体外受精など、生殖補助医療(高度生殖医療)を行っている方で、治療周期の性交渉はどうしたらよいでしょうか。
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生殖補助医療を行なっている間、性交渉はどうしたらよい?
タイミング法を行っている場合でも、排卵期にしか性交渉をしなくて、さらに、ご主人がマスターベーションをしない場合、精液所見が悪いことが多いです。
逆に言うと、射精する回数が多いほど、良い精液の状態が保たれます。
精子は絶えず作られているからです。
つまり、赤ちゃんを考えているなら、排卵期はもちろんですが、性交渉は多くても差し支えない、と言うことです。
採卵の前の周期では?
ロング法の前にはプレトリートメント。自然周期(自然に排卵するのに合わせて行う)、また注射と内服薬によるエストロゲン・プロゲスチン療法を行う方法ですが、プレトリートメントからは、避妊をきちんと行なって下さい。
これはロング法で排卵誘発剤を使う際に、実は妊娠していた、という場合があるからです。
採卵する周期では?
採卵する周期では、月経期から開始する卵巣刺激を行う時期と、採卵が近くなってきた時期、採卵後で違ってきます。
卵巣刺激を始めたころは?
採卵する周期に入って、排卵誘発剤を用いて卵巣刺激が始まります。卵巣刺激により卵胞がたくさん出来てくるとお腹が張った症状が出ることがあり、このころからは腹痛の原因となるため、性交渉は控えた方が良いです。
採卵が近づいてきたころは?
採卵前、つまり採卵の予定が3日後くらいになったら、性交渉、マスターベーションを控えた方が良いでしょう。それは、採卵日に採って頂く精子の数が減ってしまわないようにするためです。
顕微授精を予定している場合でも、精子はたくさんあった方が治療成績が良くなります。
採卵の後は?
採卵の後の性交渉ですが、採卵では卵巣に針を刺しているので、採卵当日から性交渉は控え、採卵後に来院した時の診察で異常が無いことを確かめてからにしましょう。
胚移植の周期では?
自然周期で融解胚移植を行う場合、排卵日を特定してから胚移植の日程が決まります。
つまり、排卵日は何日です、と伝えるわけです。
これまでタイミング法などで妊娠しなかったから、とか、少しでも確率を高めるため、と、排卵期に性交渉をすることも考えるでしょう。
この場合、排卵する卵と、胚移植する受精卵のいずれも着床、妊娠する可能性があり、二卵性の双胎となることがあります。双胎妊娠はリスクが高くなってしまうため、自然排卵を起こす胚移植周期では、排卵期の性交渉は控えてください。
これに対して、ホルモン補充周期で行う場合、基本的に排卵がないのですが、やはり排卵をすることもありますので、卵胞が発育している場合には性交渉を控えてください。
また、胚移植後の性交渉ですが、着床期の性交渉が妊娠率を低下させる、と言う報告があります。分かっていない以上は、妊娠判定まで避けた方が無難かも知れません。
当院の生殖補助医療の治療成績と新しい治療戦略を最新のデータにアップデートし、動画で解説しています。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:平成30年10月4日
補筆修正:令和2年1月19日
補筆修正:令和2年2月5日、16日、5月6日、15日、30日、7月20日、10月13日
補筆修正:令和4年8月16日
補筆修正:令和5年3月4日、12月9日
補筆修正:令和6年8月29日