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母子免疫ワクチン(マターナルワクチン) 〜おなかの赤ちゃんへ、ママからの贈り物〜

母子免疫ワクチン(マターナルワクチン)とは?

「母子免疫ワクチン」や「マターナルワクチン」という言葉を聞いたことはありますか?

これは、妊婦さんが妊娠中にワクチンを接種することで免疫力である「抗体」を作り、胎盤を通して赤ちゃんに抗体を届ける予防接種のことを指します。

生まれたばかりの赤ちゃんはまだ自分でワクチンを接種できないため、ママからの抗体によって守られます。

ここでは代表的な母子免疫ワクチンをご紹介します。

インフルエンザワクチン

妊娠中にインフルエンザにかかると、重症化しやすく、入院のリスクが高まります
インフルエンザワクチンは妊娠中いつでも接種可能で、安全性も確立されています。
接種により、妊婦さん自身の感染予防だけでなく、母体から移行した抗体が赤ちゃんを生後数か月間守ってくれることも分かっています。生後6ヶ月未満の乳児はインフルエンザによる入院率・死亡率が全年齢層の中で最も高く(CDC, 2025)、まだワクチンを打っていない時期に最もリスクにさらされます。

妊娠中にインフルエンザワクチンを接種した場合、赤ちゃんが生後6ヶ月までの間にインフルエンザに罹るリスクが約44%から59%減少する(Ohfuji S et al. 2017Zhong Z et al. 2018)ことが報告されています。この効果は、ワクチン接種後約2週間で現れ始め、約5ヶ月間持続するとされています。

👶 おすすめの接種時期

10月の接種シーズンが始まったら速やかに。

🔗 当院のインフルエンザワクチン接種はこちらをご覧ください


新型コロナウイルスワクチン

妊婦さんが新型コロナウイルスに感染すると、重症化や早産のリスクが上昇すると報告されています。

特に以下の妊婦さんたちは重症化のハイリスクとして接種が推奨されています(日本産科婦人科学会、2022)。

・31 歳以上

・妊娠21 週以降

・妊娠前 BMI 25以上

・喘息を中心とする呼吸器疾患等の併存疾患(既往・現症の存在など)

ワクチン接種により重症化を予防できます。

また、コロナも母体から移行した抗体が、生まれた赤ちゃんの感染防御にも役立つとされています。

生まれたばかりの赤ちゃんがコロナに感染しても、通常は軽症だったり無症状だったりしますが、早産児や基礎疾患を持つ赤ちゃんは重症化のリスクがあります(CDC, 2024)。

妊婦さんがコロナに感染すると早産リスクが高まり、その結果、早産で生まれた赤ちゃんは重症化リスクが高まる(BMC, 2024)、ということになります。

👶 おすすめの接種時期

10月の接種シーズンが始まったら速やかに。

コロナは夏と冬に必ず流行します。どの季節に妊娠しても、この期間を逃れることはできません。一方でワクチンの接種シーズンは10月からで、通常年を明けると接種している医療機関がほとんどなくなりますので、10月に入ったら。また、妊娠前の方も、妊娠中の感染リスクを考えて、接種をお勧めします。

🔗 当院のコロナワクチン接種はこちらをご覧ください


RSウイルスワクチン

RSウイルスは乳児の重症肺炎や細気管支炎の原因となります。
近年、妊婦に接種することで赤ちゃんに抗体を届けるRSウイルスワクチン(アブリスボ®)が登場し、今年度から定期接種が開始されました。

👶 おすすめの接種時期

妊娠24〜36週の間に接種することで、新生児期からのRSウイルス感染を予防できます。定期接種は妊娠28〜36週で、また赤ちゃんの予防効果としては、28〜34週に接種することをお勧めしています。

下の百日咳ワクチンとの同時接種は注意が必要です。

🔗 当院のRSウイルスワクチン接種はこちらをご覧ください

百日咳ワクチン

百日咳は新生児期にかかると命に関わることがあります。
日本では妊婦さんへの接種はまだ広がっていませんが、欧米では妊娠後期(27〜36週)にTdap(破傷風・ジフテリア・百日咳混合)ワクチンを接種することが推奨されています。当院では国内で入手できるDPTワクチン「トリビック®️」を接種しています。

👶 おすすめの接種時期

妊娠28〜36週

上のRSウイルスワクチンとの同時接種は注意が必要です。

🔗 当院の百日咳ワクチン接種はこちらをご覧ください

よくある質問(FAQ)

母子免疫ワクチン(マターナルワクチン)とは? なぜ妊婦が接種するの?

母子免疫ワクチン(マターナルワクチン)とは、妊婦がワクチンを接種することで、母体の体内で作られた抗体(免疫物質)が胎盤を通じてお腹の赤ちゃんに移行し、生まれてくる赤ちゃんを感染症から守る方法です。生後間もない赤ちゃんはまだ免疫機能が未熟なため、この母子免疫は赤ちゃんへの「最初のプレゼント」として非常に重要です。

妊娠中にワクチンを接種して本当に安全ですか?

はい。ここにあげたワクチンは、母体と胎児の安全性について十分に検討され安全性が確認されており、悪影響を与えることはありません。

もちろん、副反応など全くないとは言えませんが、赤ちゃんを守る効果の方がずっと高いため認可され接種が推奨されています。

どの時期に接種するのがベストですか?

ワクチンによって推奨される接種時期は異なります。

  • RSウイルスワクチン: 妊娠28〜36週の間が定期接種の対象ですが、特に妊娠28〜34週が効果的です。
  • 百日咳ワクチン: 妊娠28〜36週の間。
  • インフルエンザワクチン: 妊娠中のどの時期でも接種可能ですが、流行前に接種することが大切です。
  • コロナワクチン: 妊娠21週以降の重症化を予防するため、妊娠17週頃までには接種するのが理想です。

過去にワクチンを受けていても、もう一度接種したほうがいいですか?

インフルエンザやコロナは毎シーズン接種が必要です。RSウイルスワクチンは妊娠毎に接種します。百日咳ワクチンは成人の場合10年くらいの間隔で接種が推奨されますが、妊婦さんの場合はRSウイルスワクチンと同様に、妊娠毎の接種が勧められます。

家族や周囲の人もワクチンを接種すべきですか?

はい、赤ちゃんのお世話に関わるご家族の方々も、百日咳ワクチンなどの接種が推奨されています。特に生後間もない赤ちゃんは感染症に対する免疫が弱いため、家族や周囲の人がワクチンを接種して感染源となるリスクを減らすことは、赤ちゃんを感染症から守る上で非常に効果的です。

文責 櫻井明弘(院長、日本専門医機構認定産婦人科専門医)