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更年期障害治療のご案内 〜ホルモン補充療法やプラセンタサプリメントなど〜

更年期障害の診断と治療の選択


前に述べたように、更年期障害の症状は千差万別、様々で、またどれくらい困った症状なのか、生活に支障を来しているか、病状の重篤さも異なります。

ましてや、その症状を治療によって何とかしたい、と思われる方も、この歳になれば、母や周りの女性も同じだったから、時間が経てば良くなるだろうから我慢しよう、と治療を希望しない方も少なくはありません。

 

あなたの困った症状、更年期障害かな?と思われたら、ます婦人科を受診しましょう。

更年期障害の検査として、

・問診

・ホルモン検査

・甲状腺機能検査

・SDS調査票

などがあります。

問診でも更年期障害かどうか、おおよそ診断がつく場合がありますが、まだ閉経に至っていない場合には、ホルモン検査を行うことがあります。

そして、更年期障害と似ている症状を示すのが甲状腺機能低下症やうつ病。

特に甲状腺の病気は女性に多く、甲状腺機能低下症やうつ病は、更年期障害の精神症状と似ているため、鑑別が必ず必要です。

甲状腺機能は、甲状腺のホルモンを検査し、うつ病はSDS調査票を用いて、うつ傾向を診断します。

いずれも異常があった場合には、専門の先生を紹介させて頂いています。

さて、更年期障害の診断となった場合には、血液検査と骨密度の検査をお勧めします。

血液検査には、貧血や肝機能の異常を見つけたり、脂質異常症(高脂血症)の診断を行います。

骨密度は、整形外科での検査と診断をお願いしています。かかりつけやお近くに整形外科がなければ、当院から紹介させて頂きます。

子宮頸がん・体がん、超音波検査、そして乳がん検診についてもチェックします。

乳がん検診はマンモグラフィーがお勧めで、近隣の乳腺外科を紹介しております。


そして、更年期障害を治療の対象となった場合に、どのような治療法を選択するかは、以下のメリットデメリットをふまえて考えていきます。

最も効果的で、また自覚されない他覚症状にも治療効果があるのは、やはりホルモン補充療法で、HRTと呼ばれています。

保険適応も認められていることより、治療費も比較的安価でありますが、副作用として冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)、脳卒中、血栓症、そして乳癌、卵巣癌の発生があります。

乳がんのリスクは、黄体ホルモンを併用する場合、2.08倍に、黄体ホルモンを併用しない場合には1.33倍、とされています(Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer, 2019)

このため後で述べる治療中の管理が必要ですし、ホルモン補充療法は1年ごとに継続するか検討、また5年を目途に中止を検討します。

一方でHRTを行った方が、HRT中止後も骨量が維持されるため、もっと先のことを考えると、むしろHRTは推奨されています。

中心となるエストロゲン製剤は基本的に、ル・エストロジェルを用いていますが、エストラーナテープやジュリナなどを処方することも出来ます。

手術で子宮を摘出された方を除いて、子宮体がんの前がん病変である子宮内膜増殖症と子宮体がん予防のため、黄体ホルモンを併用しなければなりません。一方で黄体ホルモンは乳がんのリスクとなり得るため、当院では最も乳がんリスクの低い、天然型黄体ホルモン「エフメノ®を採用しています。詳しくはリンク先をご覧下さい。

HRTを行う期間は、以下が目安です。

・子宮がある方 黄体ホルモンを補充するため5年

・子宮を摘出した方 黄体ホルモンを使わないので7年

・早発卵巣不全(早発閉経)の方 50歳まで

更年期障害に行うHRTは、黄体ホルモン使用の有無で乳がんのリスクが異なり、上記の年数以内では乳がんリスクが上がりません。一方、早発卵巣不全の場合には50歳を目安に治療を終了します。


HRTの次に推奨されるのが、エクオールサプリメント

これまで更年期の自覚症状だけでなく、他覚症状の改善も報告されています。

エクオールは尿検査により、産生能(腸内細菌で作ることが出来るか)を検査して、産生能が低い方にサプリメントを摂取して頂いています。

エクオール産生能が低いと乳がんの発生のリスクが高まるため、エクオールサプリメントの摂取により、乳がんリスクも低減できると考えられます。


他には漢方療法とプラセンタサプリメントで、いずれも自覚症状の改善効果はあり、プラセンタサプリメントは他覚症状の改善効果も期待されます。

日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が編集・刊行している「婦人科外来ガイドライン」には、ブドウ種子ポリフェノールがほてり症状を改善することが載っており、他覚症状の中で血圧や心拍数を改善させたり、浮腫を改善させる効果も期待できます。

さて、ホルモン補充療法(HRT)を選択した場合、以下の管理指針に基づき治療を行っていきます。

ホルモン補充療法の管理

HRTは禁忌症、治療に使えない場合があります。最初に問診でチェックします。

また過去6ヶ月以内に子宮頸がん、子宮体がん、また該当する血液検査を行っていない場合、採血を行います。

骨粗しょう症の検査も行っていない方がほとんどです。これを機にぜひ、検査してみましょう。

そして治療開始後、血液検査は半年ごとに、その他の検査は1年ごとに行い、治療継続するかどうかも、1年ごとに検討していきます。

HRT終了後も5年間、婦人科がん検診と乳がん検診を受けてください。

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:平成30年10月1日
補筆修正:平成31年1月17日
補筆修正:令和元年9月11日
補筆修正:令和元年12月11日
補筆修正:令和2年5月1日、8月15日、17日
補筆修正:令和3年1月3日
補筆修正:令和4年1月18日、9月5日、治療法の選択など修正しました
補筆修正:令和6年4月3日、乳がんのリスク、HRTが推奨される期間、HRT終了後の検診について追記しました。