これまでお伝えしてきた黄体ホルモン製剤各種の不足ですが、まもなく注射製剤の「プロゲステロン筋注」の製造が中止となり、今後使用できなくなります。
これまでも「デュファストン」の供給などが不足しており、当院の近隣の薬局をはじめ、全国的に入手困難な状況となっています。
その影響もあり、その他の黄体ホルモン製剤「プロベラ/ヒスロン」「ノアルテン」も、相次いで不足していることが発表されていますが、プロベラ/ヒスロンのジェネリック薬「メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(長いのでMPAと略します)」の出荷制限は解除されています。
デュファストンは、黄体機能不全や続発性無月経、ホルムストローム療法、子宮内膜症治療や月経困難症の治療としてのPOP、また更年期障害のホルモン補充療法に、とても幅広く、また大変安全性の高い製剤として用いられてきました。
産婦人科クリニックさくらでの処方の中でも、ダントツに一番多く処方され続けていました。
昨年4月に製薬会社から日本産科婦人科学会を通じて、供給量が戻るまで、可能な限り代替治療の使用が求められていますが、現在も見通しが立っていないようです
現在、豊富に流通して使用できる黄体ホルモン製剤は、ルトラールやMPA、ジエノゲスト(低用量も含む)や生殖補助医療で用いる一部の腟剤、と更年期障害に対して用いるエフメノのみです。
これらの供給が回復する今春まで、産婦人科クリニックさくらでは、以下の代替治療を提示して来ました。
・ゲスターゲンテスト
エストロゲン分泌を検査する方法です。
無月経(生理がこない)の時に用いることがほとんどです。MPAを内服します。
・黄体機能不全の場合
MPAの内服をします。
・続発性無月経やホルムストローム療法(プロゲスチン療法)、カウフマン療法(エストロゲン・プロゲスチン療法)
プロゲステロン筋注の代わりにMPAを内服します。
・更年期障害に対するホルモン補充療法
デュファストンに替えて、エフメノ®︎を内服。
エフメノはデュファストンと内服方法が異なります。
エフメノは、令和4年12月1日から長期処方ができるようになりました。
長い間デュファストンやプロゲデポー、プロゲステロン筋注をご愛用いただいている皆さまには大変申し訳ありませんが、どうぞご理解、ご協力をお願い申し上げます。
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:令和4年7月7日
補筆修正:令和4年7月28日、8月20日、9月2日、10月14日、11月24日
補筆修正:令和5年1月2日、3日、2月21日、3月29日、6月28日、9月4日、19日、20日、プロゲステロン筋注の製造中止を受けて更新しました。