婦人科診療の中に「ブライダルチェック」があります。
文字通り、結婚に際して、婦人科的な病気がないかを診るものです。
ブライダルチェックとしてお勧めしている検査項目は以下の通りです。
検査項目 | 推奨度 | 料金 |
子宮頸がん検査 | ◎ | 1,070円(保険) 1,360円(横浜市がん検診、受診料を含む) 4,730円(HPV高リスク、自費) |
内診・超音波検査 | ◎ | 1,590円(保険) |
STI(性感染症)検査 | ◎ | 800円〜 保険適応と自費検査があり、検査項目により異なります。 |
ウィルス抗体検査とワクチン投与 | ◎ | 抗体検査は無料〜8,170円(自費) |
ホルモン検査(基礎分泌値) | ◎ | 2,030円(保険) |
AMH | ◎ | 4,510円(自費) |
基礎体温 | ◎ | 無料 |
甲状腺機能検査 | ◎ | 2,490円(保険) |
乳がん検診* | ◎ | 5,500円(自費) |
自費診療価格は税込です。
*当院の乳がん検診は超音波検査で行っています。
ブライダルエステやブライダルネイルなどを利用される方はとても多くなっていると思いますが、このブライダルチェック、実は昔から婦人科の診察として行われてきました。
簡単に言うと、嫁入り前に病気がないか、を診るもので、まだ女性の社会的立場が低かった時代に、病気がない、子どもを産める健康な身体である、と婦人科医がお墨付きを与えて入嫁したそうです。
現在でも診療内容の大筋は同じですが、子宮がん検診にはじまり、超音波検査で子宮卵巣を診たり、また不妊の原因となる病気がないか確認します。
表にあげた項目を解説します。
・内診・超音波検査
この2項目は、いわゆる婦人科検診の基本項目です。
子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウィルス)が原因のため、HPV検査を同時に行ったり、あらかじめHPVワクチンを接種したりすることもお勧めしています。
内診では小さな子宮筋腫や子宮内膜症を見逃してしまうこともあるため、不妊の原因となる病気がないか、超音波検査を併用します。
特に若い世代に多いのが、クラミジアや淋菌です。いずれも感染して気づかないうちに卵管を障害し、不妊の原因となります。
その他、梅毒やHIVも近年増えており、マイコプラズマ・ジェニタリウムは流産、早産や骨盤内感染症の原因となります。
検診の場合は自費検査となることもあるので、相談の上、検査項目を決めます。
・ウィルス抗体検査とワクチン接種
妊娠中にかかると赤ちゃんの病気や流産、早産となる、風疹(三日ばしか)、麻疹(はしか)、ムンプス(おたふく)、水痘(水ぼうそう)の抗体を調べ、低い場合にはワクチン接種を勧めます。
過去にかかったり、ワクチンを打っていても抗体が低いことがあり、現在かかってしまう可能性もあります。
近年、これらのウイルスは繰り返し流行しており、注意が必要です。
・基礎体温とホルモン検査、AMH(抗ミュラー管ホルモン)
月経が順調に来ているようでも、排卵ができていなかったり、排卵後の黄体期が短かったりすることがあります。
月経が不順な方はもちろんですが、妊娠に備えて基礎体温をつけてみましょう。
また、ホルモン検査にも色々ありますが、月経期間中に採血する、基礎分泌値は月経不順の原因や、妊娠しにくいホルモン状態ではないか、がわかります。
さらにAMHは卵巣予備能といって、卵巣にどれくらいの卵子が残っているか、つまり卵巣は何歳相当なのか、を検査します。
いつ頃、赤ちゃんを考えるか、とう言う人生設計の目安にもなるでしょう。
・甲状腺機能
甲状腺の病気は妊娠世代の女性に多くみられます。
甲状腺の機能が低下すると、排卵しなくなったり、流産しやすくなったりするので、妊娠する前に注意が必要です。反対に機能亢進も、妊娠中の重い合併症となるため、やはり妊娠前に血液検査で確認が必要です。
日本人の乳がんはとても増えています。1年間に9万人、乳がんが見つかりますが、子宮、卵巣のがんを合わせても3倍多いです。
乳がんは40歳代からピークを迎えますが、20代後半以降、増えています。
また妊娠・授乳期は乳がんが見つかりにくく、妊娠前に異常の無いことをチェックしておきましょう。
・男性のブライダルチェック
最近では、男性もブライダルチェック、という考えがあります。
結婚前、子供を作る前に、精液所見の異常がないかをみる精液検査です。
不妊カップルの半数は男性にも原因があります。男性も妊娠のためにあらかじめ検査をしておく時代と言えます。ブライダルチェック費用
文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)
初出:令和元年7月18日
補筆修正:令和3年1月15日、9月7日、11月23日
補筆修正:令和4年1月7日、5月1日、10月15日