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GSM 〜閉経関連泌尿生殖器症候群〜 とは?

GSM=「閉経関連泌尿生殖器症候群」は、近年、疾患とされた比較的新しい病気ですが、その病態自体は全く新しいものではなく、かねてより閉経前後の女性を悩ませて来た諸症状です。

閉経関連、、と言う病名ではありますが、45歳以降問題となることが多いです。

しかし、女性ホルモンの代表と言えるエストロゲンが低下する、出産後、授乳中、乳がん治療、子宮筋腫や子宮内膜症などの偽閉経療法などのホルモン治療の間にもみられます。

GSMは、

・性器症状

・性交症状

・尿路症状

の3つが主な症状です。

エストロゲンが減少すると腟は含まれる水分が減少するために潤いを失い、コラーゲン繊維が減少するため、腟の粘膜の形態と分泌が悪くなり、性交痛の原因となります。また腟を正常に保つ乳酸桿菌(ラクトバチラス)がいなくなり、無菌の状態か、他の雑菌類が増えやすくなります。

 

それぞれ、

性器症状は、腟からの不正出血、腟・外陰部の乾燥感、痛み、 かゆみ、灼熱感、におい、ゆるみなど

性交症状は、性交痛、 潤いの減少、性感の減弱、性交後出血など

尿路症状は、排尿障害、頻尿・頻尿感、尿失禁、膀胱炎を繰り返しやすい、など

の症状が見られます。

日本のGSMの権威である太田博明先生の論文(Ohta et al., 2020)から作図いたしました。

40代から90歳までの日本人女性を対象とした調査で、10,000人ものデータが集積されています。これまで主に海外のデータをもとに議論されていたので、本邦の報告はとても重要だと思います。

これによりますと、

・いずれかの症状を訴えた女性は、半数近くの44.9%に上り、女性のヘルスケアの観点からも看過できない問題である

・尿路症状や性交症状は、性器症状よりも頻度が高い

と言う実態が浮かび上がって来ました。尿もれの悩みが最も多い、と言う結果にうなずかれる方も少なくないと思います。


さて、それぞれの症状・病態が一つに限らず複数みられたり、それぞれが原因と結果になっており、例えば、外陰部痛や違和感など性器症状があると頻尿感などの尿路症状が増えると報告(二宮ら、2020)されたり、とても複雑です。また諸症状は進行性で、だんだんと悪化してしまいます。

治療法は、

エストロゲンの腟錠や内服剤、またはホルモン補充療法を行いますが、もともと血流が減少してしまった腟への効果は限定的である可能性があります。

性交痛にはゼリー状の潤滑剤が効果的ともされていますが、根本的な治療法ではないため長期的な解決策になりにくく、かえって潤滑剤の成分による刺激が加わることも考えられます。

ホルモン療法の効果が乏しい場合や、再発、再燃を繰り返す場合には、レーザー治療も勧められます。

ホルモン治療もレーザー治療も、いずれも腟粘膜を改善します。

腟粘膜の改善は、腟内にラクトバチラスを再度定着させます。特にレーザー治療ではコラーゲン繊維が増えることにより、効果が高く、長く続く傾向があります。

ウィメンズヘルスケアに力を入れている当院でも、様々な治療の研修を重ねており、インティマレーザーを導入し治療を開始しました。特に尿失禁(尿漏れ)への効果に喜びの声を頂いています。年齢が若いほど、効果が高く、回数も少なくて済む傾向があります。

初出:令和5年4月7日
補筆修正:令和5年4月26日、5月9日、11日、12月5日
補筆修正:令和6年1月27日、2月8日、尿もれの効果を追記しました。