ミレーナは挿入が難しい場合もあります。出産経験、特に経腟分娩をされていない方(未産婦)には第一選択とはしません。他に良い方法があればそちらを優先します。経腟分娩されていない方は、子宮の出口=頸管が狭く、頸管を広げてから挿入しなければならないこともありますし、それに伴う痛みがあったり、挿入できないと判断することもあります。
子宮筋腫などで頸管や内腔が曲がっていたりする場合も挿入が難しいです。
月経は明らかに減ることが多いですが、不正出血が長引いたり、月経不順となることも多く、20%の方は無月経となります。
不正出血がみられたり月経不順となっても、少量の出血のため、これまでの出血量や痛みから解放された、と、ほとんどの方の評価は高いです。
多くの場合、排卵障害となるため、排卵できなかった卵胞が少し大きくなって残り、卵巣が腫れたような状態になりますが、この場合は必ず改善して卵巣は元の大きさに戻ります。
また異物を子宮に留めておくため、違和感が強い場合もあるかと思ったのですが、違和感が原因でミレーナを抜去する方は今のところほとんどいません。
トラブルとしては、子宮腺筋症や子宮筋腫で子宮が大きい方の中に、月経時に取れてしまう、脱落例があります。もともとこう言う方こそミレーナの効果を期待するところですが、病気が進行しすぎた場合には適さなくなってしまうので、他の方法を考慮します。
その他の問題点として、妊娠、感染、子宮穿孔があります。
もともとは避妊用の子宮内リングで、避妊効果も高いのですが、5年間で0.5%、つまり1年で1,000人に一人、妊娠してしまうデータがあります。
上にも書いたように、無月経になる方も少なくないので、妊娠に気づくのが遅れることがあります。
子宮に異物を挿入するため、腟内の細菌や、特にSTIであるクラミジアや淋菌の感染を拡げることがあり、挿入前か挿入時に感染がないことを確認しておきます。
感染は挿入してから20日以内と、抜去しなければならない5年を過ぎると増えるとされています。
なお、過去3ヵ月以内に再発性のヘルペスウイルス感染を除く性感染症に罹った場合には挿入できません。
子宮穿孔とは、子宮に入れたミレーナが子宮内に留まらず、子宮筋層に入り込んでしまう状態で、0.2%くらい起こりえます。出産後、授乳中では注意します。
月経量の多い女性が外出や旅行する時に持って歩く生理用品の量を、女性の婦人科医が紹介してくれたことがあります。婦人科医であっても私も含め初めて目にした、男性にとっては想像を絶する荷物の量でした。
また、日本のような地震・水害大国ではいつどこで被災し避難生活を送ることになるか分かりません。
産婦人科の女性医師の中には、妊娠を考えていないならミレーナかピルを飲んだら良い、と仰る先生もいらっしゃいます。被災地で入手困難となる物資に、生理用品はいつも挙げられます。
被災地でたくさんの出血に見舞われた場合を想像し、避難所で生理が始まったらどうしますか?と患者さんにお話しすることもあります。
患者さんの生の声を紹介したく、この記事を書きました。
また詳細なデータや当院の治療経験なども含めて紹介したいと思います。入れるの怖い
子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症の4つの薬物療法について、こちらもご覧下さい。
参考文献:産婦人科診療ガイドラインー婦人科外来編2020(日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会、2020)
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:平成28年12月15日
補筆修正:令和2年3月26日、7月3日、27日、10月3日、11月9日
補筆修正:令和3年9月24日
補筆修正:令和4年1月15日
補筆修正:令和5年9月21日