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麻しん患者さんの報告があります。〜妊娠前に調べておきたい4つのウィルス抗体、ワクチン接種〜

麻疹(はしか)

麻しんは妊婦さんがかかると流産や死産、肺炎の原因となり、妊婦死亡率が増加します。また感染者の死亡率は、特効薬がないため先進国でも1000人に1人(0.1%)とされ、死亡率の高い病気と言えます。感染後2〜10年経ってから亜急性硬化性全脳炎(SSPE)が発症する可能性もあり、感染予防をしなければなりません。

しかし、麻疹の感染は、空気感染と言って、コロナやインフルエンザなどの飛沫感染よりずっと感染力が強く、マスクや手洗いでは予防できません。予防にはご自身の免疫力=抗体と、抗体が弱い場合にはワクチンしかないのです。

昨年4月下旬に、海外から帰国した茨城県の方が、麻疹に感染していることが報告され、さらに、この方が利用した新幹線に乗り合わせた2名が、新たに麻疹と診断されたことが報じられ、さらに神奈川県、大阪府、兵庫県でも麻疹感染が報告されました。

2回のワクチン接種をおこなうことで感染を低下させることができますが、定期接種が2回行われたのは2000年度生まれ以降のため、妊活世代ではほとんど、1回しか接種していません。

妊娠している方や、妊活中の方は、ワクチンを接種したか罹ったことがあるか、はあまり意味がなく、抗体検査をいつ行って、結果はどうであったか、再度確認して下さい。


麻疹は途上国を中心に流行が常態化しており、日本からの旅行者や、日本への旅行者が麻疹を持ち込むことが知られています。今回もインドから帰国した方が感染していました。

麻疹患者さんに接触後、72時間以内に麻疹を含んだワクチンを接種すると発症が防げる可能性があります。(妊婦さんは麻疹のワクチン接種を受けることが出来ません)

麻疹は妊娠中に感染すると、

・妊婦さんの肺炎合併が非妊婦に比べて3倍の25%にのぼり、妊婦死亡率が3.5-4.8%になります。
(日本の妊産婦死亡率は、10万人中3.4人で、0.0034%、世界で最も低いレベルです、2013年)

・流産率31%、早産率24%、死産率9%

と言うデータがあります。


当院でもこれまで学会等で麻疹抗体の保有率などを報告してきましたが、今回の感染の流入を受けて、5月から再度、抗体検査を見直して勧めています。

妊娠を希望している患者さんと当院スタッフのうち

・これまで麻疹の抗体検査を受けていない方

・明らかな抗体陽性が確認できない方

・前回検査から低下した場合に抗体価が十分ではなくなってしまう可能性のある方

以上、5/29現在で34名の方に検査していただきました。結果が出た23名のうち、2名が低抗体価でした(8.7%)。

また8名は過去に当院で同じ麻疹抗体検査を行ったことがあり、その推移を見ると、

・平均して、1年に0.60くらい低下する。

・最も低下した方は、1年に2.14低下した。

以上のことから、過去1年以上前に麻疹抗体IgG(EIA)が6.0を下回っている方は、早めに抗体検査を受けることをお勧めしています。

日本では2015年3月に、WHOから「麻疹が排除された状態」と認定を受け、国内で発生する麻疹がなくなっています。

しかし、今回はインドでしたが東南アジア諸国などの麻疹流行地域をはじめ、抗体を持っていない状態で渡航して感染するケースが報告され、国内で同じ様に抗体のない方に感染をさせてしまい、大流行となる恐れがあります。

海外渡航前にも必要な抗体検査とワクチン接種を行うことをお勧めしますが、ではいったい、ワクチンを接種したら、どれくらいから効果が現れるのでしょうか。

このご質問、大変多く頂くのですが、明確な答えがありません。

唯一、麻しんワクチン(ビケンCAM、田辺三菱製薬)のインタビューフォームに、「接種して4週以降に採血を行い抗体測定を行なった結果、抗体陽転率は 98.6%」であるだけで、いつから陽性化するかは見つかりませんでした。

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