最新のお知らせ

「いつまで使うの?」〜体外受精、胚移植で使われる黄体ホルモン腟錠の質問〜

体外受精などの生殖補助医療では、胚移植の前から黄体ホルモンを腟錠で用います。

マイナートラブルを含めて、よくあるご質問にお答えします。

入れる時間は毎日同じでないといけない?

できるだけ毎日同じ時間に使用するのが理想ですが、数時間のずれであれば問題ないと考えています。

主治医の先生の指示に従ってください。

腟に入れるのが難しい、または不安です。

アプリケーター状の薬剤を使う、アプリケーターを使う、また横になってリラックスした状態で入れるなどの工夫があります。

不安な場合は治療施設に相談してください。

性交渉の時はどうしたらよいですか?

当院では胚移植までの性交渉については特に問題ないと考えています。腟錠が出てしまう可能性も考え、性交正午に腟錠を入れましょう。

胚移植から着床期、妊娠判定までは、性交渉のない方が着床率が高くなります。詳しくはこちらの「着床期の注意点」を参考にして下さい。

お薬が出てしまった時は?

入れたはずのゲルが出てしまった。薬を追加すべき?

明確な規定はないのですが、ワンクリノンのインタビューフォームによると、血液中のワンクリノンに含まれるプロゲステロンの濃度は、初めて使った日には12時間後、連日使っている場合は6時間後に、遅くともピークに達します。

よって、これ以降に出てしまったのであれば、プロゲステロンは十分吸収されており、お薬の基剤が出て来ていると考えて良いと思いますが、反対にこれ以前であれば、念の為、もう1本使っておいた方が良いでしょう。

一方でウトロゲスタンの場合は、1カプセル追加して使いますが、次の使用時間が近い場合には追加しなくても良い、とされています。

いつまで使うの?

胚移植の前、医師から指示された日から使い始めます。

胚移植後も着床を助けるため、継続します。

当院の場合、妊娠判定は血液検査でHCGというホルモンを測定して行います。

HCGが陽性の場合、妊娠が成立した、と言うことです。その後は妊娠を維持する、つまり流産しにくくする目的で継続します。医療機関によって異なりますが、妊娠10週から12週になるまで継続します。

残念ながらHCGが低い値であったり、陰性であった場合にはその日から黄体ホルモン腟錠は使用しません。

カスが出て困る、かゆい

腟錠に限らず、内服薬や外用剤も、その中の薬効成分(この場合黄体ホルモン)はほんのわずかで、薬剤のほとんどが、基材とよばれる成分です。

基材は薬効成分を効率よく治療部位に届けるため、なくてはなりません。

黄体ホルモン腟錠の中でも、「ワンクリノン腟用ゲル®︎」は、ゼリー状の基材を使用しており、腟内に効率よく広がり、黄体ホルモンを吸収しやすくしていますが、一方でこのゼリーがカスのように腟内にたまり、不快感であったり、痒みを感じることもあります。

このような症状があっても、身体や治療成績への悪影響はありませんが、不快であれば来院時に腟内を洗浄することができます。遠慮なく相談してください。

また、現在ワンクリノンの出荷制限により、「ウトロゲスタン腟用カプセル®︎」を処方していますが、ウトロゲスタンはワンクリノンとは異なり、少し油っぽいお薬で、またカプセルが溶けづらく、中身が吸収されたカプセルが腟から出てくることがありますが、心配しないでください。

その他、よくあるご質問(FAQ)

なぜ腟から入れるのですか? 飲み薬ではだめですか?

黄体ホルモン腟錠が登場するまでは、黄体ホルモンは内服薬や注射剤、またhCG製剤を用いた黄体賦活化法が行われてきました。

黄体ホルモンは腟から投与すると、子宮に直接届く「子宮ファーストパス効果」が期待されます。局所的に高い効果が得られ、妊娠率の向上が見られる治療法です。

現在、胚移植で黄体ホルモン製剤を使用した方が妊娠率、出産率が向上することに異論はありませんが、現状では経口薬と腟錠の治療成績にはまだ見解が一致していない点もあります。しかし腟錠が経口薬に劣る、というデータは無く、新鮮胚移植では同等(Lotus I/II試験, BJOG, 2018)、融解胚移植では腟錠が優れているとされています(Bjuresten K. et al, 2011)。

また、腟錠は内服薬に比べて、肝臓などへの悪影響が少なく、寄り安全な治療と考えられます。

当院で行なっている保険診療での生殖補助医療の実際の方法を、動画で解説しています。

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:令和元年12月18日
補筆修正:令和2年3月10日、12月17日
補筆修正:令和4年8月26日、12月2日
補筆修正:令和5年4月23日
補筆修正:令和7年7月24日、25日、8月24日