2007年11月に書いた子宮内膜症不妊との関係に関して記事を再アップします。

不妊症の原因の一つに子宮内膜症があります。
内膜症があってもすぐに妊娠される方もあり、内膜症は絶対不妊の因子ではなく、相対的不妊因子です。
内膜症の存在が妊娠しにくくさせる、妊娠率を低下させる、と言う意味です。

内膜症の状態も腹膜上に内膜症病変が見られるだけの軽度のものから、子宮後面に直腸が強固に癒着する重症(ダグラス窩閉鎖・ダグラス窩癒着)のものまで様々です。

ではなぜ内膜症が不妊因子になるのでしょうか。これには3つの理由があります。

・癒着

・卵質の低下

・免疫学的要素

まず第一に内膜症が引き起こす癒着です。

特に卵巣、卵管の癒着が原因として大きいです。卵巣・卵管の癒着により、排卵された卵子が、卵管采に取り込まれない、いわゆる「Pick Up障害」となります。上に挙げたダグラス窩癒着があっても、卵巣・卵管の癒着が無い場合、妊娠率はあまり低下しません。

次に卵巣チョコレートのう胞でみられるのが、卵の「質の低下」です。これは体外受精で採卵された卵子を観察することで明らかになってきましたが、子宮内膜症は炎症性疾患で、卵巣チョコレートのう胞の存在が、卵巣に慢性炎症を起こし、正常卵巣への悪影響があることが知られています。

特に手術後に卵巣機能が低下します。AMHは一般的に低下し、中には著しく低下する方もいらっしゃいます。
一方で卵巣チョコレートのう胞の手術後すぐに妊娠出来る方もあり、手術の適応は、かつてよりも慎重に考えられるようになってきました。

最後が内膜症病変そのものの存在です。
内膜症患者さんの手術のときに、お腹に腹水が貯まっていることが良く見られます。この腹水、分析すると「サイトカイン」と言う物質が、内膜症患者さんでは高い濃度で検出されます。サイトカインとは、炎症が起こったときに産生されるたんぱく質で、正常の細胞、つまり卵子にも障害をもたらします。

排卵された卵子は卵胞から飛び出し、卵管采に取り込まれるまでの間、僅かな時間ですが、腹腔内に存在します。つまりここで腹水中のサイトカインにさらされることが予想されます。
軽度の内膜症では腹膜病変のみが見られる、と書きましたが、この病変からもサイトカインが産生されるとすれば、軽症の内膜症でも不妊の原因になる可能性があります。

その他、特に進行した子宮内膜症では、性交痛や排便痛、慢性骨盤痛が見られることがあります。
性交痛は、腟の奥、子宮頸部への刺激がとても痛いことが多く、内膜症患者さんでは性交そのものが苦手になり、その結果性交回数が少なくなることも妊娠しにくい原因とされています。

子宮内膜症は、病変が多彩で、また進行度がまちまちです。卵巣機能低下の程度も異なり、一概に不妊治療はこのように行う、と言えず、お一人お一人の状態や価値観に合わせて治療法を提示していきます。