中2生のお嬢さんが、まだ生理が来ていないのですが、と当院に通院中のお母さまから質問を頂きました。
また、もう○ヶ月も生理が来てないみたいなんですけど、まだ若いからいいですよね?という質問もよく頂きます。
女性は何歳から月経が始まり、何歳になっても始まらない場合、心配すべきでしょう。
また生理がどれくらい来ていない時に受診すべきでしょうか。
「原発性無月経」という定義があります。日本では満18歳になっても月経がない場合、原発性無月経とよばれます。
また、満15歳から18歳までに初潮があった場合、遅発初経とされます。
女子が月経を開始するのは、11歳から13歳が最も多く(日本産科婦人科学会誌、1997)、第二次性徴は乳房発育から始まります。この乳房発育が13歳になっても始まらない場合、または乳房発育が始まってから5年経っても月経がない場合、婦人科受診が勧められています(Fertil Steril、2008)。
つまり、
・中学生になっても乳房発育が始まらない
・15歳になっても生理が来ない
・乳房発育が始まって5年しても生理が来ない
のを、受診の目安としてはいかがでしょうか。
また一度月経が来た後で、月経が来ない状態を「続発性無月経」と呼びます。
初経から1、2年は、ほとんどが排卵を伴わない出血が起こりますが、初経後まもなく、でも3ヶ月無月経が続いたら、婦人科の受診を勧めます。特に若い世代では女性ホルモンであるエストロゲンの分泌がないことがあり、骨密度、骨の成長への影響が心配されます。
さて、産婦人科の診療がカバーする範囲は、何歳から何歳まででしょう。
厳密な決まりはありませんが、産婦人科クリニックさくらでは、若い患者さんは実に3歳くらいから、90歳代のおばあちゃままで、女性の人生の大部分で診療に当たっているのです。
実際に生理が来ない、無月経の相談は何科で行われているのが最も多いのか、厳密なデータは分かりませんが、もしかしたら小児科での相談も少なくないと思われます。
産婦人科では内診がある!と思われるかも知れませんが、婦人科診察である内診は、必要な時に限って行われます。
無月経の場合、その他の症状や第2次性徴の様子を問診して、例えば採血によるホルモン検査をしたり、実際にホルモン剤を使ったりします。お腹の痛みを感じる場合には婦人科診察を行った方がいいかも知れません。
婦人科診察では、お腹から超音波をあてたりすることもありますが、子宮や卵巣の異常が無いか診るためには性交経験のある方なら腟から診る経腟超音波検査を行い、性交経験がない方は同じ超音波をお尻から診る方法をとる方が、より詳細な診察をすることができます。
思春期や若いお嬢さんの無月経には、卵巣がまだ働いていないこと、子宮や腟に生まれつきの異常があること、の二つの原因に分かれます。
卵巣が働かないのはホルモンの状態を、生まれつきの異常はやはり診察が必要です。
どちらもご本人と親権者に説明をした上で行いますので、まずはいきなり内診!?とおそれずに、気軽に相談にいらして下さい。
横浜市では令和5年8月から中学3年生までの小児医療費助成が拡大し、これまでの500円の窓口負担がなくなりました。
中学生といえば、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の接種を開始しましょう。
もちろん、相談も併せて受けています。このワクチンは基本的には中学1年生で接種するワクチン、と位置付けられています。
もちろんそれ以降でも接種できますが、令和5年度より9価ワクチンが定期接種でき、14歳までに接種を開始すると、2回接種で済みます。
この世代の方たちが直面しているHPVワクチンについて、説明動画を作成しました。
最新の動画は、「子宮頸がんワクチン、打ってはいけない!?」とタイトルをつけました。このキーワードで当院のHPが検索されているためです。
もちろん打ってはいけない、のではなく、打っていただきたいワクチンです。
2本目はHPVワクチンが現在の様な積極的勧奨が再開された際に作成したものをアップデートしています。
最後はHPVワクチンに寄せられるご質問にお答えする動画も作成して公開しています。
大切なお嬢さんの将来のため、不安なこと、心配なことは何でも相談にお越し下さい。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:平成31年2月6日
補筆修正:令和元年8月7日
補筆修正:令和2年2月10日
補筆修正:令和3年6月21日、7月17日
補筆修正:令和4年1月15日、7月28日、10月6日、24日、11月5日、12月19日
補筆修正:令和5年1月18日、4月19日、7月28日、8月15日、9月2日、7日、11月11日
補筆修正:令和6年1月8日、2月2日、3月8日、9月24日