*一部の生殖医療機関ではDHEAの服用を推奨していない場合があり、当院にお越しになっても処方をお断りしています。詳しくはこちらをご覧ください。
DHEA、Dehydroepiandrosterone(デヒドロエピアンドロステロン)は、ステロイドホルモンであるテストステロンおよびエストラジオールの前駆体で、早発卵巣機能不全(早発閉経)や卵巣刺激におけるPoor Responderと言われる卵巣機能不全に効果が期待されています。
DHEAは海外ではサプリメントとして市販されていますが、日本では「医薬品」の指定を受けているため、国内ではサプリメント(食品)として販売することは法律で認められていません。しかし、矛盾するようですが医薬品として国内で製造されていないのが現状です。
俗に「若返りのホルモン」「ダイエットによい」「うつによい」「筋肉がつく」「免疫によい」などと言われており、全身性エリテマトーデスなどいくつかの疾患に対して有効性を示した報告があります。
安全性については、妊娠中・授乳中の摂取は禁止されており、また長期間あるいは大量の摂取はホルモン感受性の乳がんのリスクを高める危険性が示唆されていますが、明らかな臨床データがあるのではなく、理論的に可能性があるため注意が必要、と言う意味です。
またDHEAは蛋白同化ステロイド(筋肉増強剤)とされており、ドーピング検査で陽性となるため、アスリートは注意が必要です。
またDHEAを含む海外のサプリメント製品中には、表示とは異なりDHEAをほとんど含まないものが存在しているとの報告があり注意が必要です。米国食品医薬品局(FDA、日本の厚労省に相当)からの医学論文には「DHEA含有の45商品を調査したところ、表示されている量(○○mg含有)の、平均91.1%の量しか含有されておらず、その範囲は0%のものから101.2%に分布」していたそうです。
それでは次に、いくつか産婦人科に関係する臨床データをご紹介しましょう。
・ 勃起不全(ED)に対して有効性を示唆した報告(同様の報告も)があり、DHEAを24週間(6ヶ月)摂取したところ、勃起不全、機能、性欲、満足感が改善したとのことです。
・ 更年期障害に対しても、1日25mgの摂取で、ほてり、心理的症状などが改善したという報告には、各種ホルモン値が改善したにもかかわらず、更年期障害に対するホルモン補充療法の最大の副作用の一つである子宮体がんに関して、DHEAでは「子宮内膜が厚くならない」と体がんの発生に否定的なデータが示されています。
・ その他、
「短期間、適切に摂取すれば安全性が示唆されている」「推奨量を経口摂取した場合の副作用に関する報告は少なかった」
産婦人科クリニックさくらで見られた副作用のほとんどは、ニキビ、肌荒れで、10%に満たない患者さんで見られます。
他には、倦怠感や鼻づまり、頭痛、稀に頻脈や不整脈、動悸、不眠、興奮なども報告されているそうで、糖尿病や脂質異常症(高コレステロール血症、高脂血症)、甲状腺異常、その他の内分泌異常の人は注意して使用する必要があるとのことです。
「長期間の摂取または大量摂取は、前立腺がん、乳がんなどホルモン感受性のがんのリスクが高まる」危険性あります。特にエストロゲン受容体陽性の乳がん患者さんでは、服用は避けるべきといえます。
他のホルモン療法と同様、血液凝固異常や肝臓障害のリスクが高まる可能性があります。よって心拍異常や血液凝固亢進の既往歴のある人は、使用を避けたほうがよいようです。
・妊娠中、授乳中の摂取は危険性が示唆されており、妊娠成立後は直ちに中止すべきでしょう。小児にも推奨されず、10代では必要がないとされています。
一日量で200mg以上経口摂取すると、にきび、脱毛、変声、インスリン耐性、月経周期の変化、肝機能障害、腹痛、高血圧などの副作用が現れやすくなるとされています。
医薬品等との相互作用
ステロイド薬、ホルモン薬、インスリンなど併用に注意を要する医薬品は数多く知られています。
総合評価として、一般的な服用量では安全性が高く、一部の疾患や内服薬で注意が必要、と考えられます。
主な注意が必要な病気をまとめると
・ 糖尿病
・ 脂質異常症(高コレステロール血症、高脂血症)
・ 甲状腺異常、その他の内分泌異常
・ 前立腺がん、乳がん、子宮体がん
・ 心疾患
・ 血液凝固異常
・ 肝機能障害
・ 高血圧
海外ではサプリメントとして販売されていますが、国内では医薬品の指定を受けているため、医師の指導の下に服用することが勧められます。
産婦人科クリニックさくらでも、米国から輸入したDHEAサプリメントの処方を行っています。
価格は4,400円(税込)で、1日2カプセル服用して1.5ヶ月分です。
令和6年8月1日、昨年、一昨年に引き続き為替変動と輸送コスト上昇に伴い、価格変更いたしました。大変申し訳ありませんが、ご了承ください。
次のページではいよいよ、卵巣機能、不妊治療に対する効果について解説します。