『8年越しの花嫁』などの映画の題材にもなった抗NMDA受容体抗体脳炎。
ややこしい名前だし、脳炎ですが、婦人科に関係する病気なのです。
卵巣にできる卵巣腫瘍の中で、悪性が卵巣がん、良性が卵巣のう腫です。
卵巣腫瘍の中で最も多いとされる、良性の卵巣皮様嚢(のう)腫(奇形腫)が、この脳炎患者さんに最も多く合併するのです。
この脳炎はまれな病気で、皮様嚢腫があるからと言って発症するわけではありませんが、脳炎患者さんの40〜60%に皮様嚢腫が合併するそうです。
脳炎を起こす場合、皮様嚢腫は7cm以上が多いそうですが、それ以下の小さな皮様嚢腫でも起こることが報告されています。
その他、卵巣皮様嚢腫は、最も多いトラブルが「茎捻転」で、嚢腫が大きくなると、ねじれて卵巣自体の血行が途絶え、痛み、また、卵巣が壊死してしまうことがあります。
皮様嚢腫は年齢を問わずできる腫瘍ですが、年齢が高くなるとまれですが悪性転化(がん化)することもあります。
小さな卵巣嚢腫では余り心配はいりませんが、だいたい5cm位を越えてきた場合、手術の適応となります。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:平成31年3月20日
補筆修正:令和2年4月24日
補筆修正:令和3年3月24日
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