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「毎月右左、交代で排卵しますよね?」 ~排卵に関するいくつかの誤解~

「排卵は左右の卵巣から交互に起こる」
「今月右だったから、来月は左だな」
「先月、左の排卵痛だったのに、今月も左に排卵痛、私の右の卵巣はどうなっちゃたの?」
「私の排卵、いつも左(右)なんですけど」「片方の卵巣には卵胞が育たない理由は?」
「私は右の卵巣を失い左の卵巣しかないので、排卵は2ヶ月に1回ですね」

排卵に関する誤解シリーズ、これまでの記事の中で最も多くの方からのレスポンスを頂戴しております。

さて、一体いつ、誰が排卵は交代で起こる、といったのでしょうか。
もしかしたら医学書や産婦人科の成書(医師の教科書)のどこかにも書いてあるのかもしれません。

ネットや婦人科を取り扱う雑誌、はては不妊治療の特集や雑誌にも普通に書いてあるでしょう。

なぜ誰もこれを否定しないのでしょうか。

排卵が起こる機序ですが、

数万から数百万の原始卵胞の中で、黄体期(高温期)に次の周期に排卵する「候補生」が決められます。この数、20から30個と言われています。

さらに月経期に至り、下垂体からのFSH(卵胞を育てるホルモン)分泌に反応するする卵胞(卵子が入っている袋で、卵巣の表面に出来ます)の中でもおそらく最も優れた卵胞が一つ育ち、主席卵胞と呼ばれるのです。

排卵は、自然周期でも月に一つではないことがあります。多くはないのですが、2つ排卵することも。3つはほとんどないでしょう。さらに排卵誘発剤を用いると複数の卵胞が発育、排卵にいたりますが、この2つ目以降の卵胞は、上にあげた「候補生」の、自然周期では本来排卵しない2番目以降の卵胞です。

つまり、「候補生」がランダムに左右の卵巣から決められ、さらにその中からランダムに主席卵胞が選択されるため、排卵する卵胞は右、左と限られず、ましてや交代性に起こるなんてありえない現象なのです。
先月も今月も、こっちだけ排卵する、と言うことは全く不思議ではありません。

%e5%8d%b5%e8%83%9eus生殖医療(不妊治療)で通院されている方は、この現象は身をもって体験されているでしょうから、よく理解していただけると思います。

ちなみに片方の卵巣を摘出されたあと、残った一つの卵巣は、毎周期「候補生」を作り、その中から選ばれた一つの卵胞が、毎月排卵しますので、「片方しかないから2ヶ月に1回」にはなりません。

また、最近では右側の卵巣の方が妊娠しやすい、良い卵子が得られやすい、というデータもあるようですが、絶対的ことではなく、左からの卵子で妊娠するのも普通にあり得ることです。

いずれにしろ、左右いずれの卵巣からでも、排卵することが、妊娠には大切なのです。

今日いらした患者さんも「先生、私いつも右で排卵、て言われるんですが」
院長「はい」
患者さん「先生は左右、どちらでもいいんですか」
院長「はい、早く妊娠して頂けたら、左右はこだわりませんよ」
毎日のように繰り返されるやり取りなんです。

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

(補筆修正:2016年12月17日)
(補筆修正:2017年11月26日)
(補筆修正:2020年1月16日、2月17日、3月4日、19日、22日、7月19日、8月29日)
(補筆修正:令和3年2月5日)
(補筆修正:令和4年4月15日)