5月14日の国立感染症研究所感染症疫学センターの発表によると、5月9日現在で、今年全国で報告されている風疹患者数は再び増える傾向にあり、1週間で57人増加し、1,434人となり、1000名を越えています。
報告数は9週間続けて100人を下回っていますが、依然として多く報告されており、今後も先天性風疹症候群の発生が心配されています。

スクリーンショット 2019-03-19 18.37.43国立感染症研究所発表より引用

このグラフは2008年以降の毎週の全国の風疹患者報告数ですが、7年前の2012年から大流行、真ん中に二つの山がありますね。左の小さな山が2012年。暮れには収束しつつありましたが、翌2013年に大きな山、大流行を迎えました。

一方で右端の小さな山が昨年で、2019年はまだカウントされたばかりです。

ちなみに灰色のバーは、先天性風疹症候群の報告です。

さて、2012〜13年の小さな山の後に大きな山、昨年の小さな山、の後に今年大きな山が来るように思えないでしょうか。

風疹の流行は、一般的には春先から初夏にみられるため、昨年からの流行も、これから大流行につながる可能性があります。

上記の報告、この1週間では東京都で26人、神奈川県は報告がありませんでしたが、次に千葉県、大阪府、埼玉県、福岡県、兵庫県、愛知県、広島県、北海道、佐賀県からの報告が多く、島根県、岐阜県、三重県、沖縄県でも複数の報告がありました。

平成30年の報告患者さんの96%は成人で、ほとんどが国内での感染です。
推定される感染源は、職場での流行、家族、コンサート/ライブ/イベント、旅行/出張、友人、通勤途中、学校、医療機関の順でした。
風疹ウィルスの感染力は、インフルエンザの2〜4倍とされており、狭いところで濃密に接触することでの感染が想像されます。

報告患者は昨年は男性が女性の4.3倍多かったのですが、今年に入ってからは3.9倍、年が明けてから女性の患者さんの比率が増えています。
男性は30~40代(男性の60%)に多く、女性は20〜30代に多い(女性の63%)ので、 妊娠を希望している世代として注意が必要です。
予防接種を受けていない方が多いのは「予防接種歴は無し」(21%)と「不明」(70%)がほとんどを占めることから明らかです。

感染した方の中では、頻度は少ないものの、血小板減少性紫斑病や肝炎、脳炎、肺炎、髄膜炎のような重篤な症状もみられています。

このような風疹流行を受け、厚生労働省は現在流行の中心である、今年度39〜57歳になる男性を対象に、抗体検査とワクチン接種の費用を原則無料にすると発表しました(風しんの第5期定期接種)。開始時期や方法は自治体によって異なるようですが、横浜市では6月中旬頃に39〜46歳までの男性に無料クーポンが発送され、この事業は3年間行われる予定です。

この無料クーポンは、従来の自治体毎、の枠を越え、全国の受託医療機関で検査、ワクチン接種を受けることができます。

昨年12月10日、神奈川県は5年ぶりの風疹「非常事態宣言」を出しました。

4月25日付の横浜市衛生研究所/横浜市健康福祉局健康安全課から配布された「横浜市風しん流行情報19号」によると、昨年8月20日から今年4月21日まで、横浜市内の風疹患者さんの報告は240人にのぼりました。週当たりの患者さんは5人を下回ってきていますが、例年に比べて多い状態が続いていますので、まだ油断はできません。

横浜市内の女性患者さんの比率は18.3%で、男性は女性の4.4倍です。

現在の流行の中心は、ワクチン接種をしていない30〜50代の男性ですが、女性は20〜30代が中心で、まさに妊娠する世代の女性にも感染が増えています。

妊娠を考えている女性は、抗体検査を受けて風疹に対する免疫力があるか、なければワクチン接種を行ってから妊娠にのぞんで下さい。


日本産婦人科医会は、「妊婦さんへ風疹からの緊急避難行動のお願い 第3報」を発表しました。

これによると、米国のCDC(疾病管理予防センター)は、風疹に罹る可能性のある妊婦の、日本への渡航を控えるよう、警告を出したそうです。国際的に見ても、日本は風疹の流行地域とされているということです。

妊婦さんとお腹の赤ちゃんを風疹から守るため、妊娠が分かった時に、妊婦さんと同居家族の風疹抗体や罹患、接種歴を確認することとし、

風疹抗体の結果が出る前の妊婦と、風疹抗体価が低く感染のリスクがある妊婦に対して、

・人混みを避けること

・夫も感染リスクがある場合、直ちにワクチン接種をすること

また職場に対しても、

・妊婦から職場の健康管理者に妊娠初期であることを伝え、

・職場での風疹の発生を把握することを求め、風疹発生時にはリスクのある妊婦に連絡をもらうこと

・職場で風疹患者が発生した際には、患者及びリスク妊婦の「出社差し控え」を含め、妊婦への万全の保護策を講じてもらえるよう申し出ること。この際の出社差し控えは、妊婦の立場を考え、「公休扱い」としてもらうよう働きかけること

を求めています。

さらに、妊婦さんが集まる産婦人科施設へは、風疹罹患時はもとよりインフルエンザも流行していますので、病名が明らかとなっていない風邪気味の状態(発熱、リンパ節の腫れ、発疹など)の場合、受診、立ち入りをしないようにお願いをしています。

風疹の有効な予防法はワクチンしかありませんが、現在の風疹の流行の影響で、ワクチンが今後供給不足となる恐れがあります。いち早い行動をお願いします。

最近では、当院でも男性のワクチン接種が増えてきています。

とても有り難いことです。

昨年10月2日付、厚生労働省から、風疹流行地域の5都県の産科医療機関に、

・妊娠を希望している女性

・妊娠が判明した女性のパートナー

に、風疹抗体とワクチン接種の有無を確認するよう、通知がありました。


5都県とは、今回の風疹流行の主たる地域、東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県と愛知県です。

妊娠を希望している女性の場合、2回以上風疹が含まれたワクチンを接種しているか、または抗体検査を行って風疹に対する十分な免疫力があるか。

妊婦さんのパートナーは、確実なワクチン接種歴があるか、または抗体検査を行っているか、確認します。

流行地域を指定して通知があるのは異例で、5年前に風疹が流行し、赤ちゃんの先天性風疹症候群が多数発生してしまったことを繰り返さないため、と考えられます。

妊婦さんが風疹(三日ばしか)に感染すると、 赤ちゃんの先天性風疹症候群(CRS)、 これは生まれつきの眼、耳、心臓に障害をもたらし、白内障などによる視覚障害、聴覚障害、心疾患が主な症状で、他にも低出生体重、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、黄疸、間質性肺炎、髄膜炎、脳炎、糖尿病、精神運動発達遅延などがあり、2012年6月頃から流行した期間に先天性風疹症候群となったお子さん45人のうち、1年間で11人が亡くなっており、 病気を持って産まれることでその後の寿命が短くなっています。

今、私たちに何が出来るでしょうか。

・妊娠を考えている女性とそのパートナー、 妊婦さんのパートナーは、風疹抗体検査を行って下さい。
過去にワクチンを受けた方も抗体が低くなっている可能性がありま す。
横浜市の風疹抗体・ワクチン接種事業はこちらをご覧下さい

・抗体が低い方は風疹ワクチン、 または麻疹との混合ワクチンであるMRワクチンを接種して下さい
女性は妊娠前に少なくとも2回の風疹が含まれたワクチン接種が推奨されています。

・妊婦さんはご自身の抗体価を確認してください。 母子手帳を見たり、分からない場合は通院されている施設に問い合わせて下さい。その結果、 感染する可能性がある場合、特に妊娠の初期から20週頃まで、 流行地域には訪れない、不要不急の外出を避けて下さい。 残念ながら、風疹ワクチンは生ワクチンのため、 妊娠中には接種できません。

・ワクチンを打っても抗体が陽性にならない方、抗体が低いにもかかわらずワクチン接種を行っていない方は、妊娠を控えた方が良いでしょう。


次のページでは、当院で調査し、2013年の日本生殖医学会でも発表(馬場恵子ほか)した風疹抗体価のデータを紹介します。