最新のお知らせ

帯状疱疹の予防接種「シングリックス」〜新しい知見が発表されました〜

横浜市でも7/1から、帯状疱疹ワクチンの定期接種が開始されています。

対象は65歳になる方から5歳刻みの方たちなどです。

水ぼうそう=水痘、の感染後、原因となったVZVウイルスが、体内の神経節に潜み、やがて免疫力の低下、抗体価の低下とともに帯状疱疹を発症する可能性があり、50歳以降で見られることが多いため、定期接種年齢を早めて欲しいとの意見もありますし、最近では20〜40代でも多くみられているとのことです。

この帯状疱疹を予防するワクチン、特に「シングリックス」に認知症リスクや心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)を低減させる知見が発表されていますので、最後に紹介いたします。

帯状疱疹は、典型的には肋間神経節沿いに、つまり胸から脇腹に強い痛みを伴う発疹が出るもので、80歳までに3人に1人が発症するとされています。また20%以上の方に、帯状疱疹後神経痛(PHN)を残します。さらに顔面に発症すると眼の合併症を来して、ひどい場合には失明したり、他にも髄膜炎、脳梗塞、難聴など、様々です。

最近でも有名なアナウンサーの方が視力低下を来したと報じられました。

帯状疱疹のワクチンには、

・水痘帯状疱疹ワクチン(生ワクチン、当院では妊娠前に推奨しています)

・帯状疱疹ワクチン(シングリックス®︎、不活化ワクチン、50歳以上に用います)

があります。


シングリックスの特徴は、

・50歳以上に接種

・2回の接種が必要(2回目は2ヶ月後の同日、遅くとも6ヶ月以内に)

です。6月より対象が拡大して18歳以上の免疫抑制患者さんにも使える様になりました(この場合は1〜2か月後に2回目接種)。

ワクチン接種後はアナフィラキシーショックや迷走神経反射がないか観察するために、院内に30分、留まっていただきますので、お時間に余裕を持って来院して下さい。

メリットは、

・帯状疱疹の予防効果が高く、わずかに発症してしまった場合でも、上記のPHNが皆無とされています。

・生ワクチンよりも効果が高く、効果が持続し、接種後10年後でも十分な抗体が残っています。

デメリットは、コストと副反応です。

当院では1回の接種が23,100円(税込)です。自治体によっては助成される場合があり、横浜市では1回10,000円(税込)の自己負担で受けることが出来ます。

また副反応ですが、新たに頻度が発表されました。最も多いのは接種部位の痛み(79.1%)や発赤(37.4%)で、腫れ(24.2%)、と比較的強い倦怠感(疲労感34.6%)や筋肉痛(36.9%)が見られます。他、胃腸症状が12.0%、頭痛28.3%などでした。当院のスタッフでは副反応は半数くらいに見られました。院長の私は、初回は皆無、でしたが2回目は2日後までだるさ、発熱、筋肉痛が波状に現れ、散髪しながら熟睡していました。。

よって、当日翌日、できれば2日後まで予定がない日程を選択すると良いと思います。

コロナワクチンをはじめ他のワクチンと同時接種も可能ですし、接種間隔を空ける必要もありません


シングリックスの予約は、Web予約が便利です。

「予防接種(各種ワクチン)」から、「帯状疱疹ワクチン(シングリックス」を選択し、日付の選択後に設問にお答えください。

製薬会社が公表している患者さん向けのガイドはこちらをご覧ください。

https://jp.gsk.com/media/6195/shingrix-guide_202102.pdf

*帯状疱疹ワクチンに関する新しい知見

最近になって帯状疱疹ワクチンが認知症のリスクを低減させるなど、新しい知見が発表されています。

主な結果は、

・シングリックス接種者で認知症リスクが3.5%(Eyting M et al. 2025)~23%減少(GSK 2024)。

・認知症を発症が平均164日(5.5ヶ月)遅れた(Taquet M et al. 2024)。

・特に女性で効果が強く現れ、認知症発症までの期間が22%延長した。

というもので、これはシングリックスに含まれるAS-01というアジュバントの、免疫活性がウイルスの神経炎症を抑制することで、脳を保護する効果がある(Taquet M et al. 2025)、と考えられています。

また50歳以上の接種者で、心血管イベントのリスクを16-18%低下させたとのメタ解析の報告(ESC, 2025)があります。

こう聞くと、接種後のアジュバントによるだるさ、発熱、痛みなど、あまり気にならなくなりますね。

初出:令和5年3月23日
補筆修正:令和5年5月1日、7月10日、8月31日
補筆修正:令和6年10月2日
補筆修正:令和7年6月26日、8月17日、10月1日、新しい知見についてさらに追記しました。