毎年9月20日は「世界婦人科がん啓発デー」(World Gynecologic Oncology Day、通称 World GO Day)です。2019年に欧州婦人科腫瘍学会(ESGO)とその患者アドボカシーネットワークであるENGAGeが創設し、2026年で8回目を迎えます。世界中で子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がんをはじめとする婦人科がんへの正しい理解を広げ、早期発見・早期受診につなげることを目的とした国際的な啓発活動です(出典:World GO Day公式サイト)。また9月は「Gynecologic Cancer Awareness Month(婦人科がん啓発月間)」としても位置づけられています。
今回はこの機会に、婦人科がんについて正しく知っていただき、「気になることがあれば、ためらわずに医師に相談してよい」ということをお伝えできればと思い、記事をまとめました。
この記事の目次
5つの婦人科がん
「婦人科がん」とは、女性の生殖器にできるがんの総称で、大きく5つに分類されます。World GO Dayのロゴでも、この5つのがんがそれぞれ異なる色(卵巣=ティール、子宮体部=ピーチ、子宮頸部=フューシャピンク、外陰=ライトパープル、腟=ブルー)で表現されており、啓発活動のシンボルになっています。
・子宮頸がん
子宮の入口(頸部)にできるがんです。ほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が原因で、30〜40代に多く見られますが、近年は20代後半からの増加も指摘されています。ワクチンと検診の両方で予防・早期発見が可能な数少ないがんです。
・子宮体がん(子宮内膜がん)
子宮の奥にある内膜から発生するがんです。エストロゲン(卵胞ホルモン)の影響を受けやすく、肥満・糖尿病・高血圧・未経産などがリスク因子とされます。閉経後の50〜60代に多いものの、近年は若い世代での増加も報告されています。
・卵巣がん
初期にはほとんど自覚症状が現れず、進行した段階で見つかることが多いため「サイレントキラー」とも呼ばれます。40代から増加し、60代でピークを迎えます。
・腟がん/外陰がん
いずれも婦人科がんの中では頻度が少ないがんです。外陰部のかゆみやしこり、腟からの出血など、皮膚や粘膜の変化として気づかれることがあります。これらもHPVが原因のことが多く、HPVワクチンで予防が可能です。
日本の婦人科がんの現状
国立がん研究センターの「がん統計」によると、日本国内での婦人科がんの状況は次のように報告されています(出典:国立がん研究センター がん情報サービス)。
子宮頸がん:年間約1万人が新たに診断され、約3,000人が命を落としているとされています。かつては40〜50代の発症が中心でしたが、近年は20〜30代の若い世代での罹患が増加傾向にあります。
子宮体がん:全国がん登録によると2018年には17,089人が診断されており、子宮頸がん・卵巣がんと並ぶ婦人科がんの中でも罹患数の多いがんです。国立がん研究センターも、日本において子宮体がんの罹患率が若い世代を含めて顕著に増加していると報告しています(2025年12月発表)。
卵巣がん:年間約1.3万人が診断され、罹患数は年々増加傾向にあります。有効な検診方法が確立されていないこともあり、発見時にはすでに進行がんの段階にあるケースが約6割を占めるとされます。5年生存率も子宮頸がん・子宮体がんの約80%に対し、卵巣がんは約60%にとどまります。
※腟がん・外陰がんは上記3つのがんに比べて頻度は低いものの、進行すると治療が複雑になるため、外陰部の異常に気づいた際は放置しないことが大切です。
早期発見のためにできること
子宮頸がん検診とHPVワクチン
子宮頸がんは、ワクチンによる一次予防と検診による二次予防の両方が有効ながんです。国の指針では20歳以上の女性を対象に2年に1回の子宮頸がん検診(細胞診)が推奨されています。また当院のある横浜市では、令和7年1月から全国に先駆けて「HPV検査単独法」による子宮頸がん検診を導入しており、30〜60歳の方は5年に1回、自己負担2,000円(住民税非課税世帯等は免除)で受診できます(出典:横浜市)。HPV検査単独法の詳しい内容は、こちらの記事もご参照ください(子宮頸がん検診(HPV単独法)について)。
子宮体がん
現時点で無症状の方を対象とした有効な検診方法は確立されていません。そのため、不正出血(特に閉経後の出血)や月経周期の乱れといった症状に気づいたら、検診のタイミングを待たずに婦人科を受診することが早期発見の鍵になります。
卵巣がん
卵巣がんにも、現時点で確立された有効な検診方法はありません。定期的な婦人科受診の際の超音波検査で偶然発見されることもあるため、症状がなくても年に1度は婦人科検診を受けることをおすすめします。また、お腹の張り・下腹部の違和感・頻尿・すぐにお腹がいっぱいになる感覚などが2〜3週間以上続く場合は、一度ご相談ください。
気になったら、ためらわずにご相談ください
World GO Dayが掲げるメッセージのひとつに、「恥ずかしがらずに、医師に相談してよい(There is no shame in asking the doctor)」という言葉があります。婦人科の受診には抵抗を感じる方も少なくありませんが、早期に受診することが、結果として心身の負担を小さくすることにつながります。
「これくらいで受診していいのかわからない」という段階でも構いません。気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
婦人科がんは、種類によって原因も好発年齢も異なりますが、共通して言えるのは「早期に見つかるほど、治療の選択肢が広がり、生存率も高くなる」ということです。この「世界婦人科がん啓発デー」をきっかけに、ご自身の体と向き合う時間を持っていただければ幸いです。
よくあるご質問
婦人科がん検診は何歳から、どのくらいの頻度で受ければよいですか?
子宮頸がん検診は20歳以上の方に2年に1回が国の推奨です(横浜市にお住まいの30〜60歳の方はHPV検査単独法で5年に1回という選択肢もあります)。子宮体がん・卵巣がんについては年齢や症状、リスク因子によって個別に相談しながら決めることをおすすめします。
HPVワクチンを接種していれば、子宮頸がん検診は受けなくても大丈夫ですか?
いいえ、ワクチン接種後も検診は必要です。HPVワクチンと検診のいずれも、子宮頸がんを100%予防できるものではなく、ワクチンでカバーされないHPVの型による発症の可能性が残るためです。ワクチンと検診の両方を組み合わせることが大切です。こちらもご覧下さい。
卵巣がんには検診がないと聞きました。早期発見の方法はあるのでしょうか?
現時点で、無症状の方を対象とした有効性が確立された卵巣がん検診はありません。一般的な子宮頸がん検診では超音波検査は行われないことがほとんどですが、婦人科の定期受診時に行う超音波検査で卵巣の状態を確認できることに加え、お腹の張りや下腹部の違和感などの症状が続く場合は早めに受診することが早期発見につながります。
症状がなくても婦人科を受診したほうがいい場合はありますか?
はい。子宮頸がんや子宮体がんの初期は自覚症状がないことも多いため、症状がなくても定期検診を受けることが早期発見の基本になります。「なんとなく気になる」という段階でも、受診をためらう必要はありません。
家族に卵巣がんや乳がんになった人がいます。何か気をつけることはありますか?
血縁者に乳がん・卵巣がんの方が複数いる場合や、若い年齢での発症があった場合は、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)が背景にある可能性も考えられます。ご心配な場合は、一度受診時に家族歴をお伝えいただき、必要に応じて遺伝カウンセリングなどについてご相談ください。
参考文献:
・World GO Day公式サイト(worldgoday.org)
・国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」(ganjoho.jp)
・横浜市「子宮頸がん検診 HPV検査」(city.yokohama.lg.jp)
