それは正しいでしょうか。ご両親の記憶は? 当時間違いなく診断された、本当でしょうか。
例えば風疹と麻疹、名前が似ていますが、これらは「はしか」と「三日ばしか」とも呼ばれています。どちらにしても似たような名前で記憶違いはないでしょうか。
自分では記憶にないから改めてお母さんに聞いてみた。「風疹かかった?」「うん、かかったよ」「麻疹じゃなかった?」「んー、麻疹だったかもね」「じゃあはしか? 三日ばしかではない?」「覚えてないよ!」とは、笑い話によく使われるやり取りです。
また、その時の診断は確実だったしょうか。血液検査でIgM抗体が上昇していたり、ウィルスの抗原をPCR検査などで確定はされていないのではないでしょうか。
そして、残念ながら免疫を表すウィルスに対する抗体は、年々低下してしまう可能性があります。
抗体が年齢を重ねるごとに低下する可能性があるのは、当院で発表したデータからも明らかで、特にムンプス(おたふく)は抗体が低下しやすいと考えられます。
中には上のお子さんを妊娠した時には抗体があったのに、次のお子さんを希望された数年後に、既に感染してしまうレベルまで低下していた方もいらっしゃいました。
過去の記憶に頼らず、医療機関で測定したデータを確認することが、流行期には重要です。現在抗体がなければ再感染するからです。
・妊娠を考えている女性とそのパートナーは、最新の抗体価を確認し、必要であればワクチン接種をしてから妊娠にのぞむことが大切です。
文責 櫻井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:平成31年2月13日
補筆修正:令和2年6月3日
補筆修正:令和4年9月22日